画面の説明

このブログは、左側の投稿欄と右側の情報欄とから成り立っています。

2021年6月18日金曜日

(2369) レイ・ブラッドベリ『華氏451度』(4-2) / 100分de名著

 【 読書 ・ 100de名著 】破壊する人生から、保存する人生への転換です。またどこかで、保存し貯蔵する作業をはじめねばならない。誰かが、本でもレコードでも頭のなかでもいい、なんらかのかたちで保存し、保管していかねばならない。


第4回  21日放送/ 23日再放送

  タイトル: 「記憶」と「記録」が人間を支える

 

 

【テキストの項目】

(1) 「ドーヴァー海峡」朗読事件

(2)  文学の両義的な情動喚起力

(3)  ベイティーの反読書論再び

(4)  モンターグ、本と家とベイティーを焼く

 

(5)  ベイティーとは何者か

(6)  追跡のエンターテイメント化

(7)  モンターグの回心

(8)  追跡劇の結末

 

(9)  記憶の中の図書館

(10)      鏡工場を再生する?

(11)      黙示録的エンディング

(12)     『華氏451度』をどう読むべきか

 

【展開】

(1) 「ドーヴァー海峡」朗読事件

(2)  文学の両義的な情動喚起力

(3)  ベイティーの反読書論再び

(4)  モンターグ、本と家とベイティーを焼く

 以上は、既に書きました。

 

(5)  ベイティーとは何者か

 ベイティーは、表向きは業務上の必要のため本を読んだと言っていますが、本当はそうではないでしょう。むしろ本が大好きだったのだと思います。ベイティーとフェーバーとおばあさんは、おそらくほぼ同世代の人です。本が禁じられる以前の時代を知っていて、そのときに本のとりこになっていた人たちだと考えられます。

 この小説の読者のあいだでは、ベイティーの死は自殺だという見方が半ば定説になっています。火炎放射器を向けられても逃げずに、挑発までしているのですから。なぜでしょう。同じ本好きとして、モンターグという後継者にバトンを渡すことができた、自分は堕ちたけれどお前は抵抗を続けてくれ、そんなメッセージを伝えたかったからかもしれません。

 

(6)  追跡のエンターテイメント化

 ベイティーを焼き殺し、晴れて正真正銘の「社会の敵」となったモンターグは、機械猟大に追われる身となります。この追跡劇は、その一部始終がテレビ中継され、エンターテイメントとしてひとびとに消費されます。警察は、すべての街路に面したすべての家に、逃亡者を見つけるよう促します。エンターテイメント化は視聴者に追跡者としての役割を割り振ることで、ひとびとを追跡劇イベントに動員する手段となっているのです。

 モンターグは、各家庭のテレビ壁を窓越しに見ながら、機械猟犬がどこを探しているのかを知り、それを使ってうまく逃げ回る。ひとびとは、モンターグが自宅の庭に来ていても、テレビを見るのに夢中で気づかない。

 

(7)  モンターグの回心

 追われる身となったモンターグに、フェーバーが逃げ道を教えてくれました。川に沿って進んで、古い線路に行きあたったら、それは田舎につうじておる …仰向けになって「ゆるゆると穏やか」な川の流れに身をゆだねるモンターグ。日常生活でも逃亡生活でも、つねに急き立てられていたモンターグは、ここでようやくゆったりとした時間を手に入れます。反省的思考の時間を得て彼は来し方行く末を考えることができるようになったのです。

 自分がファイアマンを続けていると、自分は価値あるものをすべて破壊することになる。そうしたら、この世に価値あるものがいっさいなくなってしまうではないか。モンターグは自力である種の回心をなしとげました。破壊する人生から、保存する人生への転換です。

 

(8)  追跡劇の結末

 川から上がったモンターグは、さまざまな自然物の匂いをかぎます。干し草の匂い、麝香の匂い、森の匂い、土の匂い。かつて大好きだったケロシンの匂いとの対比が鮮やかです。

 … 行く手に火が見える。元大学教授など社会のはみだし者たち、放浪者たちのキャンプファイヤーです。彼らは集って共同生活を営みながら、田舎を放浪しています。

 リーダーのグレンジャーはモンターグを迎え入れ、追跡のテレビ中継を見ていたから君のことは知っていると言います。テレビでは追跡劇はまだ続いていました。警察は、たまたま散歩をしていただけの男をモンターグとしてでっちあげ、機械猟大に襲わせました。「捜索は終了しました。モンターグは死亡。それが社会にたいする犯罪への当然の報いです」

 

 以下は、後に書きます。

(9)  記憶の中の図書館

(10)      鏡工場を再生する?

(11)      黙示録的エンディング

(12)     『華氏451度』をどう読むべきか

 

<出典>

戸田山和久(2021/6)、レイ・ブラッドベリ『華氏451度』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

 

添付図は、

https://literaturez.com/fahrenheit451/



0 件のコメント:

コメントを投稿