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2017年12月22日金曜日

(1095) 不完全な神々のたわむれ / スタニスワフ・レム『ソラリス』(4)


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第4回 12月25日放送/12月27日再放送

月曜日   午後 10:25~10:50
()水曜日 午前 05:30~05:55
      午後 00:00~00:25
 

 クリスをはじめてステーションの三人の科学者たちは、ソラリスの海から送り込んでくるお客さんに対処するため、二つの準備を進めていた。

 そもそも「お客さん」が出現するようになったのは、ギバリャンがどうにか海とコミュニケーションが取れないかと、海に向かってX線を照射した十日ほどあとからだった。「お客さん」は人間が眠っているときに現れる。人間の覚醒時の思考を、再びX線で送り込めば、「お客さん」が来なくなるのではないか。これが第一の方法である。

 第二の方法は、「ニュートリノ破滅装置」である。血液検査の結果、ニュートリノからできているようなので、この装置で「お客さん」を破壊させることができると考えた。


 クリスたちは、X線照射装置を使い、目覚めているときのクリスの脳電図を海に向かって照射する実験を行った。しばらく海からの反応はなかったが、十五日目から海に変化が現れ、その後、新たな「お客さん」は現れなくなった。対策は成功した。


 クリスとハリーの直面する問題はまだ解決していない。ステーションを出て二人で別の場所で暮らしたいが、それは叶わない。同堂巡りしていたクリスの日々に、ついに最終符が打たれた。

 ハリーは自分からスナウトに頼んで、サルトリウスが密かに開発していたニュートリノ破滅装置によって、自らを消滅させてしまった。「愛するあなた、これは私のほうから彼に頼んだことなの」という置手紙が残されていた。自分の身を消し去ったほうが愛するクリスのためになるという彼女の思いは、液体酸素での自殺に失敗した後も、変わっていなかった。
 

 このようにして、「お客さん」はいなくなった。
 

 ステーションの人間たちにこうした体験をもたらした海とは、いったい何だったのか。クリスはステーションで起こったことを報告書にまとめたあと、もう一度海と向き合い、「欠陥を持った神」という一つの結論に到達した。

 「… 何もわからなかった。それでも、残酷な奇蹟の時代が過ぎ去ったわけではないという信念を、私はゆるぎなく持ち続けていたのだ」というクリスの言葉で、この小説は終結を迎える。
 

 因みに、レムはタルコフスキー監督の映画『惑星ソラリス』に大変不満で、二人は映画の製作中、三週間の議論の末に、喧嘩別れをしたという。
 

出典
沼野充義(2017/12)、スタニスワフ・レム『ソラリス』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)
 

期待以上に面白いSFだった。

 

20181月号予告   テキストは、12/25発売予定

西郷隆盛『南洲翁遺訓』
講師:先崎彰容 日大教授

我を愛する心を以て人を愛する也

質素に暮らした「封建士族の棟梁」という、古色蒼然たるイメージが強い西郷隆盛。しかし、実は彼は世界情勢に敏感で開放的な「近代人」だった__。強く自己規律を求めるゆえ、説教じみた内容と思われている『遺訓』の言葉を思想史の観点から読み直し、新たな西郷像を提示する刺激的な試み!


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