下の引用文は、「傾聴とは、何ですか?」と問われた時の分かりやすく、かつ、本質的な説明になっていると思うが、初女さんの傾聴は、単なる傾聴に留まっていない。
初女さんの「傾聴」には、次のような特徴があると思う。
(1)
正統的な傾聴である
下記の引用参照
(2)
食事を伴う
初女さんのこだわり。食べること、共に食べることを大切にする
(3)
時間を区切らない
通常のカウンセリングにおける傾聴は、例えば50分で終え、別の日に続ける。初女さんの傾聴は、時に泊りがけで続く
(4)
当事者の会も兼ねることがある
必ずしも1対1ではなく、末期がんの人たちが共に食事をし、会話をかわすこともある
これらが響き合って、上質の時間が流れるのだろう。
===== 引用 はじめ ( P.36 – P.37 )
悩みに押しつぶされそうになる人、心を病む人というのは、もともと心が純粋で、繊細なのだと思います。心に傷を負ったとき、すぐに家族や友人たちの中に支えてくれる人を見つけることができればいいのですが、それができないと、どうしたらよいのか自分ではわからなくなって、精神状態が大変不安定になってしまいます。
そのような人がここにくると、私は、その人の話したいこと、思っていることを全部受けとめて聞くようにしています。「あなたはそういうけれど、それは間違っている」とか、「こうすればいいのよ」とか、途中で話をさえぎるようなことはしません。そのようなことをすれば、相手はせっかく開きかけた心をまた閉ざしてしまいます。
また、ただぼんやりと聞いているだけでは、相手もなかなか話してはくれません。「そうね」「それじゃあ、大変だったね」と、自分をその人の身に置きかえ、共に喜び、共に悲しむという気持ちで聞いていると、自分が受け入れられているという安心感からなのでしょう、次から次と、心の内を話してくれるようになります。そうして、最後には私がその人に最も伝えたいと思っていることに自分で気がつき、自分で答えを出していきます。
悩みを抱える人の多くは、本当はどうすればいいのか、自分でわかっています。ですから、ああしなさい、こうしなさいと、指図をするのでなく、そばにいて共感し、その人が自分なりの解決の方法を見つけるのをお手伝いするのが、私の役目なのです。
===== 引用 おわり
佐藤初女(2005) 『おむすびの祈り』、集英社文庫
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