(797) マーサズ・ヴィンヤード島の聴覚障がい者
「ハンディキャップのない社会が存在し得た」という話である。
===== 引用 はじめ
マーサズ・ヴィンヤード島は、マサチューセッツ州南東部の大西洋岸から8キロほど沖合に浮かぶ島である。
…
この隔離された島には、よそでは見られない特徴があった。… 島では300年以上にわたり、先天性のろう者の数が飛び抜けて高い比率を示した。これは遺伝性の聴覚障害が原因だった。
===== 引用 おわり
*1
数字で言うと、
===== 引用 はじめ
マーサズ・ヴィニヤードで出生した者の155人に1人 (0.7%) が聾者だったと推定しており、この数字は合衆国全体の数字(2,730人に1人、0.04%)の20倍だという。
19世紀遅くに聾者と正常者の結婚は、全聴覚障害者の結婚の65%であったというが、これは全米平均の20%よりかなり高い。
===== 引用 おわり
*2
Wikipedia 『マーサズ・ヴィニヤード』
この島で聾者として生まれた人は、皆と同じ学校に通い、当たり前に就職し、あたり前に結婚するという。そして、聾者もそうでない人も、誰も困っていないという。
何故か。
===== 引用 はじめ
ヴィンヤード島では、300年以上にわたり、健聴者が島の手話を覚え、実生活の場でそれを用いていた。島の健聴児の多くは、ちょうどメキシコとの国共沿いでくらす今日のアメリカの子供が英語とスペイン語を覚えてしまうのと同じように、英語と手話という二言語を完全に併用しながら大人になっていった。
===== 引用 おわり
*1
これは何を意味するか。
===== 引用 はじめ
だれ一人聴覚障害をハンディキャップと受け取らなかったという意味で、ハンディキャップのない社会が存在し得たことを実証してみせたのである。
===== 引用 おわり
*1
===== 引用 はじめ
ろう者の社会生活や職業生活を制限しているのは、聞こえないという障害ではなく、まわりの健聴世界との間に立ちはだかる言葉の壁なのだ---ろう者がしばしばこう発言しているのを考えると、ヴィンヤード島で見られた情況には大きな意義があるといえよう。
そのような壁が取り除かれたとき、どのような情況が生じるのだろうか。ろう者は、そしてまたほかの障害者は、社会が万人に適応しようとした場合、自由に社会にとけ込めるのだろうか。
障害者や障害者の集団が、障害者の問題の多くは、肉体や感覚や精神の障害から生じるのではなく、障害者のまえに立ちはだかっている壁---つまり人間関係や障害者観や法律の壁から生じるのだということを声高に主張している。彼らの言い分はこうである。
「少しだけこちらに合わせてください。そうすれば社会のお役に立てますから」
===== 引用 おわり
*1
(注)この話を知ったのは、植戸貴子教授(神戸女子大学健康福祉学部)の講演による
(注)*1 は、「『みんなが手話で話した島』1991/11 ノーラ・エレン グロース、 正信, 佐野」を紹介したサイトである
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