このシリーズの前回(749)で、次のように述べた。
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「元気な高齢者が支える側」になる形態として、定年延長のみを想定するのは、疑問に思う。定年延長も一つの手段であり、働きたい人は働き続ければよいだろうが、もう一つ別の生き方を開発することが重要だと思う。
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日本の高度成長時代の、いわゆる「専業主婦」の功績を再評価することから始めたい。
===== 引用 はじめ
近代家族は、性別役割分業、子ども中心主義、母性愛イデオロギーといった特徴を持つ家族であり、稼ぎ手役割の夫と家事・育児を担う妻という、性別役割分業システムが広く浸透していった。
…
家事、育児、介護といった再生産労働(*1)が、生産労働と切り離され、「見えない」労働として無償化されてきた。
…
政府の調査(*2)によれば、1979年には「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」との考えに肯定的意見を持つ人の割合は7割を超えていた。
===== 引用 おわり
天童睦子(2011)、「ジェンダー・労働・再生産」、『子ども・若者の文化と教育』、放送大学教材、P.201, P.202, P.204
(*1) 再生産労働(さいせいさんろうどう)とは、直接生産活動に結びつかない、従って直接に報酬を受け取ることのない労働(間接的に報酬を受け取る労働)。(wikipedia)
(*2) 『男女共同参画統計データブック - 日本の女性と男性 ― 2006』(<独>国立女性教育会館編)
日本の高度成長を可能にしたのは(稼ぎ手役割の)夫のように見えるが、その夫の活動を可能にしたのは(家事・育児を担う)妻である。すなわち、生産労働と再生産労働の両方が必要である。
しかし、少子化・人口が減った国では、国を維持するためには少ない若者(男も女も)を生産労働に集中せねばならず、結果として再生産労働の方が手薄になり、誰かがカバーしなければならない。
再度、書く。
「元気な高齢者が支える側」になる形態として、定年延長のみを想定するのは、疑問に思う。定年延長も一つの手段であり、働きたい人は働き続ければよいだろうが、もう一つ別の生き方を開発することが重要だと思う。
ここで、「定年延長」は生産労働であり、「もう一つ別の生き方」としては再生産労働、具体的には次の2項目を想定している。
(a)
家庭内における家事、育児、介護にかかわる再生産労働
生産年齢人口の女性が生産労働によりかかわる必要があり、
その分、家庭内再生産労働力が弱体化する。
(b)
家庭外にあり、(a)を支える再生産労働
比較的新しい分野であり、個人または組織による
組織としては、地域ベースのものと機能ベースのものとがある
高齢者としての「社会の支え方」として、主として(b)を担うことを期待する
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