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2019年5月31日金曜日

(1620)  三題噺(鳩・ハイジ・拡大自殺) (『ハイジ』番外編)

 
      最新投稿情報
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(K0761)  本来の寿命は50(1) 根拠 <定年後>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/05/k0761-501.html
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(1) 

 家の前の掃除をしているのだが、いつも汚れている所がある。電線(正確には電話線)に鳩がとまり、糞を落とすのである。だからその下を掃除するときは、上を見上げて鳩がいないことを確認してからにしている。
 ある日掃除している時、向こうの方の地面に群れていて電線には鳩は止まっていない。掃除をしていると、向こうの鳩が全部、斜め上の近くの電線に移っていた。何故か、嬉しい気がした。
 「死んだあの人が鳩(各種の小動物)になって会いに来てくれた」とよく聞く。特に最近身近で亡くなった人がいるわけでもないし、霊魂に関心があるわけでもないのだけれども。でも、多分、その感覚だろう。
 考えてみれば、鳩が糞をするのは「生きるための権利」だし、「糞をするのに、ここは駄目だが、あちらなら良い」というのは、人間のエゴで鳩にとっては知ったことではない。憎むべき鳩が、いとおしくなった。
 

(2)  ハイジ

 100de名著で「アルプスの少女ハイジ」のテキストを読んでいる。フランクフルトに連れていかれたハイジが心を病み、スイスに帰って元気を取り戻す。そこを訪れたフランクフルトの人たちも、元気になっていく。自然の力だろう。後者では更にハイジの癒しの力も加わっている。
 

(3)  拡大自殺

===== 引用はじめ
 川崎市多摩区の殺傷事件をめぐっては、岩崎隆一容疑者(51)が児童らを襲った直後に自殺したことから、無関係な人を道連れにした「拡大自殺」だったとの見方も出ている。孤立感や絶望感を深めた末の無差別殺傷事件は繰り返されてきた。理不尽な悲劇の連鎖はどう生み出されるのか。
 「他人を巻き込んだ『拡大自殺』だったと考えられる」。岩崎容疑者が襲撃から十数秒後に自ら首を刺し、自殺を図ったことについて、精神科医の片田珠美さんは、こう推測する。
 高齢の伯父夫婦と同居し、引きこもる傾向にあったという岩崎容疑者。片田さんは「人を殺したいという願望よりも、最初にあったのは非常に強い自殺願望だったのではないか。人生に強い不満を抱く一方、不遇を世間や他人のせいにする他責的傾向があったのでは」とみている。
===== 引用おわり
https://www.sankei.com/affairs/news/190529/afr1905290057-n1.html
 

  考えたこと
 川崎市多摩区の殺傷事件(3)は、絶対に繰り返してはいけない。しかし、その防ぎ方が難しい

A)   「岩崎隆一容疑者」から身を守る

B)   「岩崎隆一容疑者」を無くす
 
 
 このうち、A)は、絶望的に難しい。必然的に B)となるが、これも難しい。
 
===== 引用はじめ
 東京工業大の影山任佐(じんすけ)名誉教授(犯罪精神病理学)は「やり直しのきかない年齢で生活に行き詰まり、人生に決着をつけようとしたのではないか。環境や親の愛情に恵まれた児童らへの妬みや絶望感から、命を奪おうとしたのでは」と分析。「社会的に孤立し、自殺を考えている人に手をさしのべる態勢づくりが大事だ」と続けた。
===== 引用おわり
出典、同上
 
 間違いではないが、不十分なのではないか。足りないのは何か。あるとしたら「自然」がキーワードではないか。自然がないと、自然な生き方ができなくなる。
 
 鳩で感じたこと(1)は、例えば、読書や人との交流だけでは生まれないだろう。都会の中の小さな自然だが、それでも他にない力をもっている。
 
 ハイジの物語(2)は、自然の力を雄弁に語っている。
『アルプスの少女ハイジ』
https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/88_heidi/index.html
 

 拡大自殺の防止として、孤立させないことももちろんとても大切だが、自然に触れることも大切ではないか。
 
 「窓から見えるのは家々の壁と窓ばかりです」「窓を開けてもらいますが、やはり石畳の道路しか見えません」「塔の上まで階段を登ると、そこから景色を眺めますが、見えるのは遠くまで広がる屋根や塔や煙突ばかり」(同上。『…ハイジ』)。これでは、おかしくなる方が「正常」だろう。
 
 引きこもりは、よくない。人との触れ合いの機会を奪うだけでなく、自然との接触の機会を奪うことも、大きいと思う。
 
 Facebook友だちのHisako Nakayamaさん、松嶋 剛史さんたちの進められているラジオ体操も、屋外であることが大きな意味をもつと思います。

2019年5月30日木曜日

(1619) シュピリ『アルプスの少女ハイジ』(0) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K0760) JR東海共和駅・認知症患者列車事故事件裁判(2) 最高裁判決は「優しい判決」だったのか? <脳の健康>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/05/k07602.html
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 6月の「100de名著」 シュピリ『アルプスの少女ハイジ』が、63()から始まります。Eテレ。

放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
講師は、松永美穂(早稲田大学教授、ドイツ文学者)
 


<全4回のシリーズ>  いずれも5月

【はじめに】  子どもも大人も味わえる魅力的な原作
 

第1回  3日放送/ 5日再放送
  タイトル: 山の上に住む幸せ
 
第2回  10日放送/ 12日再放送
  タイトル: 試練が人にもたらすもの
 
第3回  17日放送/ 19日再放送
  タイトル: 小さな伝道者
 
第4回  24日放送/ 26日再放送
  タイトル: 再生していく人びと
 

【はじめに】  子どもも大人も味わえる魅力的な原作
 
 『アルプスの少女ハイジ』と聞けば、おそらく多くの方が、あの有名なテレビアニメを思い浮かべると思います。しかし、原作とテレビアニメは随分違います(添付表参照)。
 
 海外でも大変な人気を博したが、肝心なスイスでは「現実が美化されている」と、放送されませんでした。
 
 アニメや絵本もいいけれど、原作を読めば、新鮮な感動を味わえるはずです。故郷や家族の喪失から人間回復の物語は、子どものみならず大人の読者の心も慰め、希望を感じさせてくれることでしょう。普遍的で古びることのない優れた文学作品としての『ハイジ』の魅力を味わい、その秘密を一緒に探っていきましょう。
 


<出典>
松永美穂(2019/6)、シュピリ『アルプスの少女ハイジ』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

2019年5月29日水曜日

(1618) 「嫌なヤツのいる場」問題(2) 「夫源病」対策にヒントがあるのではないか

 
      最新投稿情報
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(K0759)  避けることのできない「生死の選択」(3) <臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/05/k0759-3.html
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 「嫌なヤツのいる場」問題の一つとして「夫源病」がある。その対策には、他の「嫌なヤツのいる場」問題を解決するヒントがあるのではないか。
 


1.   「夫源病」とは

===== 引用はじめ
 … 夫が原因で心身が不調になってしまう――こうした現象に悩まされている妻たちは、実は少なくありません。夫によるストレスがもととなって心身にダメージを与える「夫源病」というものの存在があるのです。主人在宅ストレス症候群、と呼ばれることもあります。
 大阪樟蔭女子大学の石蔵文信教授が命名したと言われる「夫源病」。 … たとえば「夫が家にいる週末は体調がすぐれません。平日も、夫が帰宅すると具合が悪くなります」「夫の空気を読まない発言を聞くたびに、ガマンできないほどイライラします」という人もいるほど。夫がいること自体がストレスになってしまっているようです。

 … 頭痛だけでなく、腹痛やめまい、プチうつといった症状が出る例もあります。病院に行って検査をしても病名がつくわけではないので、「気のせいでは?」「疲れているからでしょう」と簡単に片づけられてしまうのも、この悩みの辛いところです。夫の存在が妻のストレスになっていることに、周りも本人もなかなか気づけないのです。
===== 引用おわり
 

2.   対策事例(1)

===== 引用はじめ
 こうしたことで悩む女性の傾向として、「デリケートすぎるため、相手の細かいことまで気になってしまう」「“いい人”でありたいと思うため、不満があっても飲み込んでしまうことが多い」といったことがあげられます。その結果、夫の言動でイライラさせられ、ストレスをためこんでしまうことになるのです。
 対策としては、日ごろから自分の思っていることや提案などを、夫に少しずつ小出しに伝えて話し合っていくことがポイント。ストレスをためこみすぎて暴発しないよう、“いい人”をやめて、本音でコミュニケーションする必要があります。
===== 引用おわり
 

3.   対策事例(2)

===== 引用はじめ
 もしも、夫が原因でストレスや苦痛を感じ、心身に支障をきたしているようであれば、夫との関係を見直して修復や改善をしていく必要があります。普段我慢してしまっている人も、思い切って夫に不満をぶつけて、夫婦喧嘩をしてみるのもいいでしょう。
 その際、ただ感情を口にするのではなく、「こういうところがこうだから、こんなふうに困っている。だから、こうしてもらえるととてもうれしい」というように、できるだけ論理的に、困っている現状と改善してほしい点を伝えるようにします。
 つまり、夫が「聞く耳」を持つような伝え方で話すようにするのがコツ。トラブルを大きくして離婚に発展させることが目的なのではなく、あくまでも夫婦が円満にハッピーに暮らしていくことが大切だからです。
===== 引用おわり
 


<出典>
実録!夫が家にいることが苦痛な妻たち

2019年5月28日火曜日

(1617) 「嫌なヤツのいる場」問題(1) 解決の考え方

 
      最新投稿情報
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(K0758) JR東海共和駅・認知症患者列車事故事件裁判(1) 概要と解釈 <脳の健康>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/05/k07581.html
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 「嫌なヤツのいる場」(家族、学校、職場、ボランティアの場、遊び仲間、その他の集団)でストレスがたまる。それが病的なレベルに高じたとき、別の言葉で言うと日常生活に支障をきたすレベルになったとき、本格的な対策が必要になる(本当は、そうなる前に対策するのが好ましい)。
 
 
 四つの対策がある。
 

(1) 所属はそのままで、その場にいながら、できるだけ関りを薄くする
 
(2) その「嫌なヤツ」のいる場を去る(所属を変える)。遊び仲間を変えたり、ホランティアをやめたりは、比較的やりやすいだろう。しかし、家族を変えることは大ごとで、学校をかえたり職場を変えたりするのも難しい。夫婦の場合は離婚や別居に至る前に単身赴任や家庭内別居で、子供の場合は親の家から出て独立することで、当面の問題を回避する方法も考えられる。学校の場合、退学や転校に至る前に、クラス替えまで特殊学級などで待機することも考えられる。職場の場合、退職や転職する前に、転勤・社内異動・同じ職場での役割替え(その嫌なヤツと接触機会が減る)などが考えられる
 
(3) 精神疾患レベルまで至ったら、服薬という手段が必要になることもある
 
(4) しかし、(2)(3)は緊急避難で、根本的な解決にはならない。何故なら、どこにいっても「嫌なヤツ」は居るもので、その存在をコントロールできない。場を変えるのではなく、自分を変えることが根本的な解決につながる。自分を変えるとは、自分の性格を変えることではなく、人との接し方を変えることである。最初は対策(1)との併用でなんとかなり、最終的には関わりを続けることのできるまで、ストレスレベルを下げることができるよう、人との接触のパターンを変えることが目標になる。
 

 続く。

2019年5月27日月曜日

(1616) 【来月予告】:シュピリ『アルプスの少女ハイジ』。【投稿リスト】『平家物語』 / 100分de名著

 
      最新投稿情報
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(K0757)  避けることのできない「生死の選択」(2) <臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/05/k0757-2.html
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【来月予告】 シュピリ『アルプスの少女ハイジ』 / 100de名著
 
 2019年6月号 (100de名著) テキストは、5月25日発売(NHK出版)
シュピリ『アルプスの少女ハイジ』。講師:松永美穂(早稲田大学教授、ドイツ文学者)
 
 アニメには描かれなかった「喪失と再生」の物語
 
 世界的な人気を誇るアニメ作品が、ゲーテによる教養小説の流れを汲み、19世紀のヨーロッパ社会や宗教観を色濃く反映した原作をもとに作られたことは、あまり知られていない。登場人物の心の葛藤や闇、豊かな宗教性・自然観にも焦点を当て、アニメには描かれていない原作の深遠な魅力に迫る。
 


【投稿リスト】 『平家物語』

公式解説は、
https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/87_heike/index.html#box03
 


私が書いたのは、
 
(1584) 『平家物語』(0) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/04/15840100de.html
 

(1591) 『平家物語』(1-1) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/05/15911-1100de.html
 

(1593) 『平家物語』(1-2) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/05/15931-2100de.html
 

(1598) 『平家物語』(2-1) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/05/15982-1100de.html
 

(1600) 『平家物語』(2-2) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/05/16002-2100de.html
 

(1603) 『平家物語』(3-1) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/05/16033-1100de.ht
 

(1605) 『平家物語』(3-2) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/05/16053-2100de.html
 

(1607)  時をつかめば、命が現れ、運が変わる(1) (運命論。100de名著『平家物語』番外編)
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/05/1607-1100de.html
 

(1608)  時をつかめば、命が現れ、運が変わる(2) (運命論。100de名著『平家物語』番外編)
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/05/1608-2100de.html
 

(1612) 『平家物語』(4-1) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/05/16124-1100de.html
 

(1614) 『平家物語』(4-2) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/05/16144-2100de.html
 


<出典>
安田登(2019/5)、『平家物語』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

2019年5月26日日曜日

(1615) 「おしん」の5要素

 
      最新投稿情報
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(K0756)  避けることのできない「生死の選択」(1) <臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/05/k0756-1.html
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 朝ドラを2回取り上げた(1597)(1613)が、その中でFacebook友達のYukie Matumura さんから「おしんは今BSで再放送してます。私は初めて見ているのですが、全然古くなくて、その後のなつぞらより、ずっとおもしろいです。」とコメントをいただきました。


 おしんの再放送は知っていたのですが、「可哀想な話」という先入観念があって当初は見ていませんでした。しかし、チラチラ見ているうちに引き込まれ、最近では毎日見ています。
 
 何故、引きこまれたのか ? 考えてみました。
 

1.   強い決意

 おしんには強い決意があります。限られた選択肢の中でも、反対されても、時には自分の倫理観から外れても、自らの意思で切り開こうとしています。
 

2.   希望

 成算があるわけでなく、この先に希望があるようにも見えません。それでも先に進もうとするのは、希望を見ているのでしょう。希望は見えるものではなく(どこかにあったり、向こうから来てくれたりするものではなく)、見る(見出すという意味も含む)ものなのかもしれません。
 

3.   深い所での人との交わり

 「ランチ友達が100人いても、あまり意味がない」と聞いたことがあります。人との交わりには深さがある、その深いところでおしんは人と交わっているように思います。
 

4.   助けの手

 その後に放映されるなつぞらで「人を当てにするのではなく、自ら努力を積み上げていれば、必ずどこかから助けが来る」という趣旨のセリフがありました。同じテーマだと思います。
 

5.   苦難の意味付け

 「どうして私ばかり、こんなに苦労をしなければならないのか」という嘆きをよく聞きます。苦難そのものに意味はないと思います。しかし、苦難に立ち向かっていると、知らぬ間に意味付けが苦難にくっついてくるように思われます。「あの時は苦しかった。でも、今の私があるのは、あの経験をしたからだ」。苦難を嘆いているだけでは、意味は賦与されません。
 


 「強い決意」「希望」「深い所での人との交わり」「助けの手」「苦難の意味付け」に勇気づけられるから、引き込まれていくのかなと思いました。

2019年5月25日土曜日

(1614) 『平家物語』(4-2) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K0755)  生活満足度:60~89歳が全世代で最も高かった <定年後>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/05/k0755.html
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第4回  27日放送/ 29日再放送

  タイトル: 死者が語るもの
 
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
 



【テキストの項目】
 
(1)  山の源氏、海の平家
(2)  忠と恕のあいだで――敦盛最期
(3)  義経というカリスマ
(4)  勝敗を分けた“かえり忠”――壇ノ浦の合戦
 
(5)  もはやこれまで――先帝身投
(6)  見るべき程の事は見つ
(7)  戦いのあとの心象風景――大原御幸
(8)  建礼門院の最期
(9)  霊を呼ぶ琵琶の力
 
 
【展開】

 
(1)  山の源氏、海の平家
(2)  忠と恕のあいだで――敦盛最期
(3)  義経というカリスマ
(4)  勝敗を分けた“かえり忠”――壇ノ浦の合戦
 
 以上は、既に書きました。
 


(5)  もはやこれまで――先帝身投

 山鳩色の御衣にびんづら結はせ給ひて、御涙におぼれ、ちいさくうつくしき御手をあわせ、まづ東をふしをがみ、伊勢大神宮に御暇申させ給ひ、其後西に向かはせ給ひて、御念仏ありしかば、二位殿やがていだき奉り、「浪の下にも都のさぶらふぞ」となぐさめ奉ッて、千尋の底へぞ入り給ふ。
 

(6)  見るべき程の事は見つ

 「見るべき程の事は見つ」(もはや見るべきことはすべて見終わった)というセリフを残し、乳母子と一緒に鎧を着て海に入った平知盛。彼のような冷静さや俯瞰する視点が平宗盛にあれば、平家の命運も違っていたのかもしれません。阿波重能の裏切りに気付いて進言したのが知盛、それを退けたのが宗盛でした。
 

(7)  戦いのあとの心象風景――大原御幸

 風景は、物語を聴く人に、登場人物の感情を押し付けることをせずに、聴く人のそのときの状況でさまざまな心情をそこに表出させます。
 京都大原の寂光院に出家した建礼門院を、後白河法皇が訪ねた時の様子が「大原御幸」に描かれています。書かれているのは風景描写ですが、そこには心の風景が表現されています。
 

(8)  建礼門院の最期

 建礼門院は平家一門を弔う日々を過ごし、静かに往生を果たしました。その様子は「女院死去」に描かれています。最期はまさに『往生要集』の「臨終の行儀」の実践と言えます。
 建礼門院の最期を看取った二人もやがて往生を遂げ、この物語は終わりを迎えます。
 

(9)  霊を呼ぶ琵琶の力

 『平家物語』を語る琵琶法師は、琵琶を弾きながらおそらく平家の霊を招いていたのでしょう。そして、言葉を発することができない彼らに代わり懺悔の物語をすることで、その魂を鎮めていたと思うのです。
 『平家物語』は、闇が消え、視覚に頼り、死者を忘れてひたすら先に進もうとする現代人が失っている感覚を、歴史の向こうからもう一度思い出させる物語でもあります。
 


<出典>
安田登(2019/5)、『平家物語』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

 

2019年5月24日金曜日

(1613)  朝ドラ・視聴率(第1位:おしん)

 
      最新投稿情報
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(K0754)  苦手? 面倒? ご近所付き合いで失敗しない5つのコツ <地域の再構築>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/05/k0754-5.html
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 「女優広瀬すず(20)が、ヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「なつぞら」(月~土曜午前8時)の22日に放送された第45回の平均視聴率が222%(関東地区)だったことが23日、ビデオリサーチの調べで分かった。最高視聴率は第15回の236%」
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201905220000057.html
 
 最近の視聴率を見ると「好調ですね」となるが、歴代の視聴率を見ると、これがすごい。


   視聴率 回 タイトル   放送

 1 52.60% 31 おしん    1983
 2 47.40% 11 繭子ひとり  1971
 3 47.30% 12 藍より青く  1972
 4 47.20% 14 鳩子の海   1974
 5 46.10% 13 北の家族   1973

 6 45.80%  6 おはなはん  1966
 7 45.80%  7 旅路     1967
 8 44.90%  8 あしたこそ  1968
 9 44.30% 34 澪つくし   1985年前期
10 43.00% 21 おていちゃん 1978年前期
 

 10位の「おていちゃん」で43.00%、「なつぞら」の約2倍。10位までで一番新しいのは、1985年(澪つくし)。その年に生まれた子は、34歳になっています。因みに私は、第1回「娘と私」を覚えています(これは自慢?)。
 

 20位までのリストを添付します。すごい女優さんが並んでいます。
 第4回以降の推移を添付します。傾向がはっきりわかります。
1~第3回までは、視聴率データがありません。


視聴率の推移を詳しく書いているサイトは、
http://www7b.biglobe.ne.jp/~yama88/asadora.html
 

<関連>
(1597)  朝ドラ・ランキング(第1位:あさが来た)
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/05/1597.html

 

2019年5月23日木曜日

(1612) 『平家物語』(4-1) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K0753)  私は何者か ~ 7つの「か」 ~ 現在と今後 <仕上期>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/05/k0753.html
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第4回  27日放送/ 29日再放送

  タイトル: 死者が語るもの
 

 平家を都から放逐した木曽義仲も討たれ、物語はいよいよ「平家軍」対「頼朝派遣軍」の本格的な戦いへと突入します。
 

【テキストの項目】
 
(1)  山の源氏、海の平家
(2)  忠と恕のあいだで――敦盛最期
(3)  義経というカリスマ
(4)  勝敗を分けた“かえり忠”――壇ノ浦の合戦

(5)  もはやこれまで――先帝身投
(6)  見るべき程の事は見つ
(7)  戦いのあとの心象風景――大原御幸
(8)  建礼門院の最期
(9)  霊を呼ぶ琵琶の力
 


【展開】
 
(1)  山の源氏、海の平家

 平家滅亡に至る三大合戦、一の谷の合戦、屋島の合戦、壇ノ浦の合戦の火ぶたが切って落とされます。一の谷の合戦で鮮明になるのが、山の源氏、海の平家、という両者の対比です。
 壇ノ浦の垂直の壁の高さは約45メートルの高さ。本当に可能か? 東京の芝にある愛宕神社の「曲垣平九郎出世の石段」(*1。添付写真)を馬で上り下りして成功した例が3回あります(*2)
(*1) http://rintaro95.hateblo.jp/entry/atagojinnja
(*2) https://ja.wikipedia.org/wiki/愛宕山_(東京都港区)
 

(2)  忠と恕のあいだで――敦盛最期

 「小二郎がうす手負うたるをだに直実は心苦しうこそ思ふに、此殿の父、うたれぬと聞いて、いか計りかなげき給はんずらん。あはれたすけ奉らばや」。平敦盛を組み伏せた熊谷直実が、忠(源氏の武将として平家の若武者を討ち果たす)と恕(同じ年頃である自分の息子小二郎を想い起こし、若武者の父親の心に一体化)の葛藤を語る名場面です。
 

(3)  義経というカリスマ

 社会の統治集団のあり方が、カリスマを戴く組織からシステムの組織へ転換する時代が描かれています。カリスマの平清盛が死に、御恩と奉公というシステムの組織を確立した源頼朝の時代にかわっていきます。儒教の価値観をもとにシステム的な統治の形をつくろうとした平重盛は、志なかばで死にました。『平家物語』で大活躍するカリスマ源義経は、後に頼朝に討たれます。
 

(4)  勝敗を分けた“かえり忠”――壇ノ浦の合戦

 壇ノ浦の戦いは、もし平家側の阿波野重能という武将の裏切り(密告)がなければ、平家が勝っていたのではないでしょうか。
 かえり忠とは、元の主君に背いて別の主君に忠義を尽くすことです。忠義を尽くすという自分の態度は変わらないのですが、尽くす対象が替わる。勝ちそうな主君に鞍替えすることは、当時は絶対的な悪だとは捉えられていませんでした。
 

 以下は、後に書きます。
 

(5)  もはやこれまで――先帝身投
(6)  見るべき程の事は見つ
(7)  戦いのあとの心象風景――大原御幸
(8)  建礼門院の最期
(9)  霊を呼ぶ琵琶の力
 


<出典>
安田登(2019/5)、『平家物語』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)