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2016年11月13日日曜日

(691) 森鴎外「高瀬舟」


 
あらすじ名作劇場  BS朝日
2016119日(水) 放映済み
写真は、放映画面より。
 
森鴎外の名作・高瀬舟の舞台は江戸時代。
島流しを命じられた京都の罪人を大坂へ護送する高瀬舟の船上である。
 
『高瀬舟』の評価
===== 評価 はじめ
鴎外は同時に自作解説「高瀬舟縁起」を発表しており、これによって長らくテーマは「知足」か「安楽死」か、それとも両方かで揉めてきた。同様の混乱は「山椒大夫」と自作解説「歴史其儘と歴史離れ」との間にも生じていた。しかし、「山椒大夫」には工場法批判が潜められているという指摘から、鴎外の自作解説は検閲への目眩ましであろうとの見解も生まれた。すなわち「妻を好い身代の商人の家から向かへた」という設定は「十露盤(ソロバン)の桁」を変えれば日英同盟の寓喩であり、「知足」のテーマは対華21ヶ条要求への批判として浮上してくる。こうして「高瀬舟」は今、歴史に借景した明治の現代小説としての再評価へと向かいつつある。
===== 評価 おわり
 
この名作は、何を訴えているのだろうか。
作者の意図は、作者しかわからない。
 
この名作を通じて、私はどのような訴えを聞いたか、
に設問を変え、整理してみる。
 
私が受け取ったのは、「知足」でも「安楽死」でも「対華21ヶ条要求への批判」でもなく、次の二つである。
    何を基準にして判断し、生きるか
「死にきれずに剃刀がのどに刺さったまま」の弟を目の当たりにし、何を規準にし、どう行動するか。喜助は、法律でなく、倫理でなく、道徳でなく、一般常識でなく、他人の目でもないものを規準にして行動した。「助かる見込みがないまま苦しんでいる」弟に対し、自分の内なる基準に基づいて行動した、と私は見る。
    運命をどう引き受けるか
恨み、辛みの姿は見えない。不満、不安の姿も見えない。後悔の姿も見えない。
澄んだ心境のもと、今無いものに目を向けず、今あるものに目を向けている。
 
 
『高瀬舟』
===== あらすじ はじめ
この高瀬舟に乗せられる罪人ですが、いわゆる根っからの悪党ばかりというわけではなく、大抵は一時の気の迷いで罪を犯してしまった者も多いのでした。
そんな罪人は見るのも辛いほど気の毒な様子をして、とても哀れに思わずにはいられないので、高瀬舟に乗るのは同心仲間からは嫌な役目とされていました。
ある日のこと、喜助という男が高瀬舟に連れられてきました。だがこの男はどうも様子がおかしいのです。
これから島流しにされるというのにいかにも楽しそうなのです。
これを不審に思った護送役の京都町奉行所の同心・羽田庄兵衛は、なぜそんな様子なのかを聞きました。
すると喜助は「私の半生はあまりに辛かったので、島流しにされても大して変わるまいと思うからです。お金まで貰えました」と語りました。
ふむ、なるほど。と思った庄兵衛でしたが、まだ腑に落ちないことがあります。
聞けばこの男は、弟殺しの罪で送られてきたのです。
ですがこの純粋そうな男が、弟を殺すなどという恐ろしい事をするのだろうか、という疑問がわきました。
 
庄兵衛は何故弟を殺したのか喜助に聞きました。
すると喜助の口から語られたのは、自害し損ねた弟を楽にしてやっただけ、という真実でした。
喜助は子供の頃に両親を亡くし、弟と2人で暮らしていました。しかし、弟が病気で働けなくなったので、貧しいながらも一生懸命働き、弟の面倒を見ていました。
ところが、ある日家に帰ると弟がのどから血を流し、苦しんでいます。聞けばこれ以上迷惑をかけたくないと思い、剃刀で自殺を図ったようなのですが、死にきれずに剃刀がのどに刺さったままになっていたのです。
弟は剃刀を抜いてくれと必死に頼みます。しかし、剃刀を抜けば出血で命を落とすことは間違いありません。喜助は悩んだ挙句、剃刀を抜きました。
弟は息絶えますが、そこを近所の人に見つかり、罪人になったといいます。それなのに喜助は「島流しなど今までの苦労に比べたら苦でない」と笑います。
そして「お上に居場所を作ってもらい、食べさせてもらえるのはありがたい」と答えるのです。
 
いえ、真実かは判りませんが、真実味は大いにありました。
 仮に真実だとしたら、果たして喜助はこの高瀬舟に乗せられ島流しにされるほどの罪人なのでしょうか。
庄兵衛は喜助のしたことは人殺しと呼べるのか、自問自答してしまいます。けれどお上の決定をひっくり返すことは出来ない。
疑問に思いながらも、庄兵衛はただ粛々と護送の役目を果たすこと以外は出来ませんでした。
===== 引用 おわり
 
 
  11/16()の「あらすじ名作劇場」の放送は、休止となります。
 
 

 
 

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