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2020年7月19日日曜日

(2034)  吉本隆明『共同幻想論』(3-2) / 100分de名著



◆ 最新投稿情報
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(K1175)  楽天リサーチ「終活に関する調査」 / 悲しみ癒やす最後の言葉(1) <終活>
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1968年刊行の『共同幻想』は、全共闘世代の学生らに熱狂的に迎えられた。かつてない視点で書かれた思想は「戦後最後の政治の季節」を、ある一面において領導した書籍であった。一方で、その難解さでも知られる
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第3回  20日放送/ 22日再放送
  タイトル: 国家形成の物語--刑法の成立

放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25


【テキストの項目】
(1)   対幻想が国家になるためには
(2)   ニーチェの原罪意識とスサノオ
(3)   共同幻想の爆破を試みたニーチェ
(4)   疚しさという共同幻想

(5)   スサノオはなぜ泣いたのか
(6)  「国つ罪」と「天つ罪」
(7)   国家に付着する対幻想の残り香
(8)   刑法に国家の完成をみる
(9)   政治的経済的自由だけでは救われない

【展開】
(1)  対幻想が国家になるためには
(2)   ニーチェの原罪意識とスサノオ
(3)   共同幻想の爆破を試みたニーチェ
(4)   疚しさという共同幻想
以上は、既に書きました。

(5)   スサノオはなぜ泣いたのか
 第二の問題に移りましよう。スサノオはなぜ、母の国に帰りたいと泣いたのでしょうか。吉本はここでもニーチェの「疚しさ」に注目します。
 スサノオのそれは個人的な苦悩を意味しません。近代的な自我が芽生えて、生きることに煩悶しているわけではないのです。スサノオが泣く原因は、あくまでも共同体の秩序に反することへの困惑です。つまり母権制の秩序と大和朝廷のそれ、いずれの共同幻想に所属すべきか判断できないとき、倫理問題が発生すると言いたいのです。

(6)  「国つ罪」と「天つ罪」
 有名な「天の岩戸」神話です。ここで重要なことは、スサノオが犯した罪の内容です。『祝詞』を参照すると、畔放ち、溝埋み、生け剥ぎ、逆剥ぎ、屎戸などの罪は「天つ罪」に分類することができます。一方で、「国つ罪」という分類もあって、そこでは、おのが母犯せる罪、おのが子犯せる罪、畜犯せる罪、昆ふ虫の災などが挙げられています。
 言うまでもなく、スサノオが犯した「天つ罪」は農耕社会の共同幻想に対する違反行為を意味します。彼が科された罰は、共同体からの「追放」と髭と手足の爪を切ることでした。これは清祓行為であり、当時の倫理のあり方が、穢れを清める行為にあったことが分かります。ここでもポイントは「追放」で、これはスサノオ個人が罰せられるよりも、共同体の秩序を維持することに関心があることを示します。
 この「天つ罪」が列島を新たに支配していく大和朝廷がもたらした罪概含だとすれば、一方の「国つ罪」は、前農耕的できわめて原始的な氏族共同体以前にまで遡る禁己です。二つの罪の間に置かれたスサノオは、大和朝廷の秩序に背反しつつ、贖罪の仕方は原始的な祓い清めの方法で行っていることになります。まさに過渡期の例であり、法の一歩手前の段階、すなわち「規範」の段階にあると言えるでしょう。
 
(7)   国家に付着する対幻想の残り香
 国家の成立を「法」の登場の有無で考えている吉本からすれば、法にも過去の対幻想のエロス的関係、時間性、タナトス的関係という三つの要素は、残り香として付着しているととらえられるのです。
 それが、私たちが国家を語る際、容易に感情移入し、肯定と否定に興奮する理由を教えてくれるのです。

(8)   刑法に国家の完成をみる
 最終的に吉本は『魏志倭人伝』と『隋書倭国伝』を参照し、国家の起源に迫ります。
 共同幻想の最終形態である「国家」は、刑法によって具体化した。当初、対幻想の拡大からはじまり脆弱そのものだった共同体が今や強靭な国家になりました。

(9)  政治的経済的自由だけでは救われない
 マルクス主義文学理論では、社会革命の糧になることばこそ重視されるべきだという社会主義リアリズム」の文学観が評価されていました。これに吉本は激しく反発します。政治がすべての中心課題となり、ことばがそれに奉仕するだけでは人間を描けない。エンゲルスのように経済的範疇だけでも不十分である。人間は政治的経済的自由だけでは救われない、もっと複雑な陰影を帯びた存在である。


<出典>
山崎彰容(2020/7)、吉本隆明『共同幻想論』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



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