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2020年7月12日日曜日

(2027)  吉本隆明『共同幻想論』(2-2) / 100分de名著



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エンゲルスは私有財産(家畜)、貨幣の誕生、それに伴う階級対立から国家を説明したが、先崎講師は「エロス的関係」「時間性」「タナトス的関係」と名づけた関係性が、国家の起源にあったということが明らかした
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第2回  13日放送/ 15日再放送
  タイトル: 「対幻想」とはなにか--国家とは、エロス的関係である

放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25


【テキストの項目】
(1)  『共同幻想論』各章の読み方
(2)   吉本が批判するエンゲルスの国家論
(3)   エンゲルスとはちがうかたちで国家の成立をとらえた吉本
(4)  『古事記』にみるエロス的関係
(5)   農耕社会への注目

(6)   タナトス(死)と「共同幻想」
(7)   共同幻想に浸食されるもの
(8)   吉本とエンゲルスの決定的な違い
(9)   国家とはエロス的関係を基礎とする

【展開】
(1)  『共同幻想論』各章の読み方
(2)   吉本が批判するエンゲルスの国家論
(3)   エンゲルスとはちがうかたちで国家の成立をとらえた吉本
(4)  『古事記』にみるエロス的関係
(5)   農耕社会への注目
 以上は、既に書きました。

(6)   タナトス(死)と「共同幻想」
 対幻想が共同幻想へと拡大するように、死もまた共同幻想へと拡大していくことが指摘されます。「人間の生理的な〈死〉が、人間にとって心の悲嘆や怖れや不安としてあらわれるとすれば、このばあい〈死〉は個体の心の自己体験の水準にはなく、想像され作為された心の体験の水準になければならない。そしてこのばあい想像や作為の構造は、共同幻想からやってくるのである」(「他界論」)

(7)   共同幻想に浸食されるもの
 『遠野物語』の舞台となった岩手県遠野地方では、六十歳になると蓮台野(レンデラノ)へと追いやられてしまう。蓮台野は他界を象徴する場所であり、集落の利害に反する存在は村はずれの蓮台野すなわちあの世との境界へ送られます。集落全体が風習を共同幻想として共有しているので、六十代の老人もこれを当然のこととして受け入れていました。
 合理的・科学的に見た場合、 … 共同体を維持していくために邪魔な存在なのです。しかし排除するには精神的葛藤を伴わざるを得ません。そこで因果関係を逆転し、共同幻想――古くからの習俗や祟りの伝承――によって他界をつくりだし、全員が共有する幻想によって、集落から「疎外」することをやむを得ない必然とするのです。

(8)   吉本とエンゲルスの決定的な違い
 エンゲルスの単線的で淀みない流れに対して、吉本が国家論で注目するのは、むしろ「断絶」です。
 『遠野物語』の分析は、エロスと時間にくわえ、死が共同幻想の起源にはたす役割を教えてくれたのです。私はこれを「タナトス的関係」と名づけ、国家や原始宗教、さらには小さなサークル組織にいたる、あらゆる人間関係の基礎をなしていると主張したいと思います。

(9)   国家とはエロス的関係を基礎とする
 共同幻想の本質に迫るためには、三つのポイントがありました。

   まず対幻想の「エロス的関係」に注目しなければなりません
 日本では、国家という概念に、同胞とか血とか皮膚の色など「身内のものの全体」をふくませてしまう。非合理な要素をふくんだものを、国家だと思ってしまう。
 この非合理な感情こそ、『古事記』に垣間見たエロス的関係が国家の中に残り香のように漂い、私たちの心に入り込んできていることの証しなのです

   第二に国家の起源には「時間性」があることを明らかにしました
 また国家を重視する際、歴史と伝統を強調することと、時間性の発見の間にも深い関わりがあると思われます。時間の発見が国家の発見につながっています。

   最後に『遠野物語』からは共同幻想が「タナトス的関係」を根底に湛えていることが分かりました

 また国家だけでなく宗教団体の殉教や、組織への忠誠のあかしに血判状を作成したり、水盃を交わしたりすることを思う時、タナトスが果たす役割は決定的に重要だと言えるのではないでしょうか。


<出典>
山崎彰容(2020/7)、吉本隆明『共同幻想論』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



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