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2021年4月9日金曜日

(2297)  渋沢栄一『論語と算盤』(2-1) / 100分de名著

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(K1438)  (3)「死生懇話会」の内容 / 第1回「死生懇話会」(滋賀県) <死生>

http://kagayakiken.blogspot.com/2021/04/k1438-31.html

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「論語と算盤」の、「論語」は道徳や公益を、「算盤」は経済や実業を象徴しています。道徳を育み、信用を得ることが重要。第2回は、渋沢が実業の発展に欠かせないと考えていた「信用」を切り口に読み解いていく

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第2回  12日放送/ 14日再放送

  タイトル: 「信用」で経済を回せ

 

 

【テキストの項目】

(1)  「日本人は約束を守らない」

(2)   渋沢が目指したフランス式経済政策

(3)   急激な資本主義化の弊害

(4)   封建制度の影響

(5)   信用は「論語」と「算盤」の共通点

 

(6)   良き行動のルールを習慣化する

(7)  「智、情、意」でつくる常識

(8)   現実から学べ

(9)  「誰が信用できるか」という難問

(10)知識偏重教育の問題点

 

【展開】

(1)  「日本人は約束を守らない」

 イギリスを訪問するのですが、ここで渋沢にとつて大変ショックな出来事が起きます。イギリスの商業会議所の会員に、「日本の商売人は約束を守らない。あなたの力で改善してもらえないか」と直接苦情を言われたのです。「そもそも日本人は信用というものを重んじていない。これを直してくれないと、今までの取引をさらに発展させるということは難しいように思う。」

 日本人の商業道徳に問題があることは、渋沢ももちろん耳にしていました。しかし、面と向かって苦情を言われたことで、彼は大きなショックを受けます。日本の実業界は、渋沢が手塩にかけて育ててきた、子供のようなもの。その子供を面と向かって「嘘つき」と言われてしまったのですから、当然でしょう。

 

(2)   渋沢が目指したフランス式経済政策

 そもそも、渋沢が日本で定着させようとした経済システムは、信用で経済を回していく仕組

みでした。日本の経済を担う商業人たちに信用がなければ、そのシステム自体が揺らいでしまうことは明らかなのです。

 渋沢が構想していた「信用で経済を回す」システムとは、フランスのナポレオン三世の経済政策をベースにしています。渋沢は、徳川昭武の随行員としてヨーロッパを視察した際、その経済政策の威力を現地で体感しました。ナポレオン三世時代の経済政策には、三つの柱があります。簡単に説明すると、①カネを回すために金融を整備する、②ヒトとモノの動きを促すためにインフラを整備する、③カネ、ヒト、モノを回せる人材を育てる、の三つです。

 

(3)   急激な資本主義化の弊害

 明治時代に起きた商業道徳の劣化には、維新後の急激な近代化、資本主義化の弊害という側面がありました。どんな国にもその国の「伝統的社会」が存在します。伝統的社会では、宗教や血縁関係を中心とした、道徳や互助を重視したコミュニティが一般に広く見られました。ところがこうした伝統的社会が、急激な近代化や資本主義化の波に呑み込まれると、おカネの影響力が一気に強まり、拝金主義が蔓延します。

 結局、お得意さまと末永く商売をしたいと思えば、商人たちも道徳を重視して、信用をどう勝ち取るかを考えざるを得なくなります。 一方で、その場限りのぼったくり商売が成り立つ状況では、多少のズルをしても儲けを優先するのが当たり前になったりします。

 

(4)   封建制度の影響

 元々、封建社会によって商人たちの道徳が失われつつあったところに、明治維新と文明開化によって、利益追求の欲望をあおるような文物や学問が持ち込まれた。それが商業道徳の低下に追い打ちを掛けたというのが、渋沢の見立てでした。

 利益を増大させ、産業を興すのに凱面に効果のある科学的知識、つまり利益追求の学問はもっとも広く歓迎され、もつとも大きな勢力となっていった。豊かさと地位とは「人類の性欲」とでもいうべきものだが、初めから道徳や社会正義の考え方がない者に向かって、利益追求の学問を教えてしまえば、薪に油を注いでその性欲を煽るようなもの。結果は初めからわかっていたのだ。

 渋沢は「論語と算盤」を掲げ、信用と商業道徳の重要性を強く訴えていくことになります。

 

(5)   信用は「論語」と「算盤」の共通点

 政治に関する『論語』の問答: 子貢、政を問う。子曰く、「食を足らし、兵を足らし、民これを信にす」。… 曰く、「兵を去らん」。子貢曰く、「必ず己むを得ずして去らば、この二者にいて何をか先にせん」。曰く、「食を去らん。古より皆死あり。民、信なくんば立たず」

 孔子は、政治家や官僚といった、人の上に立つ人間が、国民や配下の者から信頼されていなければ、国や組織をうまく運営することはできないと考えていました。つまり、信頼や信用は、『論語』の思想の中核にあるものだったのです。そして、渋沢が経済を回す中核にあると考えていたのも、信用でした。「論語」と「算盤」は、中核に信用を持つという点で共通していたのです。だからこそ、『論語』は、渋沢が掲げる商業道徳として適していた面を持っていました。

 

 以下は、後日、書きます。

(6)   良き行動のルールを習慣化する

(7)  「智、情、意」でつくる常識

(8)   現実から学べ

(9)  「誰が信用できるか」という難問

(10)知識偏重教育の問題点

 

<出典>

守屋淳(2021/4)、渋沢栄一『論語と算盤』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



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