【 藤原正彦 ・ 本質を追求しない 】問題が起きたときに事の本質を徹底的に問いただそうとしない。和を乱すことになるからだ。(1)自然科学が発達しなかった、(2)日清戦争での脚気、(3)暗号解読で敗れた海軍、(4)敗北が明らかな日米戦争に突入
本質を追究しないのは日本人の特徴である。問題が起きたときに事の本質を徹底的に問いただそうとしない。和を乱すことになるからだ。物事も突き詰めて考えようとしない。
(1)
明治維新まで自然科学は発達しなかった
(2)
日清戦争のとき、陸軍で多くの将兵がビタミンBl不足による脚気で命を落とした
(3)
米国に暗号を解読され続け、多くの輸送船や戦艦が沈められた
(4)
戦う前から誰の目にも敗北が明らかな日米戦争に突入した
【展開】
(1)
明治維新まで自然科学は発達しなかった
西暦500年から1500年までの1千年、日本一国の生み出した文学は質および量で全欧米を圧倒している。一方、明治維新まで、物の本質を追究する優れた哲学、自然科学(物理・科学)は、生み出されなかった。
(2)
日清戦争のとき、陸軍で多くの将兵がビタミンBl不足による脚気で命を落とした
日清戦争のとき、陸軍では多くの将兵が戦闘ではなく、ビタミンBl不足による脚気で命を落としたが、原因追究を怠ったため、日露戦争でも再び多数の死者を出した。当時の陸軍は白米至上主義だったが、精米された自米にはビタミンBlがほとんど含まれない。
(3)
米国に暗号を解読され続け、多くの輸送船や戦艦が沈められた
海軍も、昭和17年のミッドウェー海戦で戦力的に劣る米軍に暗号を解読され大敗を喫したのに、敗因を十分に吟味しなかった。そのため米軍の暗号解読は続き、連合艦隊司令長官の山本五十六は撃墜死し、多くの輸送船や戦艦が潜水艦の待ち伏せにより沈められた。
陸海軍いずれも、原因の追究は、担当者である友人や上官の重大責任を追及することになるため、軍の和を乱すことを嫌ったのである。
(4)
戦う前から誰の目にも敗北が明らかな日米戦争に突入した
日米戦争も同じだ。当時、日米の国力差をみれば、戦う前から誰の目にも敗北は明らかだった。にもかかわらず、精神論が支配する中で、異を唱えれば、臆病者と罵られ和を乱すことになると、みなが本質論から目を背けた。その結果としての悲劇だった。
<出典>
戦後76年、ワクチンを恵まれる屈辱 藤原正彦
産経新聞(2021/08/15)
https://www.sankei.com/article/20210813-OW2N4277VZJAHCRBOOPIXMQMY4/
※
会員記事(有料)
0 件のコメント:
コメントを投稿