研究会の内容は、―「定年後の状況とその課題」―であった。
その中で「定年後は個人の自己実現が大切だが、難しい」という話が出た。
「自分にとっての自己実現とは何かを定義し、それに向かって努力を積み重ねるというアプローチで成功すればそれでよいが、なかなか難しいだろう。うまくいかない時は、(目標が不明確なままでも)とにかく動き出し、動き続けることが大切だ。その動きは、(それと意識しないでも)自己実現に向かうものなのだから、ある時気づくと、自己実現出来ているあるいは自己実現に向かっていることが分かるだろう」といった趣旨の発言を私はした。
もう少し詳しく述べる。
(1)
自己実現は価値観や道徳観にリンクしており、頭ではとらえにくい
我々の価値観や道徳観は、育ってきた環境、置かれている立場、担っている役割などの影響を強く受け、必ずしも本当の自分とは一致しておらず、かつ、そのことに我々は気づいていない。頭で考えて決めようとすると、本当の自分とは違う価値観や道徳観に基づいてしまうので、間違った自己実現目標を設定してしまうことがある。
(2)
気持ちの良い方向へ動けば、自己実現に向かっている
あるいは、自己実現が何者かがわからないので、動けなくなってしまうことがある。ともかく動き始めること。動く方向を選択できるならば、心地の良い方、腑に落ちる方、すっきりする方を選ぶ。動いていて心地が悪くなったり、腑に落ちなくなったり、すっきりしなくなったら、動きを修正する。そして動き続ける。
そのような動きは本当の自分と合致しており、だから、その動きは、意識しなくても自己実現に向かっている。
あまり深く考えなくてもいい、ある程度動いたら一度立ち止まって、どうなっているかを観察してみよう、考えてみよう。自己実現できているか、自己実現に向かっている自分を発見するだろう。
(3)
目標設定型でうまくいけば良い。うまくいかない時に試してみよう
自分とは何かを考え、自分にとっての自己実現とは何かをしっかり把握し、それに向かって努力することは良いことだ。それで自己実現出来れば、素晴らしい。でも、うまくいかないこともあろう。そのときには、「ともかく動け」というアプローチもやってみることをお勧めする。
(4)
自己実現と幸福
自己実現しようと頑張れば頑張るほど、自己実現から遠ざかることがある。自己実現はさておき、一生懸命生きていたら、結果として自己実現できていることがある。
幸福になろうと頑張れば頑張るほど、幸福から遠ざかることがある。幸福はさておき、一生懸命生きていたら、結果として幸福になっていることがある。
とても似ている。
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