【 根性の有無 ・ 五輪柔道 】 100キロ級を制したウルフ・アロンに根性があり、100キロ超級5位の原沢久喜にそれがなかった、というわけではない。彼らの根性は私が誰よりも近くで見てきたし、何一つやり残すことなく戦ってくれた
オリンピックで試合直後のインタビュー。「良い成績をおさめられたのはどうしてですか」という定型型のインタビューに、答えも定型型が多かった。
「応援してくださった、支えてくださった、皆さん(コーチや支援者や家族など)のおかげです」「くじけそうになったけれど、頑張った」。感動的な素晴らしい応答であり、申し分ないが、私には物足りない。
何故なら、五輪に出るような選手は、おそらく全員が、多くの応援者に支えられ、想像を絶するような頑張りで練習してきたに違いない。その大小が、メダルの有無や色を決めたとは思えない。
鈴木桂治(国士舘大学柔道部総監督)が読み応えのある文を書いていた。以下は、前半。後半は、次回。
「楽しく、おもしろく、飽きさせない」手法では、命を削って戦い抜く精神力は培われない。根性が大切である。しかし、根性の多寡が、メダルを決めたのではない。ウルフ・アロンも原沢久喜も、何一つやり残すことなく戦ってくれた。
ただ、2人を比較すると根本的な個性の差は大きかったと思う。
===== 引用はじめ
選手の成長過程で、コーチが「楽しく、おもしろく、飽きさせない」手法で導くことはあっていい。勝負の世界はしかし、それだけでは語れない。積み重ねた歳月の総決算となる一戦で、命を削って戦い抜く精神力は、楽しさやおもしろさの中では培えない。「根性」と口にするだけで自眼視される時代に、私があえて根性論を唱える理由だ。
男子日本代表は東京五輪で金メダル5個という空前の成績を残した。高度な技術が必要なのはもちろん、最後の最後は、技術を超越した領域での戦いを制した者が頂点に立つ。そんな場面を目の当たりにした。
100キロ級を制したウルフ・アロンに根性があり、100キロ超級5位の原沢久喜にそれがなかった、というわけではない。彼らの根性は私が誰よりも近くで見てきたし、何一つやり残すことなく戦ってくれた。
ただ、2人を比較すると根本的な個性の差は大きかったと思う。
===== 引用おわり
次回に続く。
<出典>
「根性」と根っこにある「性(サガ)」
【鈴木桂治 柔のすゝめ】 産経新聞(2021/09/16)
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