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(K1410) 日本人はどのような理由で死んでいるのか <少子高齢化>
http://kagayakiken.blogspot.com/2021/03/k1410.html
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先々のことを考え、そこから逆算し、今なすべきことを設計するような生き方は、現代社会では「ビジョンをもって生きている」と評価されますが、むしろ「今」の意味を見失うことになっていくのではないでしょうか
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第3回 15日放送/ 17日再放送
タイトル: セネカ『生の短さについて』--「時」とのつながり
【テキストの項目】
(1) 明日の「不確かさ」
(2) 「時」と「時間」の違い
(3) 自分の生を分け与える人びと
(4) 「不精な多忙」がもたらすもの
(5) 「君」とは誰のことか
(6) 長く生きるということ
(7) 「過去」とつながるために
(8) 日常に生きる哲学
(9) セネカに学ぶ生き方
【展開】
昨日まで傍で笑っていた人と言葉を交わすことも、その手にふれることもできない。懐かしい家も家路も、昨日までとはまったく違う姿をしている。災害や災禍は、明日という日が、必ずしも今日の延長上にやってくるものではないという現実を突きつけます。人は今を深く生きるほかありません。そのために私たちは「時」とのつながりを取り戻さなくてはなりません。その道程を記しているのがセネカの『生の短さについて』です。
(1) 明日の「不確かさ」
東日本大震災のような災害が私たちに突きつけるのは、明日という日の不確かさです。今日という日の延長に、必ずしも私たちが思い描く明日が来るとは限りません。
ある哲学者は、私たちの日常の過ごし方は「今という時を奪い去る」ことだと強く戒めます。
先延ばしは、先々のことを約束することで、次の日が来るごとに、その一日を奪い去り、今という時を奪い去る。生きることにとっての最大の障害は、明日という時に依存し、今日という時を無にする期待である。君は運命の手中にあるものをあれこれ計画し、自分の手中にあるものを喪失している。君はどこを見つめているのか。どこを目指そうというのであろう。来るべき未来のものは不確実さの中にある。ただちに生きよ。
(2) 「時」と「時間」の違い
ここでは「時間」と「時」を使い分けてみたいと思います。
一年、一日、一分、一秒と、私たちの生活を刻む、時計で測ることができるのが「時間」です。時間は誰にとっても平等に分け与えられ、同じように進みます。しかし、大切な人と一日を過ごしたあとに私たちが感じるのは、時間の「長さ」ではなく、「時」の「深さ」とでも形容すべきものではないでしょうか。
時計で測る過ぎ行く「時間」とは異なる質感をもった「時」の存在を私たちは識っています。それは量的な「時間」に対し、質的な「時」という表現もできます。ギリシア神話では、「時間」を「クロノス」、「時」を「カイロス」と呼びまた。
(3) 自分の生を分け与える人びと
自分の金を他人に分けてやりたいと望む人間など、どこを探してもいない。ところが、自分の生となると、誰も彼もが、何と多くの人に分け与えてやることであろう。財産を維持することでは吝薔家でありながら、事、時間の消費となると、貪欲が立派なこととされる唯一の事柄であるにもかかわらず、途端にこれ以上はない浪費家に豹変してしまうのである。
時間という何よりも貴重なものを弄んでいるのだ。彼らがそうした考え違いをするのも、時間というものが無形のものであり、日に見えないものであり、そのために、最も安価なもの、いや、それどころかほとんど無価値なものとさえみなされているからにほかならない。
「時間」を節約するだけでは十分ではない。その奥にある「時」を愛しまねばなりません。
(4) 「不精な多忙」がもたらすもの
私たちが人生を蕩尽してしまう理由は、ほかにもあります。セネカが指摘するのは「閑暇」、つまり暇を悪しきものと考える態度です。
いつしか私たちは、暇にしているのは良くないことだという価値観を作ってきました。暇を持て余すくらいなら、なにか仕事や勉強をしなければいけない。そう考えてはいないでしょうか。なかには暇とも呼べない、すきまの時間さえ、用事で埋め尽くそうとする人がいます。そうした生のあり方をセネカは単なる多忙ではなく、「不精な多忙」であると断じています。
セネカが「不精な多忙」と指摘したのは、自己に目を向けることを疎かにし、その事実から逃れるための忙しさにほかならないのです。
以下は、後に書きます。
(5) 「君」とは誰のことか
(6) 長く生きるということ
(7) 「過去」とつながるために
(8) 日常に生きる哲学
(9) セネカに学ぶ生き方
<出典>
若松英輔(2021/3)、『100分de災害を考える』、100分de名著、NHKテキスト(NHK出版)
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