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2021年9月10日金曜日

(2453) ル・ボン『群衆心理』(2-2) / 100分de名著

 【 読書 ・ 100de名著 】群衆に取り憑いた集団心理が、間違った方向に向かえば、その先に待っているのは全体主義や戦争、そして文明の崩壊。一方、集団が正しい方向に向かえば、社会に改革と前進をもたらす運動や革命につながる


第2回  13日放送/ 15日再放送

  タイトル: 「単純化」が社会を覆う

 

放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50

再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55

 及び        午後 00:00~00:25

 

 

【テキストの項目】

(1)  思想が群衆に浸透する過程

(2) 「わかりやすさ」を好む社会

(3)  群衆は正しく推理する力をもたない

(4)  群衆は心象で物事を考える

(5)  言葉は心象を呼び出す押しボタン

 

(6)  群衆がはまる陰謀論

(7)  暴走を止める術はないのか

(8)  道理はなぜ群衆に響かないのか

(9)  群衆化ではなく連帯を

 

【展開】

(1)  思想が群衆に浸透する過程

(2) 「わかりやすさ」を好む社会

(3)  群衆は正しく推理する力をもたない

(4)  群衆は心象で物事を考える

(5)  言葉は心象を呼び出す押しボタン

 以上は、既に書きました。

 

(6)  群衆がはまる陰謀論

 幻想は、民衆にとって必要欠くべからざるものであるために、民衆は、灯火に向う昆虫のように、幻想を提供する修辞家のほうへ本能的に向うのである。これまで、民族進化の大きな原動力は、真実ではなくて、誤謬であった。今日、社会主義が、その勢力を加えつつあるのは、それが、今なお活気のある唯一の幻想にほかならぬからである。

 これまで群衆が、真実を渇望したことはなかった。群衆は、自分らの気にいらぬ明白な事実の前では、身をかわして、むしろ誤謬でも魅力があるならば、それを神のように崇めようとする。群衆に幻想を与える術を心得ている者は、容易に群衆の支配者となり、群衆の幻想を打破しようと試みる者は、常に群衆の いけにえ となる。

 

(7)  暴走を止める術はないのか

 経験は、群衆の精神に真実を確立し、あまりにも危険になりすぎた幻想を打破するために、有効な、ほとんど唯一の方法となる。しかし、それには、経験が、非常に大規模に実現され、かつしばしばくりかえされねばならない。一世代によってなされた経験は、次の世代にとっては、おおむね無用である。

 かつて経験してきたことを、無用にしてはならない。そのことにル・ボンは危機感を覚えていたのだと思います。時間が経つなかで消され、潰されてしまう経験や知恵を堅持し、それをつねに頭に置いておく。そうすることで、物事を批判的に考えることができるはずです。逆に批判を煙たがる人たちは、歴史の蓄積を嫌います。即物的な判断がしにくくなるからです。

 

(8)  道理はなぜ群衆に響かないのか

 合理的な論理の法則は、群衆には何の作用をも及ぼさない。群衆を説得するのに必要なのは、まず、群衆を活気づけている感情の何であるかを理解して、自分もその感情を共にしているふうを装い、ついで、幼稚な連想によって、暗示に富んだある種の想像をかき立てて、その感情に変更を加えようと試みること、必要に応じてはあともどりもし、特に、新たに生れる感情をたえず見ぬくことである。

 人間の統治に道理が参加することをあまり要求してはならない。名誉心、自己犠牲、宗教的信仰、功名心、祖国愛のような感情は、道理によらず、むしろしばしば道理に反して生れたのであって、これらの感情こそ、これまであらゆる文明の大原動力であったのである。

 

(9)  群衆化ではなく連帯を

 今回は、群衆の精神構造を中心にみてきました。ル・ボン曰く、群衆はわかりやすく単純化された思想しか受けいれず、キャッチーな言葉や標語、魅力的な幻想を提供する修辞家に引き寄せられていく。 … ル・ボンは一方で、集団が正しい方向に向かえば、社会に改革と前進をもたらす運動や革命につながることも示唆しています。

 ル・ボンは、社会に改革をもたらす運動を、群衆のポジティブな側面として示唆しています。群衆化と連帯は似て非なるものです。集団が一つの方向に向かうという点は確かに似ていますが、連帯には、その始まりに明確な問題意識と意思があります。対する群衆は、確たる意思も動機もないまま、いつの間にか巻き込まれ、感染するように広がっていく。また、連帯の動きは、群衆化した人のように個性や知性の消失を条件としていません。

 

<出典>

武田砂鉄(2021/9)、ル・ボン『群衆心理』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



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