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2021年6月13日日曜日

(2363) レイ・ブラッドベリ『華氏451度』(3-2) / 100分de名著

 【 読書 ・ 100de名著 】「もう一度、最初からやりなおしてみよう」とモンターグ。ここで第一部が終わります。重要な台詞です。わからないからといって放り出すのではなく、ゆっくり考えなおしてみよう、と言う人になっているのですから。


第3回  14日放送/ 16日再放送

  タイトル: 自発的に隷従するひとびと

 

放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50

再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55

 及び        午後 00:00~00:25

 

 

【テキストの項目】

(1) 本を燃やすことは人生を燃やすこと

(2) 三人目の教師――ベイティー

(3) ベイティー演説の今日性

(4) ファイアマンの仕事がもつ意味

(5) 思考の深さと多様性は社会の敵

(6) 唐突な葬式批判の意味

 

(7) 盗癖の真相

(8) モンターグの「読書論」

(9) 反逆児の誕生

(10)     四人目の教師――フェーバー

(11)     フェーバーとベイティーの対照性

 

【展開】

(1) 本を燃やすことは人生を燃やすこと

(2) 三人目の教師――ベイティー

(3) ベイティー演説の今日性

(4) ファイアマンの仕事がもつ意味

(5) 思考の深さと多様性は社会の敵

(6) 唐突な葬式批判の意味

 以上は、既に書きました。

 

(7) 盗癖の真相

 モンターグはミルドレッドに、じつは自分は一年前からちよくちょく本を盗んでいたと告白し、空調機の中から二十冊あまりの本を取り出します。それを見てパニックになり、泣き出すミルドレッド。

 「ミリー!」彼はいった。「聞いてくれ。すこしだけ話を聞いてくれ。ぼくらにはどうしようもないんだ。この本を燃やすわけにはいかないんだよ。ぼくは見てみたいんだ。一度だけでもいいから、なかを見ておきたいんだ。それで隊長のいうとおりだったら、いっしょに燃やそう、約束する、いっしょに燃やす。たのむから力になってくれ」

 そして、自分たち二人の不幸の理由を一緒に考えたいから協力してくれと言います。

 

(8) モンターグの「読書論」

 ミルドレッドは、なぜ危険を冒してまで本を読まなければいけないのかとモンターグを詰問します。モンターグはその問いかけに答えようとするうちに、本を読むことの重要な意味を自ら発見します。

 一つは、本は不幸の源泉である無知から自分たちを救ってくれるかもしれないということ。もう一つは、本を読めば自分の社会を異なる目で見て相対化し、過去から学んで同じあやまちを繰り返さずに済むかもしれないということ。モンターグは言います。「もしかしたら本が、ぼくらを洞窟から半分そとへ出してくれるのかもしれない。ひょっとしたら、本を読めば、おなじ狂気のあやまちをくりかえさずにすむかもしれないじゃないか―」。

 

(9) 反逆児の誕生

 一人で読んでも書いてあることがわからない。モンターグは、フェーバーという名の元英文学教授を思い出しました。四人目の教師ということになります。

 モンターグは地下鉄に乗ってフェーバーの家に向かうのですが、ここは、悩めるモンターグが反逆児に変わっていく重要なシーンです。

 車内でふと気づくと、モンターグは膝の上に聖書を開いていました。ほかの乗客がいる前でおおっぴらに本を読むのですから、モンターグはすでに反逆児になっています。

 モンターグの読書は車内に流れる歯磨き粉のコマーシヤルに邪魔されます。我慢できなくなったモンターグは「黙れ! 黙れ! 黙れ!」と叫び、本を振り回します。

 

(10)     四人目の教師――フェーバー

 かつ教師を職業にしていたフェーバーが体現するのは、知識人の無力さです。本が燃やされるようになった歴史をベイティーとは違う立場からモンターグに語って聞かせます。

(A) 知識人の無気力が今日の事態を招いた

(B) 本自体よりも内容が重要

(C) 書物というメディアの何が重要か

① 細部に宿る「情報の本質」(quality information)

② ①を消化するための時間。余暇

③ ①②を学んで行動を起こすためまめの正当な理由

 

(11)     フェーバーとベイティーの対照性

 さしあたって今夜のベイティーとの対峙をなんとかしなければなりません。フェーバーは、巻貝のように耳に収めてどこででも語り合える超小型双方向通信機をモンターグに渡し、これでプロンプターよろしく助言してやろうと提案します。

 ここにはおもしろい逆転が仕掛けてあるのですね。本の味方であるフェーバーが、双方向の超小型通信機という最新式の機械でモンターグをコントロールし、本の敵であるはずのベイティーが、本から学んだことを織り交ぜた古き佳き雄弁術一本で、最新テクノロジーに頼らず彼を説得・支配しようとしています。

 

 

<出典>

戸田山和久(2021/6)、レイ・ブラッドベリ『華氏451度』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



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