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2021年1月15日金曜日

(2214)  カール・マルクス『資本論』(3-1) / 100分de名著

 

◆ 最新投稿情報

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(K1355)  CASという仕組み / セカンドライフは農業を(1) <高齢期の仕事>

http://kagayakiken.blogspot.com/2021/01/k1355-1.html

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予見したのは、人間が「働かなくてもいい」お気楽なユートビアではなく、失業して「働けなくなる」、「生活できない」というディストピアの未来。生産力が上がりすぎて人間は要らなくなるのではないかという恐怖心

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第3回  18日放送/ 20日再放送

  タイトル: イノベーションが「クソどうでもいい仕事」を産む!?

 

 

【テキストの項目】

(1)   ケインズの楽観と悲観的な現実

(2)  「より安く」と圧力をかける資本主義

(3)   生産力の向上が生む「相対的剰余価値」

(4)   誰のためのイノベーションか

(5)  「分業」が労働者を無力化する

(6)   人間らしさを奪うテイラー主義

 

(7)  「機械」に奉仕する労働者

(8)   生産力向上で仕事にあぶれる

(9)  「経営者目標」や「AIがもたらす自由」のウソ

(10) 自律性を取り戻せ!

(11) 給食を守る取り組み

 

【展開】

(1)   ケインズの楽観と悲観的な現実

 生産力の高さだけを見れば、ケインズが予言したように、先進国ではさほど働かなくても暮らせそうなものですが、現実はそうはなりませんでした。それどころか、「ロボットの脅威」に怯えながら、私たちはますます労働に駆り立てられています。

 人々の不安をかき立てたのが、2013年秋にオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーンが発表した論文「雇用の未来」です。700種余の職業を仔細に分析したオズボーンは、技術革新によってアメリヵの労働者の実に半数近くが、1020年後には――つまり、早ければあと5年足らずで職を失うと予言したのです。しかも、工場労働者だけでなく、会計士や金融コンサルタントのような高給取りもそのリストに記されているのです。

 

(2)  「より安く」と圧力をかける資本主義

 資本家が生産力を上げたい理由。それはズバリ、商品を「より安く」生産して、市場で勝ち残るためです。

 今より安く生産し、同じ価格で販売すれば、その分利益が増えます。低価格を売りにして、市場シェアを拡大することもできるでしょう。シェアが拡大すれば、薄利多売で、ますます利益が増えます。資本とは、価値を増やし続ける運動であり、金儲けを延々と続けるのが資本主義。

 資本家であり続けるには、他社より安く、効率よく生産して儲けなければなりません。だから、商品を安くするために、とにかく生産力を上げようと、資本家は必死になる。これが、資本主義のもとで生産力が飛躍的に上がっていく最大の理由なのです。

 

(3)   生産力の向上が生む「相対的剰余価値」

 価格競争が広がると、やがてあらゆるジャンルの商品が安く買えるようになります。それは労働者の賃金も安くします。賃金、つまり「労働力の価値」は、労働者が生活していくのに、いくら必要かで決まるとマルクスはいいます。

 ファストファッションやファストフードが普及すれば、これまで日給10,000円もらわないと暮らせなかったのが、例えば8,000円でも以前と同じ暮らしができるようになる。すると資本家は、労働者に支払う日給を8,000円に下げることができます。このように、労働力価値の低下によって生み出される剰余価値を、マルクスは「相対的剰余価値」と呼んでいます。押さえておきたいポイントはあくまでも剰余価値の増大を目指して、生産力が上がっていくということです。

 

(4)   誰のためのイノベーションか

 資本主義のもとで求められたのは、労働者を重労働や複雑な仕事から解放する新技術ではなく、彼らがサボらず、文句も言わずに、指示通り働いてくれるようにするためのイノベーション、つまり、労働者を効率的に支配し、管理するための技術なのです。

 人間が頭で考える「構想」の作業を、マルクスは「精神的労働」と呼んでいます。「実行」は、自身の身体を使った「肉体労働」です。人間の労働は、構想と実行、精神的労働と肉体的労働が統一されたものでした。ところが、資本主義のもとで生産力が高まると、その過程で構想と実行が、あるいは精神的労働と肉体的労働が分断される。「構想」は特定の資本家や、資本家に雇われた現場監督が独占し、労働者は「実行」のみを担うようになるというわけです。

 

(5)  「分業」が労働者を無力化する

 では、どうやって「構想」と「実行」を分離するのでしょうか。一番簡単なのは、生産工程を細分化して、労働者たちに分業させるという方法でしょう。

 一人で土鍋を完成させることはできなくても、例えば土をこねるだけ、粘土を型に詰めるだけ、型から抜くだけなら、素人でも少しトレーニングすればできるようになります。

 分業というシステムに組み込まれることで、何かを作る「生産能力」さえも失っていく、とマルクスは喝破しています。何年働いても単純な作業しかできない労働者は、分業システムの中でしか働けない(もはや自分一人では完成品を作る能力がない!)ので、生活していくには、分業を組織する資本の指揮監督・命令に従属せざるを得ないのです。

 

(6)   人間らしさを奪うテイラー主義

 テイラーは、まず生産工程を細分化して、各工程の動作や手順、所要時間を分析。 … さらに、生産の計画・管理を行う人と、実際の作業にあたる人を完全に分離します。これは、後者の意識を「規定時間内に自分のタスクを完遂する」ことだけに集中させるためです。 … 差別的な出来高賃金制度も導入して、競うように単純労働に邁進させたのです。

 テイラーは、マネジメントの概念を確立した“科学的管理法の父”とも称されますが、テイラー主義は、生産に関する知というコモン(共有財産)を囲い込む行為にほかなりません。生産に関する知を資本が独占し、資本の都合で再構築された生産システムに、労働者を強制的に従わせる。すると、労働者の立場はどんどん弱くなり、労働時間も容易に延長されてしまいます。

 

 以下については、後に書きます。

(7)  「機械」に奉仕する労働者

(8)   生産力向上で仕事にあぶれる

(9)  「経営者目標」や「AIがもたらす自由」のウソ

(10) 自律性を取り戻せ!

(11) 給食を守る取り組み

 

<出典>

斎藤幸平(2021/1)、カール・マルクス『資本論』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



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