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2021年8月31日火曜日

(2443) ル・ボン『群衆心理』(0) / 100分de名著

 【 読書 ・ 100de名著 】 誰でも群衆になり変わってしまう危険性がある。個人個人は善良な性格の持ち主であっても、群衆の一員になると、粗暴で偏狭になってしまう。群衆は未熟な心理しかもたず、非合理な行動をとる存在である


100de名著」 ル・ボン『群衆心理』が、96()から始まります。Eテレ。

放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50

再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55

 及び        午後 00:00~00:25

講師は、武田砂鉄(ライター)

 

<全4回のシリーズ>  いずれも9

【はじめに】  現代社会を動かす群衆

 

第1回  6日放送/ 8日再放送

  タイトル: 群衆心理のメカニズム

 

第2回  13日放送/ 15日再放送

  タイトル: 「単純化」が社会を覆う

 

第3回  20日放送/ 22日再放送

  タイトル: 操られる群衆心理

 

第4回  27日放送/ 29日再放送

  タイトル: 群衆心理の暴走は止められるか

 

 

【はじめに】  現代社会を動かす群衆

 今回は、ギユスターヴ・ル・ボンの「群衆心理』(1895年刊)を取り上げます。独自の視点で近代社会と人間の心理を読み解いた、社会心理学の嚆矢とされる名著です。

 本書が書かれた当時のフランスは、市民の蜂起と産業革命によって、社会が大きく変化していました。一般市民という「群衆」が急速に存在感を増しており、王侯貴族ではなく、群衆が歴史を動かすようになったとル・ボンは指摘します。そんな時代に、群衆とは何か、それはいかに形成され、どのような特質・心理・行動様式をもっているのかを解明したのが『群衆心理』です。この本では、群衆を統制。操縦しようとする指導者の手口も明快に分析されています。

 ル・ボンは、群衆は未熟な心理しかもたず、非合理な行動をとる存在であると述べています。重要なのは、国籍、性別、人種、生活様式、職業、性格、知力に関係なく、誰でも群衆になり変わってしまう危険性があると警告している点でしょう。個人個人は善良な性格の持ち主であっても、群衆の一員になると、粗暴で偏狭になってしまう。そうした事態は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が発展するにつれ、ますます可視化されているように思います。

 

<出典>

武田砂鉄(2021/9)、ル・ボン『群衆心理』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)





(2442) 『群衆心理』、『戦争は女の顔をしていない』 / 100分de名著

 【 読書 ・ 100de名著 】 【来月予告】ル・ボン『群衆心理』(善良な個人が狂暴化するとき)。【投稿リスト】アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』(五百人を超える「声」が奏でる生と死の記録)


【来月予告】 ル・ボン『群衆心理』 / 100de名著

20219月号 (100de名著) テキストは、8月25日発売予定(NHK出版)

ル・ボン『群衆心理』。講師:武田砂鉄(ライター)

 

 善良な個人が狂暴化するとき

 

 人びとが無個性化した「群衆」と化す過程を考察し、その特性や功罪を論じた社会心理学の名著。なぜ群衆は合理性のない極論を受け入れるのか? 指導者やメデイアはいかに群衆心理を煽動するのか? 気鋭のライターが政治のあり方からネット炎上までを俎上にあげ、現代にはびこる群衆心理の問題をあぶり出す。

 

【投稿リスト】 アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』

公式解説は、

https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/112_sensouwa/index.html

 

 

私が書いたのは、

 

(2408) アレクシエーヴィチ 『 戦争は女の顔をしていない 』(0)

http://kagayaki56.blogspot.com/2021/07/2408.html

 

(2417) アレクシエーヴィチ 『 戦争は女の顔をしていない 』(1-1)

http://kagayaki56.blogspot.com/2021/08/2417.html

 

(2419) アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』(1-2)

http://kagayaki56.blogspot.com/2021/08/2419.html

 

(2424) アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』(2-1)

http://kagayaki56.blogspot.com/2021/08/2424.html

 

(2426) アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』(2-2)

http://kagayaki56.blogspot.com/2021/08/2426.html

 

(2430) アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』(3-1)

http://kagayaki56.blogspot.com/2021/08/2430.html

 

(2434) アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』(3-2)

http://kagayaki56.blogspot.com/2021/08/2434.html

 

(2438) アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』(4-1)

http://kagayaki56.blogspot.com/2021/08/2438.html

 

(2440) アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』(4-2)

http://kagayaki56.blogspot.com/2021/08/2440.html

 

<出典>

沼野恭子(2021/8)、アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



2021年8月29日日曜日

(2441) 男は子どもでいたい。女は女でいたい/ 男と女の違い(37)

 【 読書 ・男と女の違い 】ある哲学者は、「人間には『男性』『女性』『母性』の3つの性がある」と言っています。男性は生まれてから死ぬまで一生男性のまま。しかし、女性は子どもを産むと「母」という別の性に生まれ変わるというわけです


  このシリーズ、具体的な紹介としては、最終回

 

家庭での役割

 

A)     ここが違う

男:男は子どもでいたい

女:女は女でいたい

 

B)     夫婦円満の万能ワード

男から女へ:たまには、ふたりでデートしようよ

女から男へ:今日、仕事どうだった?

 

【展開】

A)   ここが違う

 ある哲学者は、「人間には『男性』『女性』『母性』の3つの性がある」と言っています。男性は生まれてから死ぬまで一生男性のまま。しかし、女性は子どもを産むと「母」という別の性に生まれ変わるというわけです。

男:男は子どもでいたい

 < 一生子どもでいたい男は、女に「母親役」を求める >

 基本的に男性は、一生子どものままです。

 女性のように子どもを産み、育てるという経験をしないため(最近では、母親並みに子育てに参加する「イクメン」もいますが、出産・授乳はできませんよね)、いつまでも成熟せず、気分は子どものまま。どんなに男性が大人ぶっていても、心の底では「大人になんかなりたくない」「遊んでいたい」と思っています。

 いくつになっても、どんな立場にいても、近しい女性に母親役を求めて甘えます。そのため男は、いつの間にか妻のことを新しい「お母さん」だと思うようになります。

 

女:女は女でいたい

 < 一生女でいたい女は、母親役を求める男にイライラする >

 いっぽう女性は、この状況に耐えられません。なぜなら女性は、いつまでも女でいたいからです。

 こう言うと「あれ? 母親になるんじゃなかったの?」と思うかもしれませんが、女性が「母性」一色になるのは子どもがある程度育つまでの一時的なこと。子どもを産み、育てる責任のある性として、子どもの手が離れるまでの間だけ「母」になるのです。

 そのため、ある程度子どもが育ってくると、「母」から「女」にスイツチが戻るわけです。

 

B)   夫婦円満の万能ワード

 

男から女へ:たまには、ふたりでデートしようよ

 「ふたりで」「デート」という言葉をあえて使うのがポイント。子どもがいるなら「子どもの面倒見てるから、美容院でも行ってきなよ」「友達と会ってきなよ」なども。

 

女から男へ:今日、仕事どうだった?

 小さい子に「今日、学校どうだった?」と聞くように、その日あったことを聞きます。「今日はどんな一日だった?」でもOK。話し出したら「すごいね!」「やるじゃん!」とほめちぎります。

 

<出典>

五百田達成、『察しない男、説明しない女』、No.22



(2440) アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』(4-2)

 【 読書 ・ 100de名著 】『戦争は女の顔をしていない』は、アレクシエーヴィチがジャーナリズムから出発して文学の領域へと足を踏み入れようとしたその瞬間に誕生した、証言文学の金字塔と言ってもいいのではないでしょうか


第4回  30日放送/ 91日再放送

  タイトル: 「感情の歴史」を描く

 

放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50

再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55

 及び        午後 00:00~00:25

 

【テキストの項目】

(1)  歴史学と文学の違い

(2)  苦しみの言葉は時を超える

(3)  トラウマ ―― 終わらない戦争

(4)  共感=エンパシーの力

 

(5)  ドイツ人へのエンパシー

(6)  動物や自然への共感

(7) 「自由かパンか」

 

【展開】

(1)  歴史学と文学の違い

(2)  苦しみの言葉は時を超える

(3)  トラウマ ―― 終わらない戦争

(4)  共感=エンパシーの力

 以上は、既に書きました。

 

(5)  ドイツ人へのエンパシー

 共感する力を持っていたのは、作者であるアレクシエーヴィチだけではありませんでした。証言者たちもまた、他者の苦しみや悲しみへの共感力を持っていました。特に目を引くのが、「敵」であるドイツ兵に対する哀れみを感じている証言です。

 (証言)捕虜の中に一人の兵士がいた……。少年よ……。その兵士の眼が…手押し車だけを見てる。私のことなんか眼中になくて、手押し車だけを見てる。パンだ、パン……。私はパンを一個とって半分に割ってやり、それを兵士にあげた。その子は受け取った……。受け取ったけど、信じられないの……。信じられない……信じられないのよ。

 私は嬉しかった……憎むことができないということが嬉しかった。自分でも驚いたわ…

 

(6)  動物や自然への共感

 さらに、アレクシエーヴィチの著作には、証言者が人間だけでなく、自然にもエンパシーを感じていたことを感じさせる言葉も目立ちます。

 アレクシエーヴィチは、2016年に来日した際、福島県を訪れています。その後、東京外国語大学で行った講演で、彼女は「新しい哲学が必要だ」と語りました。

 「チェルノブイリやフクシマをまわって、人間は自然界における自分の位置を見直すべきだと悟りました。自分が自然界の主人だと考えることはやめるべきです。私自身の中にあったのは、人間の方が上だという優越感ではなく、動物の世界とつながっているという感覚です」

 

(7) 「自由かパンか」

 物質的な豊かさと自由のどちらを取るか、つまり「自由かパンか」という問題は、普遍的なものです。アレクシエーヴィチは、この問題に対して、こう言います。「人は常に選択しなければならない。苦悩をともなった自由か、それとも自由のない幸福か。そして大部分の人が後者の道を歩む」。実際、 … ペレストロイカで保障されたはずの言論の自由は、じわじわと締め付けられ、人々の萎縮が懸念されています。

 こうした状況に対し、東スラブのウクライナ、ロシア、ベラルーシでは、市民が主役になって自由を求める闘いが、現在進行形で続いています。アレクシエーヴィチが住んでいたベラルーシでは、2020年に行われた大統領選の不正疑惑をめぐり、 … 当局に拘束された夫の代わりに大統領選に立候補したスヴェトラーナ・チハノフスカヤを中心に「政権移譲調整評議会」が設立され、アレクシエーヴィチもこの評議会の幹部に名を連ねました。

 

<出典>

沼野恭子(2021/8)、アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



2021年8月28日土曜日

(2439) 日本の外務省は、アフガニスタンで何をしているのか(怒)

 【 アフガニスタン ・ 退避 】アフガニスタンに残っていた日本人1人を乗せた自衛隊の輸送機が、パキスタンに到着した。この自衛隊機が最終となり、国外退避任務にあたっていた自衛隊員や外務省職員も任務を終え、現地を離れた


 アフガニスタンに残る日本人などの国外退避をめぐり、日本時間の26日夜、退避希望者数百人が20台以上のバスに分乗し首都カブールの空港に向けて出発したものの、空港付近で発生した大規模な爆発により、移動を断念していたことが分かりました。

 退避を希望しているアフガニスタン人スタッフと連絡を取り合っているという女性は「タリバンが家を11軒訪問し外国人と関係があるアフガニスタン人を探していて、もし見つかったら何をされるか分からない恐怖に脅かされていると聞いています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210827/k10013227601000.html

 心配したとおり、アフガニスタンに残された日本人、日本のために働いてくれていた現地スタッフが、生命の危機にさらされている。

 この人たちは、どうなってしまうのだろう。「空港付近で過激派組織IS=イスラミックステートの地域組織の関与が指摘される大規模な爆発が起きたことで、移動を断念し引き返した」というのが理由だが、言い訳にはならない。予想できないような突発事故が起こるのは、十分予想できたはずだ。遅すぎる。

 

 なお「筆者が27日、外務省に問い合わせたところ、27日現在でアフガニスタンに残っている日本人は国際機関に勤務している人などわずかに6人だった」という報道もある。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e20d3571f6ce7f5ba02caff544939ff297abb1d9

 これが正しいとしたら、「退避希望者数百人が20台以上バス」のほとんどが、アフガニスタン人となる。

 

 政府関係者によりますと、アフガニスタンに残っていた日本人1人を乗せた自衛隊の輸送機が、アフガニスタンのカブールからパキスタンのイスラマバードに到着しました。

 この日本人を乗せた自衛隊機が最終となり、国外退避任務にあたっていた自衛隊員や外務省職員も任務を終え、現地を離れました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8199816bd74bc09037dbbf1c4a167d726726141d

 「C130輸送機の定員は約90人、座席以外に床を使えばその倍の人数を収容できるという」。もしも日本人以外を乗せていたら、そう報道されるだろうから、乗せていなかったのだろう。日本人は他国機で脱出し、日本機では外国人を助けない。ありえないことだろう。国際的な信用はなくなる。こんな日本を、今後、他国が助けてくれるとは思えない。

 それなのに、問題をまるまる残したまま、自衛隊機は帰ってしまった。残された人は、絶望的な状況に置かれている。

 おそらく、現在の法律に縛られて、法治国家として、これ以外の選択肢はないのだろう。手遅れだとは思うが、まっとうな法律にしておかねばならない。

 

 8月23日の記者会見で加藤官房長官は、「現地における日本の活動に参加・協力していただいた、大使館、JICA事務所の職員の皆さん方、さらには家族ということもあるだろう。そして皆さんの安全確保を図るというのは、国としても対応すべき事柄だと認識をしている」と述べた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e20d3571f6ce7f5ba02caff544939ff297abb1d9

 結果として、どうだったのか。対応が遅すぎる。

 

 「日本人大使館職員12人は17日にすでに英軍機でドバイに脱出している。また関係筋によれば、JICAの日本人職員たちも全員アフガニスタン国外に退去した。」

https://news.yahoo.co.jp/articles/e20d3571f6ce7f5ba02caff544939ff297abb1d9

 沈没しそうな船から、乗組員を置き去りにして、船長たちはさっさと脱出した。守るべき人を置き去りにしている。脱出すること自体は、問題ないと思う。なぜ、全員を17日に連れていけなかったのか。詳しいことは分からないが、どうも納得できない。

 

 在アフガニスタン日本大使館の職員12人は英軍の輸送機に同乗して国外へ脱出済み。国際機関で働く日本人職員や大使館などで働いていた現地スタッフは取り残された。19日にあった自民党外交部会では彼らを残したことに批判の声が相次いだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b25f1d345c2a61469e4923e53d6b80a5ec53f1b6

 

 外務省は17日、アフガニスタンの治安状況の急速な悪化を受け、15日をもって在アフガン日本大使館を一時閉館したと発表した。トルコのイスタンブールに臨時事務所を設置して当座の業務を継続し、同事務所で邦人保護などの業務に取り組むという。

https://jp.reuters.com/article/kato-presser-idJPKBN2FJ08D

 見捨ててはいないのだろうが、現地にいないと、できないことも多いだろう。といっても、いまさら現地に戻ることもできない。外務省職員の生命も大切だ。

 

 「アフガニスタンに日本人は必要」と言っている。

https://www.youtube.com/watch?v=JMEI3nhu8TY

 楽観的に読めば日本人に危害が及ばない、大切にしてもらえそうだが、「アフガニスタンに協力すれば」という前提条件があるし、彼らは統制がとれていないようなので、何が起こってもおかしくない。急に人質にされてしまうかもしれない。

 

 欧州、「退避作戦終了」相次ぎ表明

 韓国、390人の退避完了

産経新聞(2021/08/28)

 200人以上のドイツ人、数百人のオランダ人が取り残されているらしい。日本だけがうまくいっていない訳ではない。イギリスは「最後の一瞬まで退避活動を続ける」そうだが、退避活動を続けている人たちの生命が脅かされる。

 批判するのは簡単だが、思う通りできないのも現実だ。



2021年8月27日金曜日

(2438) アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』(4-1)

 【 読書 ・ 100de名著 】歴史とは編年的に事実を確定させていくものであり、それに対して自分が書いている作品は、ある出来事が起きたときに人々がどんな感情を持ったか、という極めて文学的な関心を満たすものだ


第4回  30日放送/ 32日再放送

  タイトル: 「感情の歴史」を描く

 

【テキストの項目】

(1)  歴史学と文学の違い

(2)  苦しみの言葉は時を超える

(3)  トラウマ ―― 終わらない戦争

(4)  共感=エンパシーの力

(5)  ドイツ人へのエンパシー

(6)  動物や自然への共感

(7) 「自由かパンか」

 

【展開】

(1)  歴史学と文学の違い

 アレクシエーヴィチは、「人間がどのように振る舞ったか」ではなく「どのように感じたのか」という、主観的経験を引き出して作品を作り上げました。客観的事実を突き止めようとする歴史家のスタンスとは違い、人間の感情や魂を重視するそのインタビューの仕方、関心の有りようを、彼女自身は「人文学者の目で世界を見る」と表現しています。

 アレクシエーヴィチは、自らの作品を「声によるロマン」と表現します。「ロマン」は、ロシア語では長編小説のことですから、「声による小説」というわけです。彼女の文学は、…たくさんの登場人物がいて、プロットや流れがある、一つの自立した文学作品になっています。アレクシエーヴィチの文学の本質を表すとき、「声によるロマン」という比喩は、最も分かりやすいものだと思います。

 

(2)  苦しみの言葉は時を超える

 「苦しみというのはそれ自体が芸術です。人は苦しむと、気高い声で話すようになります。作者にはとても手が届かないような気高い声です。作者は自らのいるべき場所をわきまえなければなりません。気高い話の後で作者が哲学を語る必要はないと思うのです」

 続く「だから私は自分の言葉を付け加えないのです」という言葉に、私(=解説者)は深く納得しました。苦しみから発せられる言葉は、時代の制約から解放され、時間を超越し、普遍的なものに昇華する。そんなアレクシエーヴイチの信念が伝わってきました。

 『戦争は女の顔をしていない』は、…日本では2019年から漫画化され、これまでロシア文学に触れることのなかった人にも、この作品が知られるきっかけになりました。

 

(3)  トラウマ ―― 終わらない戦争

 作中でも特に凄惨を極める経験とトラウマの証言を残しているのが、リュドミーラ・ミハイロヴナ・カシェチキナです。地下活動家だったリュドミーラは、戦中、ナチスに捕まり、拷間を受けました。

 (略)

 トラウマが残る経験、女性への差別、捕虜への不当な扱い。リュドミーラの証言には、戦争と「スターリン時代」の恐ろしさを象徴的に表すエピソードが詰まっています。リュドミーラは、戦時中も、戦後も、そして、ナチスからも、ソ連の当局からも、何重にも傷つけられました。こうした人たちのトラウマは、本当に深いものだっただろうと思うのです。

 

(4)  共感=エンパシーの力

 アレクシエーヴィチは、トラウマを抱えた人たちに寄り添い、時にともに涙しながら、自分のことのように心を寄せて証言を取ります。彼女の中にあるのは、自分より少し下の立場の人に対する哀れみを意味する「同情」ではなく、対等な立場にいる相手に感情移入する「共感」なのだと思います。他者の苦しみや悲しみに感情移入することができる、優れた感性を持ったアレクシエーヴィチだからこそ、この作品を生み出すことができたのでしょう。

 また、アレクシエーヴィチが深く共感しながら話を聞いたことは、証言者たちにとって、ある種の癒やしにもなったと考えられます。…証言することが彼女たちの気持ちを整理し、心の傷を少しでも癒やすものになっていてほしい。そんな願望を持たずにはいられません。

 

 以下は、後に書きます。

(5)  ドイツ人へのエンパシー

(6)  動物や自然への共感

(7) 「自由かパンか」

 

<出典>

沼野恭子(2021/8)、アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



2021年8月25日水曜日

(2437) 日本は今、変わらなければならない/藤原正彦(3)

 【 藤原正彦 ・変わらなければならない 】日本は、変わらなければならない。(1)グローバリズムは合わない、(2)真似ばかりの教育、(3)洗脳された日本人、(4)米国の属国、(5)国家と国民を支えるもの、(4)米国に物言う、(7)物言うためには


 米国のいいなりになり続けた日本は、変わらなければならない。米国に「ふざけるな」と言えなければならない。

(1)     グローバリズムは日本のお国柄にあわない

(2)     教育に至っては、欧米の真似ばかりだ

(3)     洗脳が今も生き続けている。日本は恥ずべき国という意識を植え付けられた

(4)     世界中から「米国の属国」と見られても恥じない日本

(5)     国家と国民を力強く支えるものは何か

(6)     米国に「ふざけるな」と言えなければならない

(7)     米国に守ってもらっているから物が言えないのならば

 

【展開】

(1)     グローバリズムは日本のお国柄にあわない

 我が国の武士は「武士は食わねど高楊枝」と言われる通り金銭を低くみていた。金より義理や人情を重んずる我が国にとって、金銭至上主義や生き馬の目を抜くような競争社会は国柄にまったくあわないのに、米国に押し付けられれば何も言えなかった。

 

(2)     教育に至っては、欧米の真似ばかりだ

 教育に至っては、欧米の真似ばかりだ。ゆとり教育がやっと終わったら、小学生に英語やパソコンだ。論理的思考の基礎は圧倒的に国語である。小学生が英語やパソコンにはしゃいでいては、日本から国際人もパソコンを作る人もいなくなる。

 

(3)     洗脳が今も生き続けている。日本は恥ずべき国という意識を植え付けられた

 どうしてこんな国になってしまったか。戦後まもなく、占領軍は「WGIP(War Guilt Information Program 私はこれを「罪意識扶植計画」と訳す)に基づき、日本の歴史や文化、伝統を否定し、先の戦争でいかに日本人が悪かったかを喧伝し、日本は恥ずべき国という意識を植え付けた。この洗脳が、なぜか今も生き続け、日本人は誇りを失っている。

 

(4)     世界中から「米国の属国」と見られても恥じない日本

 だから「日米地位協定」などという屈辱的協定すら破棄できない。世界中から「米国の属国」とみられていても恥じない。菅義偉首相や大臣たちは揉み手して外国にワクチンを恵んでもらっているが、彼らはもちろん国民もこれを国家的屈辱と思わない。

 

(5)     国家と国民を力強く支えるものは何か

 戦後は終わってないのだ。19世紀英国の作家スマイルズは「国家とか国民は、自分達が輝かしい民族に属するという感情により力強く支えられる」と言った。「米国の属国」でよいはずがない。

 

(6)     米国に「ふざけるな」と言えなければならない

 日米は軍事上の同盟国で、いまや無二の盟友といってよい。覇権主義中国に対峙するため、ますます結束しなければならない。だからこそ米国に「ふざけるな」と言えなければならない。仲がいいということは直言できるということだ。

 

(7)     米国に守ってもらっているから物が言えないのならば

 米国に守ってもらっているから物が言えないのならば、自主防衛の努力をすればよい。戦後76年、わが国は変わらなければならない。

 

<出典>

戦後76年、ワクチンを恵まれる屈辱 藤原正彦

産経新聞(2021/08/15)

https://www.sankei.com/article/20210813-OW2N4277VZJAHCRBOOPIXMQMY4/

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(2436) グローバリズムで、長期的視野を失った日本/藤原正彦(2)

 【 藤原正彦 ・ グローバリズム 】  グローバリズムで、長期的視野を失った日本。(1)「科学技術大国」の凋落、(2)第一の理由。国立大学法人、(3)第二の理由。株主至上主義、(4)いまや世界はグローバリズムの終焉を見て動き出している


 グローバリズムで、長期的視野を失った日本

(1)  「科学技術大国」の凋落

(2)  「科学技術大国」失墜の第一の理由。国立大学法人

(3)  「科学技術大国」失墜の第二の理由。株主至上主義

(4)     いまや世界はグローバリズムの終焉を見て動き出している

 

【展開】

(1)  「科学技術大国」の凋落

 二、三十年ほど前までは、家庭の電気製品は日本製が世界を席巻していたのに、今や見る影もない。製造業凋落の原因を、政府・与党からも野党からも追究する声が出てこない。自分たちの同僚や先輩の政治責任を追及することになるからだろう。

(2)  「科学技術大国」失墜の第一の理由。国立大学法人

 国立大学が「国立大学法人」となり、大学は国からの運営資金を毎年減らされた。基礎科学力が低下すれば、裾野に広がる応用的な科学力、技術力も下がるのは当然だ。「グローバリズム」つまり金銭至上主義のおかけで、日本は長期的視野を失ってしまったのだ。

(3)  「科学技術大国」失墜の第二の理由。株主至上主義

 2つ目は、株主至上主義である。株主は目先の利益を追求し、株価上昇だけを考える。1020年先をみた技術開発がおろそかになるのは当然である。株主至上主義とは技術力低下を促しい製造業を漬すための最善の方法なのだ。

(4)     いまや世界はグローバリズムの終焉を見て動き出している

 世界は新型コロナによるパンデミックに、グローバリズムの終焉を見て動き出している。英国は世界のワクチン製造会社や国内製造拠点に多額の政府支援を打ち出した。その間、日本は感染者数増減を見ては、緊急事態宣言を出したり引っ込めたりしていただけだった。

 

<出典>

戦後76年、ワクチンを恵まれる屈辱 藤原正彦

産経新聞(2021/08/15)

https://www.sankei.com/article/20210813-OW2N4277VZJAHCRBOOPIXMQMY4/

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2021年8月24日火曜日

(2435) 和を乱さないために、本質を追求しない日本人/藤原正彦(1)

 【 藤原正彦 ・ 本質を追求しない 】問題が起きたときに事の本質を徹底的に問いただそうとしない。和を乱すことになるからだ。(1)自然科学が発達しなかった、(2)日清戦争での脚気、(3)暗号解読で敗れた海軍、(4)敗北が明らかな日米戦争に突入


 本質を追究しないのは日本人の特徴である。問題が起きたときに事の本質を徹底的に問いただそうとしない。和を乱すことになるからだ。物事も突き詰めて考えようとしない。

(1)     明治維新まで自然科学は発達しなかった

(2)     日清戦争のとき、陸軍で多くの将兵がビタミンBl不足による脚気で命を落とした

(3)    米国に暗号を解読され続け、多くの輸送船や戦艦が沈められた

(4)    戦う前から誰の目にも敗北が明らかな日米戦争に突入した

 

【展開】

(1)     明治維新まで自然科学は発達しなかった

 西暦500年から1500年までの1千年、日本一国の生み出した文学は質および量で全欧米を圧倒している。一方、明治維新まで、物の本質を追究する優れた哲学、自然科学(物理・科学)は、生み出されなかった。

(2)     日清戦争のとき、陸軍で多くの将兵がビタミンBl不足による脚気で命を落とした

 日清戦争のとき、陸軍では多くの将兵が戦闘ではなく、ビタミンBl不足による脚気で命を落としたが、原因追究を怠ったため、日露戦争でも再び多数の死者を出した。当時の陸軍は白米至上主義だったが、精米された自米にはビタミンBlがほとんど含まれない。

(3)    米国に暗号を解読され続け、多くの輸送船や戦艦が沈められた

 海軍も、昭和17年のミッドウェー海戦で戦力的に劣る米軍に暗号を解読され大敗を喫したのに、敗因を十分に吟味しなかった。そのため米軍の暗号解読は続き、連合艦隊司令長官の山本五十六は撃墜死し、多くの輸送船や戦艦が潜水艦の待ち伏せにより沈められた。

 陸海軍いずれも、原因の追究は、担当者である友人や上官の重大責任を追及することになるため、軍の和を乱すことを嫌ったのである。

(4)    戦う前から誰の目にも敗北が明らかな日米戦争に突入した

 日米戦争も同じだ。当時、日米の国力差をみれば、戦う前から誰の目にも敗北は明らかだった。にもかかわらず、精神論が支配する中で、異を唱えれば、臆病者と罵られ和を乱すことになると、みなが本質論から目を背けた。その結果としての悲劇だった。

 

<出典>

戦後76年、ワクチンを恵まれる屈辱 藤原正彦

産経新聞(2021/08/15)

https://www.sankei.com/article/20210813-OW2N4277VZJAHCRBOOPIXMQMY4/

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