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2020年10月30日金曜日

(2137)  『伊勢物語』(1-1) / 100分de名著

 

 

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(K1278)  シルバー会員 活路は女性 <高齢期の仕事>

http://kagayakiken.blogspot.com/2020/10/k1278.html

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章段は、和歌と地の文で構成。地の文は和歌集の「詞書」のように機能して、どのような状況でその歌が詠まれたかを説明する。この地の文が不思議なニュアンスを持ち、ある種の小説的な物語喚起力を読者に与える

☆☆

 

第1回  2日放送/ 4日再放送

  タイトル: 「みやび」を体現する男

 

 

【テキストの項目】

(1)  『伊勢物語』の成立背景

(2)   才学はないが和歌の名人

(3)   むかし、男、初冠して

(4)   都落ちの哀しみを詠う

 

(5)   思いを自然に託して

(6)   込められた二重の願い

(7)   なぜ良き歌人になれたのか

(8)   解らないことに耐える力が「みやび」

 

【展開】

(1)  『伊勢物語』の成立背景

 『伊勢物語』はどのようにして生まれたのでしようか。 … 元々あったものがさまざまに手を加えられ、藤原定家によって現在の125章段にまとめられたことは確かです。しかし、そこに至るまでには無数の人々が関わっていると考えられています。

 『伊勢物語』という書名は、物語に出てくる伊勢の斎宮の話から採られたという説か有力ですが、はっきりしたことは解っていません。

 ちなみに、『伊勢物語』という書名は『源氏物語』の「絵合」の巻にも登場します。

 平安文学の初期に位置づけられる『伊勢物語』ですが、同時期の代表作としては『竹取物語』が挙げられます。『竹取物語』と『伊勢物語』を対照すると、とても面白い。前者は女性が主人公のおとぎ話で、お金や権力があれば何でもできると思っていた人たちをすべて振り払い、かぐや姫が月に帰っていくという物語。後者は実在の男でありながら権力から離れることで別の在り方を模索した人の物語です。

 

(2)   才学はないが和歌の名人

 天皇になる道は断たれていたものの、血筋は高貴な「貴種」として貴族社会にいたのです。彼が力を注いだのは、政治の世界での出世ではなく、和歌でした。 … いちばんよく知られているのは、百人一首に入っている、

ちはやぶる神代も聞かず龍田河

  からくれなゐに水くくるとは

かもしれませんね。

 業平の人物像は、 … 容姿端麗で顔が美しく、細かいことにはこだわらずのびのびしていて、学はほぼなかったけれど、和歌の名人であった、とあります。ここでいう「才学」とは漢詩文の才能のことです。当時、男の教養といえば漢詩と漢文でした。ところが業平はそれか得意ではなかったという。

 不遇をかこった業平には、思うに任せぬこともたくさんあったわけですが、それがそのまま歌をつくる力となり、モチベーションにもなった。命のエネルギーを思いきり歌づくりに注いだため、業平の歌は人々の心を打つのです。その結果として、女性にモテた。そういう順番だったと私は思います。

 

(3)   むかし、男、初冠して

 初段です。元服したばかりの十五歳の業平が、奈良の春圧野に鷹狩りにやってきた折、里に住む姉妹を垣間見て歌を贈る場面です。

むかし、男、初冠して、奈良の京、春日の里に、しるよしして、狩にいにけり。その里に、いとなまめいたる女はらから住みけり。 … その男、信夫摺の狩衣をなむ、着たりける。

  春日野の若紫のすりごろも

    しのぶの乱れかぎり知られず

となむ、おいづきて言ひやりける。ついでおもしろきことともや思ひけむ、

  みちのくのしのぶもぢずり誰ゆゑに

    乱れそめにしわれならなくに

《春日野には紫草のみならず、あなた方の匂い立つ若さが充ち充ちて、私の心もお二人の美しさあでやかさに染まってしまいました。この布の忍摺り模様のように、私の心は限りなく乱れ、野の草々ならばやがて静まるものを、この布の模様は消えてはくれないのです。ひたすら忍んでおります。》

 

(4)   都落ちの哀しみを詠う

 それを見て、ある人のいはく、「かきつばたといふ五文字を句の上にすゑて、旅の心をよめ」と言ひければ、よめる、

  からころも着つつなれにしつましあれば

    はるばる来ぬる旅をしぞ思ふ

とよめりければ、みな人、乾飯の上に涙おとして、ほとびにけり。

《慣れ親しんだ妻は、着慣れた唐衣のように身に添うもの、そのような妻のあることを思い出せば、はるばるやって来た旅が、いっそうしみじみと感じられて参ります。》

 

渡守に問ひければ、「これなむ都鳥」と言ふを聞きて、

  名にし負はばいざこと問はむ都島

    わが思ふ人はありやなしやと

とよめりければ、舟こぞりて泣きにけり。

《その名前に都という名を背負っているのなら、都のことは良く知っているはず。ならば問いたい。私が思いを寄せている人は、健やかであろうか、それともそうではないのか。

ああ、案じられることよ。》

 

 以下は、後に書きます。

(5)   思いを自然に託して

(6)   込められた二重の願い

(7)   なぜ良き歌人になれたのか

(8)   解らないことに耐える力が「みやび」

 

<出典>

髙木のぶ子(2020/11)、『伊勢物語』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



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