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2021年1月23日土曜日

(2223)  カール・マルクス『資本論』(4-2) / 100分de名著

 

◆ 最新投稿情報

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(K1364) (受診)「私の病院につきあって」という(2) / 認知症の人の不可解な行動(58) <認知症>

http://kagayakiken.blogspot.com/2021/01/k1364258.html

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資本によって「否定」され、生産手段と自然を掠奪された労働者が、将来社会では資本の独占を「否定」し、解体して、生産手段と地球を「コモンとして」取り戻す。「コモンとして」とは、共有財産として、ということ

☆☆

 

第4回  25日放送/ 27日再放送

  タイトル: <コモン>の再生 - 晩期マルクスのエコロジーとコミュニズム

 

放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50

再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55

 及び        午後 00:00~00:25

 

【テキストの項目】

(1)   資本の略奪欲は自然にも及ぶ

(2)   修復不可能な亀裂

(3)  「複雑さ」の破壊

(4)  『資本論』に編まれなかった晩年の思想

(5)   エコロジーへの傾斜

(6)   原古的な共同体に見た理想

 

(7)   富をシェアする「コミュニズム」

(8)  「脱成長」という第三の道

(9)  「コモン」=商品化への抵抗

(10) 各地で動き始めた「アソシエーション」

(11) 今こそマルクスに学ぶ

 

【展開】

(1)   資本の略奪欲は自然にも及ぶ

(2)   修復不可能な亀裂

(3)  「複雑さ」の破壊

(4)  『資本論』に編まれなかった晩年の思想

(5)   エコロジーへの傾斜

(6)   原古的な共同体に見た理想

 以上は、既に書きました。

 

(7)   富をシェアする「コミュニズム」

 マルクスが思い描いていた将来社会は、コモンの再生に他なりません。いわば、コモン(common)に基づいた社会、つまり、コミュニズム(communism)です。わかりやすくいえば、社会の「富」が「商品」として現れないように、みんなでシェアして、自治管理していく、平等で持続可能な定常型経済社会を晩年のマルクスは構想していたのです。どのように富をコモンとしてシェアするかというと、「人々は各々の能力に応じて(人々に)与え、必要に応じて(人々から)受け取ることができる」。

 コミュニズムは贈与の世界といってもいいでしょう。対価を求めない「贈与」、つまり、分かち合いや助け合いの相互扶助によって、富の持つ豊かさをシェアしていこうということです。

 

(8)  「脱成長」という第三の道

 マルクスがポスト資本主義として構想した将来社会は、コモンを基礎とした“豊かな”社会です。ここでいう豊かさとは、もちろん単なる物質的な豊かさではありません。お金のあるなしに関係なく、みんなにとって大事なものを、みんなで共有できる豊かさ、すべての人が「全面的に発達した個人」として生きられる豊かさです。商品として貶められてきた社会の「富」が持つポテンシャルを、最大限に発揮し、さらに発展させることができる社会といってもいいでしょう。

 マルクスが目指した豊かさは、個人資産の額やGDPで計れるようなものではありません。GDPだけを重視する経済から脱却して、人間と自然を重視し、人々の必要を満たす規模を定常するという意味で、私はこれを「脱成長」型経済と呼んでいます。

 

(9)  「コモン」=商品化への抵抗

 第2回で、今、世界では労働日をめぐって相反する二つの動きが出ているという話をしました。同様に「コモン」をめぐっても、新自由主義がもたらした残念な現実がある一方で、資本の論理に抵抗する様々な取り組みや運動が生まれています。

 残念な現実は、世界経済が低迷し、イノベーションも停滞するなかで、資本主義が、これまで以上にその暴力性をむき出しにして、やみくもに商品化を推し進めようとしていることです。

 「府と市の二重行政を解消して効率化を図る」『大阪都構想』や、「国民の食を支える主要作物に関して、質の高い種子を開発・提供する責任を課した」『種子法』の撤廃は、商品化を進め、コモンを奪います。

 

(10) 各地で動き始めた「アソシエーション」

 2050年までの脱炭素社会を目指すアムステルダム市が、コロナ禍の最中に、オックスフオード大学の経済学者ケイト・ラワースの「ドーナツ経済」という考えを導入することを発表して、世界的な注目を集めています。

 ドーナツ経済について、簡単に説明しましょう。ドーナツの内側が社会的基盤を示しています。教育や民主主義、住宅、電気などへのアクセスが不十分になると、人々はドーナツの穴に落っこちてしまう。一方、外側は環境的上限を表しています。むやみやたらにエネルギーや資源を使用するなら、地球は破壊されてしまうでしょう。だから、できるだけ多くの人がこの両方の円の間に入るような生活を実現する必要があるというのが、ラワースの基本的発想です。

 

(11) 今こそマルクスに学ぶ

 「資本主義は、そろそろ限界かもしれない」と感じている人は、若い世代を中心に確実に増えています。これからも、これまで通り経済成長と技術革新を続けていけば、いつかはみんなが豊かになるというトリクル・ダウンの神話は、もはや説得力を失っています。

 では、どんな社会、どんな世界で暮らしたいのか。そのために、どのような選択をするのか。喫緊の課題ですが、私たちに今、そのはっきりとした答えはありません。

 マルクスが、今日の社会的、経済的課題に対する唯一の絶対的答えを持っているというわけではありませんが、少なくとも彼は、資本主義的な経済成長で問題解決を図るということとは違う可能性を、最も体系的に追求した思想家の一人です。今のような危機の時代にこそ、『資本論』を読んで、資本主義の強固なイデオロギーを打破し、今とは違う豊かな社会を思い描く想像力、構想する力を取り戻すきっかけとしていただきたいと心から願っています。

  

<出典>

斎藤幸平(2021/1)、カール・マルクス『資本論』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



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