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2019年3月9日土曜日

(1535)  (46) 永井荷風『ふらんす物語』 / 「明治の50冊」

 
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1.   どんな本か

1.1.  基本的には紀行文
1.2.  自由奔放
1.3.  文章はふわりとしなやか
1.4.  批判
1.5.  季節を大切にした
1.6.  まとめると


2.   どんな人か

2.1.  憧れの対象
2.2.  孤高の文学者
2.3.  不思議なまなざし
 


【展開】
 
1.   どんな本か

1.1.  基本的には紀行文

 〈遥(はる)か空のはずれ、白い夏雲の動くあたりに突然エイフェル塔が見えた。汽車の窓の下には青い一帯の河水(かすい)が如何(いか)にも静(しずか)に流れている〉
 憧れのフランスに着いた場面からつづられる「ふらんす物語」は、基本的には紀行文として読める。
 
1.2.  自由奔放
 由奔放。異国に遊ぶ若き文学者の情感たっぷりで流麗な文章が楽しめる。
 
1.3.  文章はふわりとしなやか
 文章はふわりとしなやか。描かれるのは日々のよしなしごと。霧が立ちこめる街を行き来する人影、草木(くさき)が吐く空気の香(かんば)しさ、さえわたる月光、池のほとりの花々、料理屋から漂う匂い、聞こえてくる音楽…。美しい情景と寄り添い、恋慕や悲愁、諦念をそっと吐露する。
 
1.4.  批判
 荷風は時代の批判者でした。フランスを『夢の都』として描くことで、明治日本の功利性や近代化の性急さを批判した。
 
1.5.  季節を大切にした
 日本人は季節の文化を大切にしてきましたが、明治維新で軽視されるようになり、切断された。それを自覚的に復活させたのは、なんといっても荷風なのでは。枕草子や徒然草に連なる伝統的なエッセー文学の季節感をよみがえらせた。
 
1.6.  まとめると
 きれいな世界に引き込んで、美しく刺す。恍惚(こうこつ)と怠惰が入り交じる
 


2.   どんな人か

2.1.  憧れの対象
 富国強兵、殖産興業が謳(うた)われて、経済、軍事、産業を学ぶことが主流だった時代に、芸術や文学のために私費で遊学できる人なんて荷風の他にはいなかった。だから期待されましたし、若者のあいだで憧れの対象になった
 
2.2.  孤高の文学者
 荷風は慶応義塾大学にゆかりのある文芸雑誌「三田文学」の創刊に携わるなど華やかに活躍。戦後も数々の作品を世に問う。孤高の文学者として、独自の足跡を近代文学史に刻んだ。
 
2.3.  不思議なまなざし
 荷風は生涯、等身大の文章の調子を持ち続けます。自覚的だったかどうかはわからないけど、不思議なまなざしを鍛えてきた。作品にはすてきな色や光や匂いがあふれている。
 


【プロフィル】永井荷風(ながい・かふう)
 明治12年、東京生まれ。本名は壮吉。20代で作家デビュー。官吏だった父の配慮で米欧に遊学。帰国後に慶応大教授となり、創刊した「三田文学」を主宰。大正5年に教授職を退き、創作活動に専念する。『日和下駄(ひよりげた)』『●(=さんずいに墨)東綺譚(ぼくとうきたん)』など著書多数。大正6年から死の前日まで書き続けた日記『断腸亭日乗(だんちょうていにちじょう)』も有名。昭和34年、79歳で死去。
 


<引用>
永井荷風『ふらんす物語』 富国強兵もどこ吹く風
【明治の50冊】(46)   産経新聞(2019/02/18)
 
(46)永井荷風『ふらんす物語』 富国強兵もどこ吹く風
https://www.sankei.com/life/news/190218/lif1902180015-n1.html

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