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このブログは、左側の投稿欄と右側の情報欄とから成り立っています。

2020年10月31日土曜日

(2139)  『伊勢物語』(1-2) / 100分de名著

 

◆ 最新投稿情報

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(K1280) 「ひとりの時間」は、孤独の時間ではなく至福の時間(2) <仕上げ期>

http://kagayakiken.blogspot.com/2020/10/k12802.html

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☆☆

がむしゃらにならないということは、言い換えれば、自分が解明できないことや叶わぬことに耐えることなのです。それこそがみやびではないか。未知のものを謙虚に畏れ、突き詰めていかない態度やふるまいです

☆☆

 

 

【テキストの項目】

(1)  『伊勢物語』の成立背景

(2)   才学はないが和歌の名人

(3)   むかし、男、初冠して

(4)   都落ちの哀しみを詠う

 

(5)   思いを自然に託して

(6)   込められた二重の願い

(7)   なぜ良き歌人になれたのか

(8)   解らないことに耐える力が「みやび」

 

【展開】

(1)  『伊勢物語』の成立背景

(2)   才学はないが和歌の名人

(3)   むかし、男、初冠して

(4)   都落ちの哀しみを詠う

 以上は、既に書きました。

 

(5)   思いを自然に託して

 業平には自分の感情と自然の情景とを結び付けて、鮮やかに、あるいは面白く詠った歌が数多くあります。例えば第ニ段の、

    起きもせず寝もせで夜を明かしては

      春のものとてながめ暮らしつ

が典型的です。この歌は、「西の京の女」という年上の女性を訪ねたあと、業平がその人に贈ったものです。

《昨夜わたしはあなたの傍で、起きているのか寝ているのか判らぬまま朝を迎えてしまいました。そぼ降る雨のせいでしようか、それともあなたが春の雨のようにわたしの中に入ってこられて、起きることも寝ることも叶わぬ甘い酔いで縛ってしまわれたのか。いまあなたから離れてもあの雨は、こうして空から、いえわたしの身内でも、降り続いております。春の雨とはこのように長く、いつまでも終わりのないものとは知っていましたが、切ないものですね。》

 

(6)   込められた二重の願い

    行く螢雲の上までいぬべくは

      秋風吹くと雁に告げこせ

《上っていく螢よ、雲の上まで飛び行くのですか。もし雲の上にまで行くことができるならば、この世ではもう秋の風が吹いています、どうぞ戻って来られますようにと、雁に伝えてください。》

 空を飛ぶ島は、一般的に死者の魂とつながると思われていました。ここで歌われている雁も、生きている者の思いを死者に伝えることかできる鳥でした。 … 涼風が吹き、螢が目の前で急浮上します。死者の魂が天へと昇っていくように見えたことでしよう。その螢に、もし雲の上まで行くのならこの思いを雁に伝えて欲しい、雁はそれを死者の魂に伝えて欲しい、と二重の願いを歌にしたわけです。

 

(7)   なぜ良き歌人になれたのか

 世の中では、在原業平といえば「稀代のプレイボーイ」というイメージが定着しているように思います。しかし『伊勢物語』を通して見えてくるのは、「恋の人」、である前に「歌の人」である業平です。

 業平はなぜ良き歌人になれたのでしょうか。大きく三つの理由があったと私は思います。

第一に、彼が多情多感な男だったということです。

第二に、漢詩が苦手だったことです。

第三に、彼がみやびときは何かを知っていたことです。

 

   第一に、彼が多情多感な男だったということです。

 多情多感とは、感性の触手をたくさん持っているということです。さまざまな情動をキャッチするアンテナをいっぱい出している、と言っていいかもしれません。そのアンテナで業平がつかんだのは、女であり、自然であり、言葉であり、美しさであり、悲しさです。

 

   第二に、漢詩が苦手だったことです。

 漢詩が苦手だった業平は、当時の男たちから見下されていました。しかし、今日でも広く親しまれているのは業平が得意とした和歌の方です。なぜ業平の歌が、同時代につくられた漢詩より、今なおわれわれの心を打つのでしようか。これは深いテーマです。深くて本質的な問題です。

 ひとつ理由を挙げるとすれば、和歌が日本人の身体が持つリズム感に裏付けられた文芸だからだと思います。 … 仮名文字の一つ一つには意味がなく、和歌は声として流れ出る情感の言葉です。歌う、という日本人の身体感覚に適っているのです。

  漢字 = 男の理 = 頭脳

  仮名 = 女の情 = 身体

 大雑把にくくれば、このようになると思います。そう考えると業平は、男でありながら女の文芸、いやそこから始まる日本人の日本人による文芸の礎になったと言えます。また、和歌に優れた業平が女のことが良く解る男であり、結果として女にモテたことも、先の図式を踏まえると納得が行きます。

 

(8)   解らないことに耐える力が「みやび」

   第三に、彼がみやびときは何かを知っていたことです。

 みやびとは何か。これは単に、華やかであるとか、高貴な人たちが身に付けていたふるまいを指す言葉ではありません。みやびの本質とは、解らないことは解らないものとして残しておく、という余裕ある態度のことだと私は思います。

 業平の場合、人間が解り得ないことと並び、叶わぬことに対する態度も同じでした。何が何でも自分の思いを叶えようとするのではなく、叶わぬことは叶わぬこととして置いておき、そこから生まれる思いをエネルギーにして歌を詠むのです。あなたへの恋が叶わない。だから哀しい。都に残してきた妻は元気でいるかどうか解らない。だから哀しい。まさにその哀しみを歌にしたのか業平です。叶わぬことの哀しみを詠った歌は、切実であるがゆえに人々の心を打ちました。

 人間にはいつの時代にも解らないことがある。叶わないことだってある。それを謙虚に受け止め、その事実に耐え、その中で最善のことをする。そんなふるまい方を知る。不安が不安を呼ぶ現代、業平の物語を読む意味があるとすれば、実はそれが一番大きいかもしれません。

 

<出典>

髙木のぶ子(2020/11)、『伊勢物語』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)




(2138)  相手を通じて自分を変える

 

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(K1279) 「一人の時間」は、孤独の時間ではなく至福の時間(1) <仕上げ期>

http://kagayakiken.blogspot.com/2020/10/k12791.html

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☆☆

大人はとかく「嫌いなんて言っちゃダメでしょ」と言いがちですが、お月さまは違いました。うさぎがたぬきへの関わりを変えることでたぬきがそれに気づき、たぬき自身も変わっていくことに信頼を寄せていたのです

☆☆

 

 「ぼくは となりの たぬきが きらいだ。だいっきらい!」

 平成8年に鈴木出版から刊行された「となりのたぬき」(せなけいこ作・絵)は、大人がドキッとしてしまうくらい、感情をストレートに表すうさぎの言葉で始まります。

 「へん、いじわる うさぎ!」「ふん、いばりや たぬき!」と、うさぎとたぬきはいつもケンカばかり。「あの たぬき、ぽかぽかになぐって…ぺちゃんこにして…とおくへぶっとばしたい!」

 

 うさぎの言葉を聞いたお月さまは、1カ月の間、たぬきに親切にしてやることができれば、自分がたぬきをこらしめてやるとうさぎと約束をします。 … この先どうなるか気になる方は、下の<出典>からご覧ください。

 

 大人はとかく「嫌いなんて言っちゃダメでしょ。仲良くしなさい」と言いがちですが、お月さまは違いました。うさぎがたぬきへの関わりを変えることでたぬきがそれに気づき、たぬき自身も変わっていくことに信頼を寄せていたのです。うさぎとたぬきは自分の感情を素直に表し、気持ちをぶつけ合う関係だったからこそ、互いの変化を感じ取り、受けいれ、相手を通して自分を変えていきました。

 

 

<出典>

「となりのたぬき」 相手を通じて自分を変える

【絵本を味わう 子供とともに】 産経新聞(2020/10/31)

https://www.sankei.com/life/news/201031/lif2010310006-n1.html



2020年10月30日金曜日

(2137)  『伊勢物語』(1-1) / 100分de名著

 

 

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(K1278)  シルバー会員 活路は女性 <高齢期の仕事>

http://kagayakiken.blogspot.com/2020/10/k1278.html

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☆☆

章段は、和歌と地の文で構成。地の文は和歌集の「詞書」のように機能して、どのような状況でその歌が詠まれたかを説明する。この地の文が不思議なニュアンスを持ち、ある種の小説的な物語喚起力を読者に与える

☆☆

 

第1回  2日放送/ 4日再放送

  タイトル: 「みやび」を体現する男

 

 

【テキストの項目】

(1)  『伊勢物語』の成立背景

(2)   才学はないが和歌の名人

(3)   むかし、男、初冠して

(4)   都落ちの哀しみを詠う

 

(5)   思いを自然に託して

(6)   込められた二重の願い

(7)   なぜ良き歌人になれたのか

(8)   解らないことに耐える力が「みやび」

 

【展開】

(1)  『伊勢物語』の成立背景

 『伊勢物語』はどのようにして生まれたのでしようか。 … 元々あったものがさまざまに手を加えられ、藤原定家によって現在の125章段にまとめられたことは確かです。しかし、そこに至るまでには無数の人々が関わっていると考えられています。

 『伊勢物語』という書名は、物語に出てくる伊勢の斎宮の話から採られたという説か有力ですが、はっきりしたことは解っていません。

 ちなみに、『伊勢物語』という書名は『源氏物語』の「絵合」の巻にも登場します。

 平安文学の初期に位置づけられる『伊勢物語』ですが、同時期の代表作としては『竹取物語』が挙げられます。『竹取物語』と『伊勢物語』を対照すると、とても面白い。前者は女性が主人公のおとぎ話で、お金や権力があれば何でもできると思っていた人たちをすべて振り払い、かぐや姫が月に帰っていくという物語。後者は実在の男でありながら権力から離れることで別の在り方を模索した人の物語です。

 

(2)   才学はないが和歌の名人

 天皇になる道は断たれていたものの、血筋は高貴な「貴種」として貴族社会にいたのです。彼が力を注いだのは、政治の世界での出世ではなく、和歌でした。 … いちばんよく知られているのは、百人一首に入っている、

ちはやぶる神代も聞かず龍田河

  からくれなゐに水くくるとは

かもしれませんね。

 業平の人物像は、 … 容姿端麗で顔が美しく、細かいことにはこだわらずのびのびしていて、学はほぼなかったけれど、和歌の名人であった、とあります。ここでいう「才学」とは漢詩文の才能のことです。当時、男の教養といえば漢詩と漢文でした。ところが業平はそれか得意ではなかったという。

 不遇をかこった業平には、思うに任せぬこともたくさんあったわけですが、それがそのまま歌をつくる力となり、モチベーションにもなった。命のエネルギーを思いきり歌づくりに注いだため、業平の歌は人々の心を打つのです。その結果として、女性にモテた。そういう順番だったと私は思います。

 

(3)   むかし、男、初冠して

 初段です。元服したばかりの十五歳の業平が、奈良の春圧野に鷹狩りにやってきた折、里に住む姉妹を垣間見て歌を贈る場面です。

むかし、男、初冠して、奈良の京、春日の里に、しるよしして、狩にいにけり。その里に、いとなまめいたる女はらから住みけり。 … その男、信夫摺の狩衣をなむ、着たりける。

  春日野の若紫のすりごろも

    しのぶの乱れかぎり知られず

となむ、おいづきて言ひやりける。ついでおもしろきことともや思ひけむ、

  みちのくのしのぶもぢずり誰ゆゑに

    乱れそめにしわれならなくに

《春日野には紫草のみならず、あなた方の匂い立つ若さが充ち充ちて、私の心もお二人の美しさあでやかさに染まってしまいました。この布の忍摺り模様のように、私の心は限りなく乱れ、野の草々ならばやがて静まるものを、この布の模様は消えてはくれないのです。ひたすら忍んでおります。》

 

(4)   都落ちの哀しみを詠う

 それを見て、ある人のいはく、「かきつばたといふ五文字を句の上にすゑて、旅の心をよめ」と言ひければ、よめる、

  からころも着つつなれにしつましあれば

    はるばる来ぬる旅をしぞ思ふ

とよめりければ、みな人、乾飯の上に涙おとして、ほとびにけり。

《慣れ親しんだ妻は、着慣れた唐衣のように身に添うもの、そのような妻のあることを思い出せば、はるばるやって来た旅が、いっそうしみじみと感じられて参ります。》

 

渡守に問ひければ、「これなむ都鳥」と言ふを聞きて、

  名にし負はばいざこと問はむ都島

    わが思ふ人はありやなしやと

とよめりければ、舟こぞりて泣きにけり。

《その名前に都という名を背負っているのなら、都のことは良く知っているはず。ならば問いたい。私が思いを寄せている人は、健やかであろうか、それともそうではないのか。

ああ、案じられることよ。》

 

 以下は、後に書きます。

(5)   思いを自然に託して

(6)   込められた二重の願い

(7)   なぜ良き歌人になれたのか

(8)   解らないことに耐える力が「みやび」

 

<出典>

髙木のぶ子(2020/11)、『伊勢物語』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



2020年10月28日水曜日

(2136)  多角的に「心」を考える(山崎由美子・理化学研究所)

 

◆ 最新投稿情報

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(K1277) 老健の感染クラスター対応 求められたのは「介護の力」 <介護>

http://kagayakiken.blogspot.com/2020/10/k1277.html

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☆☆

これまで、概念や推論のような複雑な思考能力についてさまざまな実験を行ってきました。概念の基本的な特徴は多くの動物に似たところがありましたが、推論にはヒトとヒト以外の動物との間に大きな違いがありました

☆☆

 

===== 引用はじめ

 例えば次のような実験をします。どんな動物もできるだけ公平に評価するため、絵を使って「『AならばB』です」と教えます。これを十分学習させた後、ある時に「では『BならばA』ですか?」と問います。ヒト以外の動物は「『BならばA』とは限らない」と“論理的”な答えを出します。一方、ヒトはほとんど例外なく「『BならばA』です」と導き出します。これは論理学で「逆」と呼ばれ、「偽」とされる推論です。

===== 引用おわり

 

 

 ヒトは確かにそうだと思います。何故か。

 私(=藤波)は、簡略化が起こっていると思います。『AならばB』には方向性がありますが、『AとBは関係がある』と簡略化してしまうからでしょう。

 ヒト以外の動物は賢くないから間違えないが、ヒトは中途半端に賢いから間違える。

 

 考える以上しっかり「簡略化」せずに考えるか、考えることをやめて感覚を働かせるか。

 

 根拠はありませんが、

   考える以上しっかり「簡略化」せずに考える人は、5%

   考えることをやめて感覚を働かせる人は、10%

   どちらでもなく間違える人が、85%

 こんな感じでしょうか。

 

 「私は論理的に考えている」といった不遜な発言をする人が、一番怪しい。中途半端でない「論理的」は、とても得難い。

 

 それにしても、… どのような実験をしたのか、知りたい!

 

<出典>

【理研が語る/科学の中身】多角的に「心」を考える

https://www.sankei.com/life/news/201024/lif2010240002-n1.html



産経新聞(2020/10/24)

(2135) 『伊勢物語』(0) / 100分de名著

 

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(K1276)  高齢者、50年で2000万人増 出生数は4割減、厚生労働白書 <少子高齢化>

http://kagayakiken.blogspot.com/2020/10/k1276-5020004.html

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☆☆

業平をひと言で言えば、「女に圧倒された男」。「色好みの男」という像は、のちの日本人が業平に付与したキャラクターだったと思う。『伊勢物語』を読むことで見えてくるやわらかな男・業平の魅力を味わおう

☆☆

 

100de名著」 『伊勢物語』が、112()から始まります。Eテレ。

放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50

再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55

 及び        午後 00:00~00:25

講師は、髙木のぶ子(作家)

 

 

<全4回のシリーズ>  いずれも11

【はじめに】  業平の歌に導かれて

 

第1回  2日放送/ 4日再放送

  タイトル: 「みやび」を体現する男

 

第2回  9日放送/ 11日再放送

  タイトル: 愛の教科書、恋の指南書

 

第3回  16日放送/ 18日再放送

  タイトル: 男の友情と生き方

 

第4回  23日放送/ 25日再放送

  タイトル: 歌は人生そのもの

 

 

【はじめに】  業平の歌に導かれて

 

 実在の歌人、在原業平(825880)と思われる人物が主人公の『伊勢物語』ですが、作者は解っていません。 … 十三世紀、百人一首の撰者としても知られる歌人の藤原定家が、現在にまで残る125章段のかたちにまとめました。

 

 在原業平といえば「稀代のプレイボーイ」ですから、『伊勢物語』には、業平と比定される「男」のさまざまな女性との恋模様が描かれています。 … 「色好みの系譜」の原点がかたちづくられた … 色好みの男というイメージがはっきりと打ち出されたのは、この『伊勢物語』においてです。そして、日本人はそれを好んだ。 … 『源氏物語』の光源氏も業平がモデルになったと言われますし、江戸時代には … 諸国を旅して3,000人以上もの女性と関係を持った世之介の一代記『好色一代男』(井原西鶴)にも影響をおよぼしていると考えられます。

 

 しかし、『伊勢物語』をよく読んでみると、業平は決して次々に女をものにしたプレイボーイではないのです。どちらかというと受け身で、巻き込まれ型。情が厚く、先入観を持たずに人を見るため、いろいろな女性と通じ合い、思いを遂げてしまうのです。

 私(=髙木のぶ子)なりに業平をひと言で言えば、「女に圧倒された男」です。「色好みの男」という像は、のちの日本人が業平に付与したキャラクターだったと思います。

 

<出典>

髙木のぶ子(2020/11)、『伊勢物語』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



2020年10月26日月曜日

(2134) 【来月予告】『伊勢物語』。【投稿リスト】谷崎潤一郎スペシャル / 100分de名著

 

◆ 最新投稿情報

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(K1275)  加齢で弱腰に ふがいない <加齢>

http://kagayakiken.blogspot.com/2020/10/k1275.html

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【来月予告】 『伊勢物語』 / 100de名著

 

202011月号 (100de名著)    テキストは、10月25日発売(NHK出版)

『伊勢物語』。講師:髙木のぶ子(作家)

 

 「みやび」の全てがここにある

 

 在原業平と思しき「ある男」の生涯を描き切った、全125段からなる本邦最古の歌物語。よく歌い、よく生き、よく愛した男の姿からは、平安の世の「みやび」があざやかに浮かび上がり、場面場面で歌われる名歌は、日本的な美のあり方を現代に伝える。『源氏物語』など後世の文学にも多大な影響を与えた作品世界を、恋愛小説の名手がやさしく案内する。

 

 

【投稿リスト】 谷崎潤一郎スペシャル

公式解説は、

https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/102_tanizaki/index.html#box00

 

私が書いたのは、

(2107)  谷崎潤一郎スペシャル(0) / 100de名著

http://kagayaki56.blogspot.com/2020/09/2107-0100de.html

 

(2109)  谷崎潤一郎スペシャル(1-1) / 100de名著

http://kagayaki56.blogspot.com/2020/10/2109-1-1100de.html

 

(2111)  谷崎潤一郎スペシャル(1-2) / 100de名著

http://kagayaki56.blogspot.com/2020/10/2111-1-2100de.html

 

(2116)  谷崎潤一郎スペシャル(2-1) / 100de名著

http://kagayaki56.blogspot.com/2020/10/2116-2-1100de.html

 

(2118)  谷崎潤一郎スペシャル(2-2) / 100de名著

http://kagayaki56.blogspot.com/2020/10/2118-2-2100de.html

 

(2123)  谷崎潤一郎スペシャル(3-1) / 100de名著

http://kagayaki56.blogspot.com/2020/10/2123-3-1100de.html

 

(2125)  谷崎潤一郎スペシャル(3-2) / 100de名著

http://kagayaki56.blogspot.com/2020/10/2125-3-2100de.html

 

(2130)  谷崎潤一郎スペシャル(4-1) / 100de名著

http://kagayaki56.blogspot.com/2020/10/2130-4-1100de.html

 

(2132)  谷崎潤一郎スペシャル(4-2) / 100de名著

http://kagayaki56.blogspot.com/2020/10/2132-4-2100de.html

 

<出典>

島田雅彦(2020/10)、谷崎潤一郎スペシャル、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



2020年10月25日日曜日

(2133)  不登校、自信をつける / 子供たちの「心を聴く」(1)

 

◆ 最新投稿情報

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(K1274)  眠ってばかりの状態から旅立つこと(4) <臨死期>

http://kagayakiken.blogspot.com/2020/10/k1274-4.html

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☆☆

合宿をして、生活をともにする。そうした中で、たとえば食事をつくり、目玉焼きをうまく裏返せたら、「おー」と言うだけでもいいのだという。その子の気持ちが「ほわー」と温かくなったのが、「自信」だという

☆☆

 

 長年、不登校の子供たちの教育相談にあたっている「開善塾教育相談研究所」顧問の金澤純三氏の言葉を紹介したい。

 

 教師は意外に他人の言うことを聞いていないのだという。自分が聞きたいことを、子供たちに聞いて満足している教師が少なくない。

 

 真面目な先生ほど、いろいろ聞きたがり、教えたがる傾向もある。不登校の子供の家庭訪問をし、「なんで学校へ来ないの?」「理由は?」と聞きたがる。「学校に来られない理由を紙に書いて。印鑑も押して」…。これでは笑えない。逆効果だ。

 

 子供が学校へ行けなくなったのは、きっと嫌なことがあったからだ。叱られたり、責められたりして、自己評価が下がる、自信がなくなる。

 

 「自己評価が下がらないように、叱らないように、恥をかかせないようにしていけば、子供は必ず学校へ戻る。自信を持たせるということが肝心」だと金澤氏は指摘する。

 

 自信を持たせるのは難しいことではないという。開善塾では親子参加などで時々、合宿をして、生活をともにする。そうした中で、たとえば食事をつくり、目玉焼きをうまく裏返せたら、「おー」と言うだけでもいいのだという。その子の気持ちが「ほわー」と温かくなったのが、「自信」だという。

 

 添付図は、

開善塾教育相談研究所 / 合宿

https://kaizenjuku.org/camp/

そのご依頼・ご相談・お申込み等のお問い合わせ

https://kaizenjuku.org/contact/

 

 

<出典>

子供たちの「心を聴く」 沢辺隆雄

【一筆多論】産経新聞(2020/10/20)

https://www.sankei.com/column/news/201020/clm2010200004-n1.html



2020年10月24日土曜日

(2132)  谷崎潤一郎スペシャル(4-2) / 100分de名著

 

◆ 最新投稿情報

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(K1273) (暴力をふるう)私を侮辱するなんてひどい(2) / 認知症の人の不可解な行動(42) <認知症>

http://kagayakiken.blogspot.com/2020/10/k1273242.html

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☆☆

菜種油にひたした灯芯に火をともす「燭台」から、ろうそくを使った「行灯」への移行があり、「行灯」の光源を反射率の高さで明るくする白い和紙の活用があり、和ろうそくがあり、利便性を高めた「提灯」がある

☆☆

 

第4回  26日放送/ 28日再放送

  タイトル: 『陰翳礼讃』- 光と影が織りなす美

 

放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50

再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55

 及び        午後 00:00~00:25

 

 

【テキストの項目】

(1)  古典を味わうときに必要な想像力とは

(2)  日本家屋を外国人のように見ること

(3)  モダニズム後の気づき

(4)  いにしえの世界に繋がる素材と仕掛け

(5)  東洋人が万年筆をつくっていたら

 

(6)  失われつつあるものが秘める豊かさ

(7)  晩年の谷崎――超高齢化社会の問題を先取り?

(8)  老いてなお悟らない――貪欲な探求心

(9)  谷崎が気づかせてくれること

 

【展開】

(1)  古典を味わうときに必要な想像力とは

(2)  日本家屋を外国人のように見ること

(3)  モダニズム後の気づき

(4)  いにしえの世界に繋がる素材と仕掛け

(5)  東洋人が万年筆をつくっていたら

 以上は、既に書きました。

 

(6)  失われつつあるものが秘める豊かさ

 私たちが現在の芝居小屋で歌舞伎などのパフォーミングアーツを観劇する際は、横長の舞台に、書き割りが飾られ、明るく均質なライトが強烈に舞台を照らしているために、ディテールがなくフラット(平ら)に見えるものです。影が飛んでしまう。あえて伝統的なかがり火だけで上演する薪能などを見ると、その暗がりに浮かび上がる白さに目を凝らしては、動きの、感情のニュアンスを感じ取ることになります。

 陰翳が出やすいゆらぐ明かりのもとで、対象物を見つめ、美を見出していく恍惚を、谷崎は繰り返し、本書のなかで説いていくのです。

 

(7)  晩年の谷崎――超高齢化社会の問題を先取り?

 そして戦後に至ると、70歳となる昭和31(1965)に『鍵』を、そして75歳の昭和36(1961)には『瘋癲老人日記』を著し、文壇の内外で大きな話題を集めました。これらは年老いた男の性的倒錯をモチ-フとしています。

 『鍵』は、自分の妻と若い男との不倫の現場を押し入れの中から覗き見て興奮している大学教授の物語で、 … 一般の読者も含めて「うわ、変態」と思わせるだけのインパクトのある作品を書いたことは、賞讃すべきことです。「なまじ悟りなどするものか」という覚悟のほどが見えます。

 じつはこれも、確信犯的な戦略でした。主人公の学者は、欲望はあるのだけれど思うに任せないという、つらい精神状態を持て余します。欲望が肥大化したままの老人が取るべき手段は何かという、具体的な提言でもあるのです。現代にいたる超高齢化社会の老人の切実な問題を、彼は先取りしていたといえます。

 

(8)  老いてなお悟らない――貪欲な探求心

 彼は下手に「悟り」を開かなかった。これが、表現者としての欲望の強さの表れでしょう。手を変え、品を変え、妄想力を発揮して、独自の崇拝のスタイルを見出していきます。崇拝すること自体が、対象を高度に鑑賞することでもあり、対象との関係をあらたに結び続けることでもあった。三十代の『痴人の愛』から晩年の老人文学まで見てきましたが、谷崎が、それぞれの時代において文学的に果敢な実験、新しい手法の開拓をしていたことがよくわかります。この探究心には脱帽します。

 

(9)  谷崎が気づかせてくれること

 (戦後)やがて、技術開発の目的は生活向上から、遊戯的方向へ向かい、退屈を紛らわす日本の技術は新たな世界市場を築きました。

 SONYにしろ、任天堂にしろ、カラオケにしろ、戦後に世界市場を切り開いて、退屈をやり過ごすための技術が結集されたものでした。

 結果的に戦争を放棄して初めて、日本は谷崎が性懲りもなく続けてきた理想に追いついたということなのかもしれません。

 谷崎は活躍していた同時代においても、意図的にアナクロニズムを主張しましたが、流行という文脈から外れたもののほうが歴史の風雪に耐え、文化財としての価値を持ちうることがわかっていたのでしょう。「どうだ、進歩主義のほうが古びやすく、淘汰を声高にいう人から先に滅びただろう」という谷崎の声があの世から聞こえてくるようです。

 

 

<出典>

島田雅彦(2020/10)、谷崎潤一郎スペシャル、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

 


2020年10月23日金曜日

(2131)  中国の民族問題が存在することは、驚くほど軽視されている / 大坂なおみ選手の人種差別抗議マスク(5)

 

 

◆ 最新投稿情報

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(K1272)  黒木瞳さんと学ぶ介護のお仕事(11/14) <介護>

http://kagayakiken.blogspot.com/2020/10/k1272-1114.html

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だが、それよりはるかに重大な問題として、中国の民族問題が存在することは、驚くほど軽視されている。中国の「~族」や「少数民族」という表現は、極めて政治的な背景のある、究極の差別用語である

☆☆

 

===== 引用はじめ

 女子テニスの大坂なおみ選手の全米オープンの行動で、日本でもアメリカの人種差別問題が注目されている。だが、それよりはるかに重大な問題として、中国の民族問題が存在することは、驚くほど軽視されている。差別問題を超越した、極めて深刻な民族抑圧・民族弾圧問題であるにもかかわらず。

 しかも単なる人権侵害問題ではなく、9月29日の産経新聞(1、2面)で報じられているように、基本的に「少数民族」の「漢族」への同化政策である。チベットでは移住や職業訓練が強制され、ウイグルでは多大な強制収容所が存在する。内蒙古では、モンゴル語の教育の廃止が断行されているが、民族の基盤は言語であるから、言葉を奪うことは、民族そのものを抹殺することに他ならない。

===== 引用おわり

 

 大坂選手は、次のようにも言っています。

===== 引用はじめ

 (7種類のマスク着用の行動が)きっかけとなって、世界中の人々がグーグルで(犠牲者の)名前や何が起こっているのかを調べ、正確に(背景や理由を)知ってもらうことができれば何よりです。人種差別はアメリカだけの問題ではありません。それは世界中で起こっています。たった今この時も、毎日どこかで差別を受けている人がいるということです。

===== 引用おわり

https://news.yahoo.co.jp/byline/abekasumi/20200914-00198168/

 

 様々な問題を抱えながらも、これは、とても大切なメッセージだと思います。「人種差別はアメリカだけの問題ではありません。それは世界中で起こっています」を真摯に受け止める時、「向き合うことへの拒否反応」(2127 参照)の壁を乗り越えるという課題に直面します。

 

 実は、ここで問題にすべきは、彼女の発言が適切であるかどうかではなく、それを聞いた「私」が何をするかでしょう。

 

 大坂選手の言うように、先ずは、関心をもつこと。

 

 大坂選手の勇気ある発言と行動を、一過性のものにするのではなく、まさにこれをきっかけに、関心を広め、深めていきたい。そして、何ができるかを考えていきたい。

 

 このシリーズおわり。

 

<出典>

中国の「民族抹殺」に協力する日本メディア

産経新聞(2020/10/11

https://www.sankei.com/column/news/201011/clm2010110005-n1.html