【 読書 ・ 100分de名著 】ボーヴォワールの主張は、つまるところ、老いは個人の問題ではなく社会の問題である、ということです。四つの視点:老いを自己否認するしくみ、さまざまな社会や職業別の老い、老いと性、老いの社会保障。
「100分de名著」 ボーヴォワール『老い』が、6月28日(月)から始まります。Eテレ。
放映は、 月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、 水曜日 午前 05:30~05:55
及び 午後 00:00~00:25
講師は、上野千鶴子(社会学者、東京大学名誉教授)
<全4回のシリーズ> 第1回目以外は、7月
【はじめに】 老いてなにが悪い!
第1回 6月28日放送/ 30日再放送
タイトル: 老いは不意打ちである
第2回 5日放送/ 7日再放送
タイトル: 老いに直面した人びと
第3回 12日放送/ 14日再放送
タイトル: 老いと性
第4回 19日放送/ 21日再放送
タイトル: 役に立たなきゃ生きてちゃいかんのか!
【はじめに】 老いてなにが悪い!
シモーヌ・ド・ボーヴオワール(1908~86)は、ジャン・ポール・サルトルと並び、戦後フランスにおいて実存主義の思想を掲げて活動した作家・哲学者です。代表作『第二の性』(1949年)は、1960年代のウーマン・リブ以降のいわゆる第二波フェミニズム(第一波は十九世紀末からの婦人参政権運動)の先駆けとなった著作で、世界の女性たちに大きな影響を与えました。「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」という有名な一節は、現在のジェンダー研究の最先端、すなわち、性差は運命でも単に生物学的なものでもなく、社会的に構築されるものである、という視点を先取りしていました。
今回はボーヴオワールが『第二の性』の約20年後、62歳で発表した『老い』(1970年)を取り上げることにしました。ヴォワールがこの本を書いた動機は、現代社会において老人は人間として扱われていない、老人の人間性が毀損されている、ということへの怒りでした。『老い』の序文では、変化の速い消費社会において老人は「廃品」として扱われていると言いました。
『老い』は陰惨な本です。前向きに老いるヒントなどほとんど書いてありません。しかし同時に、全世界で高齢化率が上がり、高齢あるいは超高齢社会に突入した現在の老いの問題を先取りした、先駆的な本でもあります。
ボーヴォワールの主張は、つまるところ、老いは個人の問題ではなく社会の問題である、ということです。今回は、老いを自己否認するしくみ、さまざまな社会や職業別の老い、老いと性、老いの社会保障という四つの視点から、みなさんとともに読んでいきたいと思います。
<出典>
上野千鶴子(2021/7)、ボーヴォワール『老い』、100分de名著、NHKテキスト(NHK出版)
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