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2021年9月4日土曜日

(2447) ル・ボン『群衆心理』(1-2) / 100分de名著

 【 読書 ・ 100de名著 】「自粛警察」「自粛要請」という言葉。だって、「みんな」そう思っているし、自分もこんなに我慢しているのだから「みんな」そうすべきでしょう、という群衆的心理が相互監視を強めてしまっているのだと思います


第1回  6日放送/ 8日再放送

  タイトル: 群衆心理のメカニズム

 

放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50

再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55

 及び        午後 00:00~00:25

 

【テキストの項目】

(1) 群衆の時代

(2) 異色の心理学者が目撃した「群衆」

(3) 群衆は黴菌(バイキン)のように作用する

(4) あなたの身近に現れる群衆

 

(5) なぜ理性は易々と消え失せるのか

(6) 衝動的で興奮しやすい自動人形

(7) 単純さを好み、偏狭で横暴な群衆

(8) 群衆は本能的に隷属する

(9) 人間の合理性は、実はとても頼りない

 

【展開】

(1) 群衆の時代

(2) 異色の心理学者が目撃した「群衆」

(3) 群衆は黴菌(バイキン)のように作用する

(4) あなたの身近に現れる群衆

 以上は、既に書きました。

 

(5) なぜ理性は易々と消え失せるのか

 では、なぜ人間は集団精神に染まってしまうのか。その理由の一つとして、ル・ボンは人間の「無意識」の働きを指摘しています。

 精神の意識的生活は、その無意識的生活にくらべれば、極めて微弱な役目をつとめているにすぎない。(中略)われわれの日常行為の大部分は、われわれも気づかない、隠れた動機の結果なのである。

 活動している群衆のさなかにしばらく没入している個人は(中略)あたかも催眠術師の掌中にある被術者の幻惑状態に非常に似た状態に陥る。

 群衆は全員が同じ暗示にかかるため、その相乗効果で、より強く暗示される。

 

(6) 衝動的で興奮しやすい自動人形

 群衆中の個人は、もはや彼自身ではなく、自分の意志をもって自分を導く力のなくなった一箇の自動人形となる。 ~ 「自動人形」と化した群衆は、いったいどんな気質、行動をみせるのでしょうか。ル・ボンは五つの特性・傾向を挙げて詳しく論述しています。

 その第一が「衝動的で、動揺しやすく、昂奮しやすい」という性質です。

 群衆が衝動的なのは、無意識に支配されているがために、「脳の作用よりも、はるかに脊髄の作用を受ける」からだとル・ボンはいいます。自分で考えることをしない群衆は、刺激や暗示を受けると反射的・衝動的に反応し、いとも簡単に興奮状態に陥ってしまう。しかし、それは衝動でしかないので、長く持続することもありません。

 

(7) 単純さを好み、偏狭で横暴な群衆

 ル・ボンは、心理的群衆の特性として、第二に「暗示を受けやすく、物事を軽々しく信ずる性質」を挙げています。

 群衆は物事を極度に信じやすく、また、「極めて単純な事件でも、群衆の眼にふれると、たちまち歪められてしまう」とル・ボンは断じています。

 第三の特性は「感情が誇張的で、単純であること」です。

 群衆は、単純かつ極端な感情しか知らないから、暗示された意見や思想や信仰は、大雑把に受けいれられるか、斥けられるかであり、そして、それらは、絶対的な真理と見なされるか、これまた絶対的な誤診と見なされるかである。

 

(8) 群衆は本能的に隷属する

 群衆の特性として第四に指摘されているのが「偏狭さと横暴さと保守的傾向」です。ル・ボンは次のように分析します。

 群衆は、弱い権力には常に反抗しようとしているが、強い権力の前では卑屈に屈服する。(中略)常にその極端な感情のままに従う群衆は、無政府状態から隷属状態へ、隷属状態から無政府状態へと交互に移行するのである。(中略)放任されていても、やがて自己の混乱状態に飽きて、本能的に隷属状態のほうへ赴くのである。

 群衆的なものと距離を置いているつもりでも、「自動人形」となって隷属状態を受けいれてしまう危険は誰にでもある。この本は、当事者意識をもって読む必要があると思います。

 

(9) 人間の合理性は、実はとても頼りない

 人間はなぜ、どのようにして群衆と化すのか。群衆のなかに置かれると、人間はどうなるのか。ル・ボンの洞察に従えば、人間の理性や合理性は実に頼りないものです。

 はたして、自分は物事を「自分で」考えられているだろうか。群衆のなかに入り込んでしまって、為政者の指示や世の中にあふれる情報を鵜呑みにしているだけではないか。そのことを、いま一度立ち止まって考える必要があると思います。

 

<出典>

武田砂鉄(2021/9)、ル・ボン『群衆心理』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



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