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このブログは、左側の投稿欄と右側の情報欄とから成り立っています。

2020年2月29日土曜日

(1894)  アーサー・C・クラーク スペシャル(1-2) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K1035)  むしろ黒字リストラ促進か / 70歳就業の法制化 <高齢期の仕事>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/02/k1035-70.html
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☆☆
あと数時間のうちには命運のつきる第三惑星(=地球)の生命体を救うため、緊急で駆けつけている宇宙船。この物語は終始、異星人の視点で読む物語。SFでなければ書き得ない視点の転換が最後にある。人類はすごい
☆☆
 
第1回  2日放送/ 4日再放送
  タイトル: 知的好奇心が未来をつくる--『太陽系最後の日』
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55


 及び        午後 00:00~00:25
 
【テキストの項目】

(1)   イギリスの理科少年
(2)   知られざる文学的系譜
(3)   バナールから受けた影響
(4)   作家としての骨格形成
(5)   異星人の視点で読む物語
 
(6)  「青二才」としての人類
(7)  「センス・オブ・ワンダー」な大団円
(8)   素朴な宇宙への憧れ
(9)  「人類スゲー小説」の功罪
(10) C・S・ルイスとの論争
 
【展開】
(1)  イギリスの理科少年
(2)   知られざる文学的系譜
(3)   バナールから受けた影響
(4)   作家としての骨格形成
(5)   異星人の視点で読む物語
 以上は既に書きました。
 
(6)  「青二才」としての人類
 生命体は発見できなかったが、図書室のような場所で画布が見つかった。「二足生物で、腕は二本しかない。そういうハンディキャップを負いながらも、立派にやっていたようだ。目もふたつしかない、うしろにもついていないかぎりは」彼らのように高度に進化を遂げた異星人にとって、人類は不完全でまだ若く、青二才のような存在に見えているらしい。
 なんとか救ってやりたいという気持ちはあるが、地球は惨憺たる様子。「燃えるものが、なにひとつ残っていない」。生存者はついに見つかりませんでした。
 
(7)  「センス・オブ・ワンダー」な大団円
 かつてSFの本質を表す概念として「センス・オブ・ワンダー(驚きの感覚)」なる言葉が盛んに使われる時期がありました。本作『太陽系最後の日』はまさにセンス・オブ・ワンダーを代表する歴史的一編となりました。
 地球人は絶望かと思って帰路についた時、見事に、宇宙に向かって飛び出している地球人を発見した。地球人は、異星人たちが思っている以上にすごい種族だった――。そう暗示しながら、この短編は終わるのでした。これは、SFでなければ書き得ない視点の転換でした。ほかの知的生命体の視点から人類を見直すことで、改めて人類の持っている潜在的な可能性を際立たせているのです。
 
(8)   素朴な宇宙への憧れ
 クラークという作家は、素朴な宇宙への憧れをストレートに表明し、自身も「楽観的」だと認めるほどの啓蒙主義から出発した人だったのです。
 知的好奇心こそ人間の基本的衝動であり、それ自体が素晴らしいものである、と高らかに謳いあげる純真さがあります。
 
(9)  「人類スゲー小説」の功罪
 本作を読んだ読者は「人類ってすごいな」と感心せずにはいられません。気持ちが高揚するし、すごく励まされる。こうした効果を持つ作品をここでは仮に「人類スゲー小説」と呼ぶことにしましょう。
 「人類スゲー小説」には、全く異なる二つの面があります。第一に、未来を切り拓こうとする意志を醸成してくれる。一方、読者を無条件に肯定する「人類スゲー小説」には、麻薬的な魅力がある。これが第二の面です。
 
(10) C・S・ルイスとの論争
 ファンタジー小説の傑作『ナルニア国物語』の著者として有名な、イギリスのC・S・ルイスは、クラークに、決して無視できない影響を与えた。
 ルイスは、キリスト教的世界観のもと、金星や火星などの惑星が舞台の神秘的な小説も書いていました。当時ルイスはむやみに科学技術の名目を振りかざして宇宙へ行きたがる《英国惑星間協会》の思想に危険な匂いを嗅ぎ取り、ときに苦言を呈することもあり、クラークはそれに反発してルイスに手紙を書き、論争を挑んだことがあったのです。
 
<出典>

瀬名秀明(2020/3)、アーサー・C・クラーク スペシャル、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

 

2020年2月28日金曜日

(1893)  児童虐待と母性神話

 
◆ 最新投稿情報
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(K1034)  WHO、健康な食事の5つのヒント <体の健康>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/02/k1034.html
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☆☆
子どもへの虐待のニュースが多い。「子どもへの無条件の愛」が弱まっているのではないか?だが、同時に「子どもへの無条件の愛」を持てという圧力が虐待を助長している面もあるのでは?「母性神話」は有害にもなる
☆☆
 
 (1886)で書いた「子どもへの無条件の愛」の対極にあるのが児童虐待。
 
 最近、ニュースが多いので児童虐待が増えている印象を受けるが、そんなことはないと思う。隠れていたものが表に現れてきただけで、実態の数が増えたのではないだろう。むしろ「犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛むとニュースになる」。ニュースに取りあげられないほどには多くない。虐待は当たり前の事ではないから、ニュースになっている。現われれば正すことができる。虐待のニュースを観るのは痛ましく心が暗くなるが、取り上げられること自体はよいことと思う。
 
 ただ、気になるのは、「子どもに愛情を感じられないから、虐待した」というケースが増えているのではないかということ。「親が、特に母親が、子供に愛情に感じないのは変だ」と思っていたが、変だと思うことが変ではないかと思った。
===== 引用はじめ
 「母性神話」とは、母親は自分のことはさておき、子どもに尽くすことが母親の愛(母性愛)であり、女性にはそんな「母性本能」が備わっているという言説。だから、母親が育児をするのが自然であり、当然であり、最善である…という考えが、日本の社会では広く一般的に信じられています。


===== 引用おわり
https://www.co-progress.jp/info/2018/01/3.html
 
 多くの母親は、子どもに愛情を感じるだろうが、子育てが大変すぎて、愛情を感じられない時もあるだろうし、「母性本能」が強い人も弱い人もいるだろう。「母性本能」を押し付けることが、児童虐待の一因になっていることはないだろか。
 
 育児は大変だけれど、育児をしている過程で、母性本能が強化される、あるいは、強く意識されるようになる。母性本能があるから育児をしている面もあるが、育児をしていることによって母性本能が強まる、その両方向が循環している。個人主義が強まることにより、育児という実行が先ず弱まり、それに伴い母性本能が弱まるという逆循環が始まっているのではないか。
 
 「子どもへの無条件の愛」は当然のようにあるのではなく、それは育ち、強化されていくものだろう。
 
添付は、
https://japan-indepth.jp/?p=3346

2020年2月27日木曜日

(1892)  アーサー・C・クラーク スペシャル(1-1) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K1033)  高齢の親 緩~く見守り <見守り>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/02/k1033.html
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☆☆
アポロ月面着陸が1969年。その23年前にクラーク『太陽系最後の日』が発刊された。その前駆として、ステーブルドン『最後にして最初の人類』、バナール『宇宙・肉体・悪魔』、ラッサ―『宇宙の征服』があった
☆☆
 
第1回  2日放送/ 4日再放送
  タイトル: 知的好奇心が未来をつくる--『太陽系最後の日』
 
【テキストの項目】
(1)   イギリスの理科少年
(2)   知られざる文学的系譜
(3)   バナールから受けた影響
(4)   作家としての骨格形成
(5)   異星人の視点で読む物語
 
(6)  「青二才」としての人類
(7)  「センス・オブ・ワンダー」な大団円
(8)   素朴な宇宙への憧れ
(9)  「人類スゲー小説」の功罪
(10) C・S・ルイスとの論争
 
【展開】

(1)  イギリスの理科少年
 『太陽系最後の日』は、作家クラークとしての処女作であり、そして同時に出世作となった名作です。本作は一時のSFが持っていた特徴をほとんど完璧に備えた作品で、クラーク入門と同時にSF入門として最適の一編といえます。
 子ども時代のクラークは海の他にも恐竜のとりことなり、化石集めに熱中したりもしたようです。典型的な理科少年ですね。けれども彼には海と同じくらいに、あるいはそれ以上に心を惹かれるものがあました。すなわち、宇宙です。
 
(2)   知られざる文学的系譜
 1929年、12歳の少年クラークは「アメージング・ストーリーズ」というアメリカのSF雑誌に出会います。当時のクラークにとってSFは「意識の拡大をもたらす唯一、本物の麻薬」だったと述べています。
 さらに1930年、オラフ・ステープルドンの『最後成して最初の人類』に出会います。「わたしの想像力をこれほど強烈に揺さぶった本は、あとにも先にもない――ステーブルドン風な千万無量の展望と何億年もの歳月、諸文明と人類全種族の興亡は、わたしの宇宙観をそっくり一変させ、以来わたしの書くものに多大な変化を及ぼしている」
 
(3)   バナールから受けた影響
 分子生物学者バナールが書いた『宇宙・肉体・悪魔』は、人間は宇宙に出ていく過程でどのように変貌していくかを考察した思想書です。人間は宇宙に出ていく過程で、肉体を変え、知性を変え、従来の限界を乗り越えていく存在になってゆく――バナールはそう予言しました。
 クラークが実際にバナールを読み始めたのは1950年代からだったそうですが、後年にも『宇宙・肉体・悪魔』を激賞し、もっとも素晴らしい科学的予測の試みであったと振り返って評価しています。
 
(4)   作家としての骨格形成
 デイヴィッド・ラッサーが書いた科学啓蒙書『宇宙の征服』に出会ったクラークは、宇宙に惹かれていきました。「こうしてわたしははじめて、宇宙旅行というものはただおもしろい作り話でないことを知った。それはいつか現実におこりうることなのだ」
 やがてクラークは、公立中等学校の校内誌に文章を寄稿し始めます。16歳の時です。揺籃時代において、作家クラークを形成する骨格はほぼ準備されていたとみるべきでしょう。
 
(5)   異星人の視点で読む物語
 「いったいだれの責任なのか? 三日間というもの、その疑問がアルヴェロンの脳裏を去らなかった」という書き出しで、短編『太陽系の最後の日』が始まります。
 アルヴェロンは、あと数時間のうちには命運のつきる第三惑星の生命体を救うため、緊急で駆けつけている宇宙船の船長です。第三惑星とは、地球のことです。
 この物語は終始、銀河調査船のアルヴェロン船長と「さまざまな出自の生物」である乗務員の視点から語られてゆく、つまり、異星人の視点で読む物語なのです。
 
 
 以下は、後に書きます。
(6)  「青二才」としての人類
(7)  「センス・オブ・ワンダー」な大団円
(8)   素朴な宇宙への憧れ
(9)  「人類スゲー小説」の功罪
(10) C・S・ルイスとの論争
 
<出典>
瀬名秀明(2020/3)、アーサー・C・クラーク スペシャル、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

2020年2月26日水曜日

(1891)  存在のエネルギー

 
◆ 最新投稿情報
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(K1032)  速足より階段の上り下り <体の健康>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/02/k1032.html
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☆☆
「私はここにいてよい」「私は私のままであってもよい」がないと人は「存在の危機」を感じ、「存在のエネルギー」が注ぎ込まれる。「存在の危機」がないと、「存在のエネルギー」は「成長のエネルギー」に転化する
☆☆
 
 心安らかでおられる条件:
(1) 私はここにいてよい
(2) 私は私のままであってもよい
と感じていること
 
 これがないと辛い。ここにいると落ち着かない。ここにいてもよいと認められるために、何かしなければならないとプレッシャーを感じる。私は自分と違う何かを演じなければならないと思う。でも、うまくいかない。「存在の危機」という言葉を思いついた。
 
 同時に、「存在のエネルギー」というものを考えてみた。人は膨大な「存在のエネルギー」を持っていて、「存在の危機」に瀕すると、そこにエネルギーが注ぎ込まれる。
 
 その「存在の危機」が無くなるとどうなるか、「存在のエネルギー」はどこにいくか。「成長のエネルギー」に変わると私は思う。自己の存在を高みに押し上げようとする。
 
 人は、自分を成長させようとする性向をもともともっている。余裕がないと隠れてしまうが、余裕があると働き始める。
 
 (1886)で書いた「無条件の愛」を受けていると、存在は危機に直面しない。だから、そのような環境で育った子は、エネルギーを自分の成長に振り向ける。

2020年2月25日火曜日

(1890)  アーサー・C・クラーク スペシャル(0) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K1031)  初期のアルツハイマー病の9割以上が改善する新しい治療法「リコード法」 <認知症>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/02/k1031-9.html
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☆☆
作家アーサー・C・クラークは、SFの代表的作家の一人であり、スターンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』の原作者として知られています。SFの主な価値は、人の創造性を鼓舞することです
☆☆
 
100de名著」 アーサー・C・クラーク スペシャルが、32()から始まります。Eテレ。
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
講師は、瀬名秀明(作家)
 
<全4回のシリーズ>  いずれも3

【はじめに】  科学技術と物語の豊かな未来
 
第1回  2日放送/ 4日再放送
  タイトル: 知的好奇心が未来をつくる--『太陽系最後の日』
 
第2回  9日放送/ 11日再放送
  タイトル: 人類にとって「進化」とは何か--『幼年期の終わり』
 
第3回  16日放送/ 18日再放送
  タイトル: 科学はユートピアをつくれるか--『都市と星』
 
第4回  23日放送/ 25日再放送
  タイトル: 技術者への賛歌--『楽園の泉』
 
【はじめに】  科学技術と物語の豊かな未来
 スターンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』の原作者として知られている、イギリスの作家アーサー・C・クラークは、SFの代表的作家の一人です。本書では彼のよさが充分に発揮された四作品を厳選し、発表年代順に読んでゆくことで、作家クラークの特徴とSFの持つ大きな可能性を考えてゆきます。
 クラークは、SF作家としかいいようがない作家です。クラークを読むことはSFを読むことですが、それはすなわち人類が「科学・技術」と「小説・物語」の関係性をどう育んできたかを辿り、考え直す格好の契機でもあるのです。
 いまクラークを手に取って、科学技術と物語の豊かな未来を目にしていただきたいのです。クラークは、SF界きっての名文家でした。独特のユーモアも持ち合わせていました。そして何より、本当に美しいものをきちんと美しく書ける稀有な才能の持ち主でした。
 クラークは、SFについて次のように語りました。「私が思うにその主な価値は、教育的であるというより、人の創造性を鼓舞することです」。
 
<出典>
瀬名秀明(2020/3)、アーサー・C・クラーク スペシャル、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

2020年2月24日月曜日

(1889) 【来月予告】アーサー・C・クラーク スペシャル。【投稿リスト】ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』 / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K1030) 「大切な記憶は何ですか?~アルツハイマーと戦う~」(BS1スペシャル) <認知症>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/02/k1030.html
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【来月予告】 アーサー・C・クラーク スペシャル『』 / 100de名著
 
20203月号 (100de名著)    テキストは、2月25日発売予定(NHK出版)
アーサー・C・クラーク スペシャル。講師:瀬名秀明(作家)
 
SF界の巨星が予言した未来
 
通信衛星の発案者にして、SF黄金時代を創り出した作家クラーク。その作品群は、私たちの来たるべき未来を大胆に予言する。人類にとって進化とは何か? 科学はユートピアを作れるのか? 『太陽系最後の日』『幼年期の終わり』『都市と星』『楽園の泉』の4作を中心に、卓越した文明論としてクラークの思考実験を読みとく。彼が言うように、十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかないのかーー?
 


【投稿リスト】 ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』
公式解説は、
https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/95_havel/index.html
 
私が書いたのは、
 
(1863)  ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』(0) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2020/01/1863-0100de.html
 
(1865)  ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』(1-1) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2020/01/1865-1-1100de.html
 
(1866)  ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』(1-2) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2020/02/1866-1-2100de.html
 
(1870)  ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』(2-1) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2020/02/1870-2-1100de.html
 
(1872)  ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』(2-2) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2020/02/1872-2-2100de.html
 
(1878)  ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』(3-1) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2020/02/1878-3-1100de.html
 
(1880)  ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』(3-2) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2020/02/1880-3-2100de.html
 
(1885)  ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』(4-1) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2020/02/1885-4-1100de.html
 
(1887)  ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』(4-2) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2020/02/1887-4-2100de.html
 
<出典>
阿部賢一(2020/2)、ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

2020年2月23日日曜日

(1888)  子供への無条件の愛、自分への無条件の愛

 
◆ 最新投稿情報
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(K1029)  「定年男子の会」(大江秀樹) <高齢期の仕事>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/02/k1029.html
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☆☆
条件付きの愛。この条件の裏には「そうでなければならない」という強い思いこみが入っている。それが真実かどうかは関係ない。あまりに私たちは無意識で思いこみを持っているということに、注意しなければならない
☆☆
 
 「おりこうさんの貴方、大好きよ」というのが条件付きの愛、「あなたが悪いことをしても、それでも貴方が大好き」が無条件の愛。無条件の愛に育まれてきた子は、しっかりと育っていく。


 「子どもへの無条件の愛」だけではなく、「自分自身への無条件の愛」も大切ではないかと思った。どんな失敗をしても私が好き。どんなに下手でも私が好き。情けなくなるような私でも、それでも私が好き。

 「自分自身への無条件の愛」があると何が変わるか? 考えてみて、二つ思いついた。
(1)  自分を傷つけようとしなくなる。すると、他者を傷つけることもなくなる。自分を傷つけることと他者を傷つけることは、いつも同時に起こる
(2)  さらに、成長しようとする。批判されても、それが応援の声に聞こえ、その声をヒントにして修正していく。自分がダメだなと思ったときには、本来の素敵な私に戻ろうとする。それは難しいことではない。落ち込むことなく、何かに向かっていける。目は自分自身に向かわず、行く先に向かう
 
 添付写真は、
https://allabout.co.jp/gm/gc/438742/

2020年2月22日土曜日

(1887)  ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』(4-2) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K1028)  70歳までの雇用延長、努力義務として企業に示された7つの選択肢 <高齢期の仕事>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/02/k1028-707.html
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☆☆
「反政治」と思われるものが「政治」となりうること、「力なき者」にも「力」があること、言葉に新たな光を当て新たな文脈を付与することで、言葉を通して「力」をもたらしている。「力」は意識した瞬間に生まれる
☆☆
 
第4回  24日放送/ 26日再放送
  タイトル: 言葉の力
 
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
 
【テキストの項目】

(1)  「言葉の力」を考え続けた人、ハヴェル
(2)   視覚詩で言葉の本質を射抜く
(3)   上滑りする言葉の不条理を描く戯曲
(4)   演劇が社会を変えていく
 
(5)   言葉――両面的価値のある、いつわり多き現象
(6)   大統領としての言葉
(7)   倫理の力
(8)  「力」を想起させる言葉
 
【展開】
(1)  「言葉の力」を考え続けた人、ハヴェル
(2)   視覚詩で言葉の本質を射抜く
(3)   上滑りする言葉の不条理を描く戯曲
(4)   演劇が社会を変えていく
 以上については、既に書きました。
 
(5)   言葉――両面的価値のある、いつわり多き現象
 言語が奇蹟となりうるような力をもたらす一方、偽りともなるという二面性を有していることをハヴェルは強調し、「言語とは神秘的な、多義性をもつ、両面的価値のある、いつわり多き現象である」と鋭い警告を発します。
  あらゆるものの初めに言葉があります。
  それは奇蹟で、我々が人間であるのはそのおかげです
  しかしそれは、同時に、わな、試練、まやかし、そして試金石でもあります。
 この演説原稿はまだ社会主義体制下で書かれたものですが、その後まもなく、ハヴェルは一国の大統領になります。
 
(6)   大統領としての言葉
 「我が国土は繁栄していません」。ハヴェルが大統領になって最初にしたことは、嘘をつかないことでした。
 美辞警句で彩られた過去の大統領の演説とは異なり、ハヴェルは大統領になって初めての公的な演説で、国の厳しい現状を訴えました。それは、チェコスロヴァキアの人々にとって、目を背けたくなるような過酷な現実です。しかし、大統領という重い責任を負う立場から、かれはその現実を冷静に訴えようとしました。
 
(7)   倫理の力
 君は、ある重要な決断に迫られている。Aを選ぶほうが自分にとって都合がいいのはわかっている、でも、同時に、Bをやった方が正しいと何かの声が語りかける。

 自分より上に、あるいは自分の外に何らかの基準があるのを感じずに、善をどうやって見分ける? いや、できない、自分たちの中にある善は、自分たちがその源ではない! それは、我々以前にあった何かとの共鳴、そして我々のあとに続く何かとの共鳴なんだ。
 
(8)  「力」を想起させる言葉
 自分たちがいかに無力であったとしても、世界を変えることができるのだと理解する可能性を我々誰もが秘めているのです。

 動き出すのは、まず個々人それぞれにおいてなのです。誰かを待っていても、誰もやってこないでしょう。できやしない、というのは真実ではありません。自身の性格、出自、教育の程度、自意識という点で問題があろうとも、自分にある力は、もっとも無力な人たちでさえ、持っている唯一のものであり、同時に、他の誰かが奪うことのできない唯一のものなのです。
 
<出典>

阿部賢一(2020/2)、ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

2020年2月21日金曜日

(1886)  三塁手と遊撃手の境界線はあるか

 
◆ 最新投稿情報
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(K1027)  個人Blog 3月中旬リスト <サイト紹介>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/02/k1027-blog.html
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☆☆
組織として仕事をするとき、役割分担を決めるのが普通だが、その役割分担に拘るとうまくいかない。役割があっても境界線がなければ、誰かができなかったら誰かがカバーする。境界線のある組織には、いつかは勝てる
☆☆
 
 三塁手と遊撃手の境界線はあるか
 
===== 引用はじめ
 「野球」と「仕事」の話を紹介したい。三遊間に飛んだ打球を誰が処理するか-がテーマ。


 「三塁手が捕れなかったら、遊撃手がカバーする。遊撃手も捕球できなければ、左翼手がバックアップする。仕事もそう。役割は決まっているけど、役割の境界線ってないだろ。三塁手と遊撃手の境界線ってあるか。ないやろ。仕事もそう。誰かができなかったら、会社がいい方向に向かうために助け合うんや」
===== 引用おわり
<出典> (1882) と同じ
北川信行、三塁手と遊撃手の境界線はあるか 
【スポーツ茶論】 産経新聞(2020/02/11)
https://www.sankei.com/sports/news/200211/spo2002110003-n1.html
 
 これは、野球。ラグビーでも同様
 
===== 引用はじめ
 どうやってボールをキープするかというと、ボールを持っている人間が役割を果たせなかった事を常に想定し、フォローしていればキープできます。
なので、
- ミスはいつでも起こる(という想定)
- それを仲間が全力でフォローする(想定外な事が起きてもフォロー)
- ミスは起きるものなので、ミスを責めない。逆にフォローしていなかった事を責める。
といったマインドになります。
===== 引用おわり
<出典>
誤解されがちな「One for all, All for one」の本当の意味
https://note.com/ss_morioka/n/n8d4e9222f517


添付図は、
https://b-baseball.com/shortstop-4955#i-5

2020年2月20日木曜日

(1885)  ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』(4-1) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K1026)  村民支える「買い物ツアー」 <高齢者の移動>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/02/k1026.html
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☆☆
身近でありながらも、政治の世界ではあまり聞くことのない語彙、具体的には「真実」「倫理」「人間性」「愛」といった表現が多用されている。そして、演劇における社会との関与は、ディシデントの姿勢にも連なる
☆☆
 
第4回  24日放送/ 26日再放送
  タイトル: 言葉の力
 
【テキストの項目】
(1)  「言葉の力」を考え続けた人、ハヴェル
(2)   視覚詩で言葉の本質を射抜く
(3)   上滑りする言葉の不条理を描く戯曲
(4)   演劇が社会を変えていく
 
(5)   言葉――両面的価値のある、いつわり多き現象
(6)   大統領としての言葉
(7)   倫理の力
(8)  「力」を想起させる言葉
 
【展開】

(1)  「言葉の力」を考え続けた人、ハヴェル
 … そして何より、戯曲家と政治家という二つの顔は、実は一つに繋がっているのではないかという感覚を覚えました。その両方の領域の結節点とも言うべき文章が、この『力なき者たちの力』だとようやく感じるようになったのです。
 ハヴェルはこの本を通して、「力」の構造だけではなく、「力」をつくる「言葉」についても考察しています。
 
(2)   視覚詩で言葉の本質を射抜く
 『反-記号』は、タイプライターを使って制作した視覚的な詩を集めたものです。この詩集に使われているのは、小説や詩の「言葉」とは異なり、白いページの上に自在に配置された「文字群」です。単語と単語の組み合わせから生じる意味に空間的な要素が加わり、通常の線状的な言語表現とは異なる表現の可能性が模索されています。
 「障壁」という作品は、「私(jā)」と「あなた(ty)」の障壁として「言葉(slova)」が立ちはだかっています。
 
(3)   上滑りする言葉の不条理を描く戯曲
 『ガーデンパーティー』は、登場人物による質問と答えがかみ合わずにどんどん行き違っていく、ナンセンスな戯曲になっています。『通達』は、ある役所を舞台にした架空の人造言語「プティデペ」を巡る不条理劇です。
 この二つの戯曲でハヴェルが表現したのは、社会主義体制下の官僚制度における「言語の儀式化」であり、言語の空虚さでした。言語は力を持つこともあれば、空虚にもなりうる。
 
(4)   演劇が社会を変えていく
 ある書簡でハヴェルは、演劇と社会との関係について、三つの領域があると論じています。
   演劇は上演されることによって「今、ここに」あるという状況をつくり、その場にいる演者と観客の間に実在的な絆を生みます。
   演劇を見るために劇場に通うようになると、自分の現実の生活の中に演劇が根を下ろします。
   演劇が社会の精神に少しでも介入すると、その精神を全体的に変えることに繋がります。
 
 以下については、後に書きます。
(5)   言葉――両面的価値のある、いつわり多き現象
(6)   大統領としての言葉
(7)   倫理の力
(8)  「力」を想起させる言葉
 
<出典>
阿部賢一(2020/2)、ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)