この3回のシリーズは、次の聴講を聞いて、検討したものである。
市民福祉セミナー②
子どもを取り巻く環境『貧困問題と居場所づくりを考える』
平成28年9月29日
主催 社会福祉法人神戸市社会福祉協議会、市民福祉大学
内容は、講義とミニシンポジウム
子どもを取り巻く現状についての講義
『子どもの育ちのための切れ目のない支援を』
~子どもたちの現状が私たちに投げかけている意味を捉えて~
日本福祉大学 社会福祉学部 野尻 紀恵 氏
ミニシンポジウム 実践現場からの報告
①
子どもの居場所をつくる
WACCA塾の取り組みから
認定NPO法人 ウイメンズネット・こうべ 茂木美知子氏
②
『こども食堂』は子どもの居場所
ひらのっ子食堂活動報告
~現状と課題~
社会福祉法人 神戸実業学院 金子紘己氏
シンポジウムのタイトルには、「貧困」の文字がある。
しかし、講義とシンポジウム報告のタイトルには、「貧困」の文字がない。
それには理由があると私は思った。現在は、
「貧困問題」と名付ければ、シンポジウムで集客できる
「貧困問題」と名付ければ、予算・補助金・助成金を取りやすい
だか、本質は「貧困問題」ではない。
本質は「家庭の養育能力の低下にともない、劣悪な成長環境の下にいる子どもたちが多い」にあると、私は思う。これを見失ってはいけない。貧困が大きく関係しているだろうが、貧困でない子どもたちにも問題は起きているだろう。
それでも「貧困問題」だと言い張るなら、お金を彼らに与えるのが解決策になる。それも意義あるものだが、それだけで問題が解決する(子供たちが幸せになる)とは思えない。注力すべきは、金ではない。
事例1:「何を食べるかではなく誰と食べるか」
本当にお金が無くて晩御飯も食べられなくて栄養失調の子を救うという面もあろうが、「団らんの食事を失った子どもたち」への働きかけが大きな意味をもつのではないか。
例2:兄は働くと生活保護を受けられなくなるから働くなと言われた。それを見て「僕の夢は、将来生活保護を受けることだ」と皮肉を言った弟
生活保護を受けている子が将来生活保護を受ける割合が多いと言う。生活保護は必要だが、子どもに深刻な負の影響を与えることも見逃せない
例3:大阪市では、学習塾の先生を連れてきて、生活保護の子どもを集めてきて勉強させたが、成績はあまり良くならなかった。元市長は「やっぱり、あいつらは努力しない」と結論づけた。
塾に行かせれば解決する問題ではない。
さて、現状を俯瞰すると
・ 家庭の養育能力の低下にともない、問題が発生している
・ 地域の養育能力も低下しており、上記問題をカバーできない
・ NPO法人などが、この問題に取り組もうとしている
第一の対象は、子どもたちであるが、それだけではない
・ 家庭に働きかけて、家庭の養育能力が向上する
・ 地域と共に問題解決を図ることを通じて、地域の養育能力が向上する
将来的には、このような方向に向かい、外から来たNPO法人等に助けてもらうのではなく、家庭や地域自らが問題解決に主体的に取り組めるようになるのが、肝要ではないか。そこに至るまで、NPO法人など外の力を利用するのは、何ら問題はない。
「貧困問題」を前面に出すと、これらの大切な視点が見えなくなり、家庭や地域の力が(依存により)益々低下してしまう恐れがある。それは、なんとしても避けなければならない。
WACCAも、ひらのっ子食堂も、真正面から「家庭の養育能力の低下にともない、劣悪な成長環境の下にいる子どもたちが多い」という課題に取り組んでいる。
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