前回(618)に引き続き、アーノルド・ベネット『自分の時間』から取り上げる。この本は、題名の通り、自分の時間を有意義に過ごすための素晴らしい本だが、時間と関係のない話題においても、なるほどと学ぶことが多い。その一つが「生活信条と行動の一致」である。
===== 引用 はじめ P.100
… 自分の行動が自分の生活信条と一致していない人生というのは、無意味な人生だ …
そして、行動と生活信条を一致させるには、日々の生き方をよく検討し、自分を振り返り、断固として行動するしかないということである。
盗みをした人間が後々いつまでも後悔することになるのは、盗むという行為が彼らの生活信条に反したことだからである。もし、彼らが盗みは道徳的に立派なことであると心から信じてやったことなら、刑務所暮らしもまた楽しからずやということになるであろう。
こう考えると、殉教者は皆、幸福な人間ということになる。なぜなら、彼らの行為は自らの信条と完全に一致しているのだから。
===== 引用 おわり
周囲の人を思い返すとき、ここに書かれていることが正しいと思う。生き生きと生きている人は、生活信条と行動が一致している。悶々と自分で納得のいかない人生を送っている人は、生活信条と行動が一致していない。
別の言い方をすると、幸福でない人は、(A)自分の生活信条を知らないか、(B)知っているが行動が生活信条と一致していない。ここを是正すると、誰でも、どんな状況においても、幸福になることができる。極端な例でいうと、殺された殉教者を外から見ると痛ましいが、その内は幸福なのである。
(A) 内省的に、自分というものを見つめよ
===== 引用 はじめ P.98
… ともあれ、心正しき平均的な現代人の生活に何よりも欠けているのは、内省的な気分であるのは間違いない。
われわれは自分のことを振り返って考えることをしない。つまり、自分の幸福とか、自分の進もうとする道、人生が与えてくれるもの、いかに理性的に決断して行動しているか(あるいは、していないか)、自分の生活信条と実際の行動など本当に大切な問題について、自分というものを見つめることをしていない。
===== 引用 おわり
(B) 理性を豊かにし、自らの生活信条にかなった生き方をせよ
===== 引用 はじめ P.98 ~ P.99
それでも人は幸福を探し求めている。あなたもその1人だと思うが、果たしてそれを発見できたであろうか?
おそらく、まだ発見していないだろう。あるいは「幸福など手に入らないものだ」と、あきらめきっているかもしれない。
だが、実際に幸福を手に入れた人もいる。そういう人たちは、幸福とは肉体的、精神的快楽を得ることにあるのではなく、理性を豊かにし、自らの生活信条にかなった生き方をすることにあると悟ることによって、幸福を自分のものにしているのだ。
===== 引用 おわり
アーノルベネット、渡辺昇一(訳・解説)、『自分の時間』、三笠書房
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