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2020年7月10日金曜日

(2025)  吉本隆明『共同幻想論』(2-1) / 100分de名著



◆ 最新投稿情報
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エンゲルスの国家形成過程(経済的理由から権力が発生し国家を誕生させた。国家は支配階級に奉仕する共同体のことであり、来るべき社会革命を経て否定されるべきだ)と対峙。日本型国家モデルは、西欧型とちがう
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第2回  13日放送/ 15日再放送
  タイトル: 「対幻想」とはなにか--国家とは、エロス的関係である


【テキストの項目】
(1)  『共同幻想論』各章の読み方
(2)   吉本が批判するエンゲルスの国家論
(3)   エンゲルスとはちがうかたちで国家の成立をとらえた吉本
(4)  『古事記』にみるエロス的関係
(5)   農耕社会への注目

(6)   タナトス(死)と「共同幻想」
(7)   共同幻想に浸食されるもの
(8)   吉本とエンゲルスの決定的な違い
(9)   国家とはエロス的関係を基礎とする

【展開】
(1)  『共同幻想論』各章の読み方
 『共同幻想論』は添付表に示すように、序、5つのかたまり(章としては11)、後記からなる。一方、放映される100de名著では、一つの名著について4回放送される。
 第1回では、序文を徹底的に読み込むことにより、吉本隆明が『共同幻想論』を書かざるを得なかった「動機」に迫った。次に、添付表で、①②③は、難解なので読み飛ばす。
 ④から、国家の誕生が鮮やかに描きだされている。対幻想からどのような過程で共同幻想が成立するかを第2回、第3回でつかむことにする。
 残る個人幻想については、第4回で取り上げる。

(2)   吉本が批判するエンゲルスの国家論
 エンゲルスは「家族・私 財産・国家の起源」を明らかにしました。経済的利害による階級闘争を隠蔽するのが国家誕生の理由である。だから国家は、最も経済的に有利な支配階級に奉仕する共同体のことであり、来るべき社会革命を経て否定されるべきだと言うのです。
 吉本隆明は、これに対峙しました。

(3)   エンゲルスとはちがうかたちで国家の成立をとらえた吉本
 「<母系>制社会のほんとうの基礎は集団婚にあったのではなく(注:エンゲルスは集団婚にあったとしている)、兄弟と姉妹の〈対なる幻想〉が部落の〈共同幻想〉と同致するまでに<空間>的に拡大したことのなかにあったとかんがえることができる」。
 実際の性行為をふくまない心情の伸縮する関わり、幻想上の性関係を、私は「エロス的関係」と呼びたいと思います。吉本は疑似性的関係を「対幻想」と名づけ、国家や宗教をふくめた「共同幻想」の端緒に位置づけました。
 他人に対する喜怒哀楽の激しく揺れ動く感情が目に見えないものでありながら、私たちの心の多くの部分を占めていることを思う時、「人間とは幻想を抱く生き物だ」という吉本の主張は、極めて説得的に響いてくるのです。

(4)  『古事記』にみるエロス的関係
 領土侵略の野心がないことを確認するために、彼らは天の安河(アメノヤスノカワ)をさかいに「誓約」(ウケヒ)をして神々を生みます。相手への不信感とは文字通り一対一の関係における対幻想です。不信感もまたエロスのあり方の一つであると言うことができるでしよう。神々を生むにいたる行為は、姉弟間でなされた疑似的な性行為、つまり「幻想的な〈性〉行為」なのですが、それが「誓約」であることが重要です。なぜなら、対幻想が宗教的な祭儀行為を行い、結果、神々を生む様子は、共同幻想へと拡大していくことを意味しているからです。『古事記』のこの描写は日本神話において、エンゲルスとはまったく違ったかたちで「母権制」が誕生した瞬間を描いているとしました。

(5)   農耕社会への注目
 農耕士会の特徴は、穀物を栽培することで、人々が時間意識を獲得した点にあります。植物が枯死する代わりに種を残し、それを地中に埋めることで再び穀物が採れるサイクルが時間の存在を発見させました。その眼をもって眺めると、女性が子供を産み、人間が老いて死に代替わりする循環も、同じ時間性に支配されていることに気づきます。
 対幻想から共同幻想に向かう際、必ず「差異」や「矛盾」が存在する。それを乗り越える手段として農耕祭儀が始まった、これが吉本の考えです。つまり母権制の共同体が国家という共同幻想にまで発展する過程――ここではまだ原始農耕段階の共同体です――で、エロス的関係と時間性が決定的な役割を演じることが分かってくる。

 以降は、後日、書きます。
(6)   タナトス(死)と「共同幻想」
(7)   共同幻想に浸食されるもの
(8)   吉本とエンゲルスの決定的な違い
(9)   国家とはエロス的関係を基礎とする

<出典>
山崎彰容(2020/7)、吉本隆明『共同幻想論』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)


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