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2019年3月30日土曜日

(1558)  マルクス・アウレリウス『自省録』(1-1) / 100分de名著

 
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(K0699)  中高年ひきこもり61万人 <定年後>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/03/k0699.html
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第1回  1日放送/ 3日再放送

  タイトル: 自分の「内」を見よ
 


【テキストの項目】
(1)   運命に導かれて皇帝に
(2)   奇跡的に残った『自省録』
(3)  『自省録』から浮かび上がるアウレリウス像
(4)   自然に一致して生きる
(5)   善の泉は自分の「内」にある
 

【展開】

(1)  運命に導かれて皇帝に

 マルクス・アウレリウスは121年、ローマの名門家庭に生まれました。賢帝による治世が続き、ローマ帝国が平和と繁栄を謳歌していた時代です。ハドリアヌス皇帝は、幼いアウレリウスをかわいがり、この頃からゆくゆくは皇帝にと目していたようです。
 後継者に指名されたアントニヌス・ピウスはアウレリウスを養子にし、ハドリアヌスが亡くなり帝位を継ぐや、自分の娘であるファウスティナと婚約させ、アウレリウスを次期皇帝に指名します。この時、アウレリウスはまだ18歳でした。
 ピウス帝の死去を受け、アウレリウスは、39歳で帝位を継承します。
(注)ローマ帝国の「五賢帝」:(1)ネルウァ、(2)トラヤヌス、(3)ハドリアヌス、(4)アントニヌス・ピウス、(5)マルクス・アウレリウス。
 

(2)   奇跡的に残った『自省録』

 羊皮紙やパピルスに書かれた写本は脆弱で、物理的に残すことが極めて困難でした。残ったとしても、保存状態が悪くて解読できなかったり、火災や略奪の憂き目に遭うこともあり、今まで伝わってきたのは奇跡的です。
 何よりもこの本が後世に残り長く読み継がれているのは、本書を読んだ人が、後世に伝えるべき価値と普遍性があることを見て取ったからです。
 

(3)  『自省録』から浮かび上がるアウレリウス像

 アウレリウスは、プラトンが理想とした哲人政治を具現化した賢帝といわれます。アウレリウス自身も「哲学者が統治するか、統治者が哲学をするかなら国家は栄える」と語っていたと伝える歴史書もあります。
 国家の正義も個人の正義もすべて、真の意味での哲学からこそ見て取ることができると考えるようになり、政治的権力と哲学的精神が一体化しなければ、国家にも人類にも不幸の止むことはないという哲人王の思想に結実していきます。
 「プラトンの国家を望むな。わずかでも前進すれば十分だと考えよ。そして、その成果を僅かなものと考えよ。」(九・二九)
 

(4)   自然に一致して生きる

 「もはや善い人とはいかなるものかを議論するのはきっぱりやめ、実際にそのような人間であること。」(一○・一六)
 アウレリウスが少年時代から深く傾斜していたのは、古代ギリシャのストア哲学です。ストア哲学は実践の哲学なので、大事なことは善い人に実際になることだという意味です。
 それでは、何を実践するのか。ストアの哲学において最も大切なのは「自然に一致して生きる」ということです。ここでいう自然は、山川草木という普通の意味での自然ではなく、宇宙の秩序を示す法則(理性、ロゴス)を意味しています。
 「自分の自然と共通の自然とに従ってまっすぐ道を進め。これら二つの道は一つのものなのだ。」(五・三)
 共通の自然というのは、宇宙の自然という意味です。宇宙の裡にある人間も、そのロゴスの一片、理性を分かち持っているとアウレリウスは考えます。
 

(5)   善の泉は自分の「内」にある

 「生きることのできるところでは、善く生きることができる。 … 」(五・一六)
 「善く生きる」とは、幸福に生きるということです。「善く」を名詞化した「善」はギリシャ語では道徳的な意味はなく、自分のためになるという意味です。
 人は誰しも幸福を求めています。しかし、幸福であるための手段の選択を誤らないためには、「善の泉」を掘り当てるためには、知的な探求が必要です。
 「他人の心に何が起こっているかに注意を向けないからといって不幸である人は容易に見つからない。他方、自分の心の動きに絶えず注意を向けない人が不幸であることは必然である。」(二・八)
 自分を不幸だと思っている人は、その原因を「外」に求めがちです。自分が不幸なのは、「あの人が意地悪をするから」「家族が協力してくれないから」「上司の理解がないから」というようにです。
 

<出典>
岸見一郎(2019/4)、マルクス・アウレリウス『自省録』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

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