◆ 最新投稿情報
=====
(K1343) 門真のいぶし銀 <高齢期の仕事>
http://kagayakiken.blogspot.com/2021/01/k1343.html
=====
☆☆
生産手段から切り離されてしまうと、もう大半の人々は自給自足できません。生きていくには、何かを売る必要がある。けれども、普通の人が生活のために売ることができるのは、唯一、自分自身の労働力だけなのです
☆☆
第1回 4日放送/ 6日再放送
タイトル: 「商品」に振り回される私たち
放映は、 月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、 水曜日 午前 05:30~05:55
及び 午後 00:00~00:25
【テキストの項目】
(1) 「労働」--人間だけが行うもの
(2) 『資本論』は「富」から始まる
(3) 「商品」の正体
(4) 「資本」が森を囲い込む
(5) 目先の金儲けを止められない
(6) 必要な物より「売れそうな」モノ
(7) モノに使われ、振り回される人間
(8) 「民営化」という名の囲い込み
(9) 社会の「富」が危ない!
【展開】
(1) 「労働」--人間だけが行うもの
(2) 『資本論』は「富」から始まる
(3) 「商品」の正体
(4) 「資本」が森を囲い込む
(5) 目先の金儲けを止められない
以上は、既に書きました。
(6) 必要な物より「売れそうな」モノ
マルクスは、「商品」には二つの顔があると指摘しています。
一つは、「使用価値」という顔です。「使用価値」とは、人間にとって役に立つこと(有用性)、人間の様々な欲求を満たす力であり、資本主義以前の社会での生産の目的でした。
しかし、資本主義において重要なのは、商品のもう一つの顔、「価値」です。「商品」になるためには、別の何かと交換されなければなりません。交換されない椅子は、座れるという「使用価値」を持った、ただの椅子です。
物が商品となって交換される際には、お互いに等しい「価値」を持っていることになります。そしてこの価値は、その商品を生産するのにどれくらいの労働時間が必要であったかによって決まる、というのがマルクスの「労働価値説」です。
(7) モノに使われ、振り回される人間
「使用価値」のために物を作っていた時代は、文字通り、人間が「物を使っていた」わけですが、「価値」のためにモノを作る資本主義のもとでは立場が逆転し、人間がモノに振り回され、支配されるようになる。この現象を、マルクスは「物象化」と呼びます。
新型コロナウイルス対策として政府が立案した「GOTOキャンペーン」。旅行や外食による感染拡大のリスクがあっても、経済を回していかなければ社会として存続できない。だから、何としてでも経済を「回していく」――といっていますが、本当は「回させられている」というほうが正しい。人間のために経済を回すのではなく、経済を回すこと自体が一種の自己目的になって、人間は、資本主義社会という自動装置の歯車としてしか生きられなくなっている。
(8) 「民営化」という名の囲い込み
民営化というと、公営・国有の「独裁的」で非効率だった事業が、民の手で「民主的」に効率よく管理・運営されるというイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、その実態は特定企業による権利独占であり、「商品」の領域を広げる現代版「コモンの囲い込み」です。
市場では「利益」が優先されるため、儲からない物やサービスは容赦なく削られます。予算も、人員も削られる。本当に無駄な物は、もちろん削るべきですが、「使用価値」を無視した効率化は、必要な物やサービスまで削り、あるいは質を低下させて、社会の「富」を貧しくしていく。そんな行き過ぎた効率化で窮地に追い込まれている例の一つが、日本の公立図書館です。
(9) 社会の「富」が危ない!
今、全国の公立図書館で非常勤の職員が増えています(添付の表①参照)。ほとんどの都道府県で、図書館で働く人の半数以上が非常勤。 … 非常勤職員を増やしているのは、図書館運営の「効率化」と「コスト削減」のためです。こんな状況が続けば、図書館で働きたいという人が減り、サービスの質も低下して、貴重な資料が適切に保管されなかったり、レファレンスの精度が保てなかつたりするというようなことも起こりかねません。
公立図書館という場やその蔵書は、まさに社会の「富」、大事なコモンです。しかし、「商品」ではないので、儲けは生みません。「使用価値」より「価値」を優先する資本主義の論理で図書館運営が“改革”されれば、社会の富が痩せ細ってしまうのです。
<出典>
斎藤幸平(2021/1)、カール・マルクス『資本論』、100分de名著、NHKテキスト(NHK出版)
0 件のコメント:
コメントを投稿