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(K1229) 生前整理とは / 生前整理(1) <終活>
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こうした文学作品をピカレスクロマン(悪漢小説)と呼びますが、自分の生活のために他人の財産を奪い取る文字通りの悪党を主人公にした作品においても、デフォーは道徳的、宗教的な内省をしばしば織り交ぜています
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第2回 14日放送/ 16日再放送
タイトル: 生命か、生計か? 究極の選択
【テキストの項目】
(1) 命を取るか、仕事を取るか
(2) 命がけの生活
(3) 困窮する貧民たち
(4) デフォーの性格の複雑さ
(5) 災害ユートピアの出現
(6) 盗みを働く女たち
(7) ロンドン子だからこそ描けた、都市とペスト
(8) 生の根っこを見つめる
【展開】
(1) 命を取るか、仕事を取るか
前回は主に、ペストがロンドン市民の心理に及ぼす影響を見てきました。今回は、ペストがロンドンの市民生活全般に与えた影響を中心に、『ペストの記憶』を読み進めていきたいと思います。
H・Fにとって商売は何より大事なものでした。これと、自分の命を護ることが天秤にかけられたわけです。形は少し異なりますが、コロナ禍を生きる現代人も、大きく見れば同じ問題に直面しています。感染拡大を防ぐには仕事を休まなければならない。でもそうすると収入が断たれてしまう。生命か、生計か。パンデミック下における普遍的な問題です。
(2) 命がけの生活
命がけの買い物の様子。
市場で骨付き肉を一片買うときも、肉屋の手から直接受け取ろうとはせず、鉤にかかっているのを自分で外した。また肉屋の方も金に触れようとせず、わざわざ酢を満たした壺を用意して、そこに入れさせた。買う側はどんな半端な額でも支払えるよう、いつも細かい金を用意して釣銭をもらわないようにした。香料や香水の入った壜を握りしめ、ほかにも効き目のありそうなものはなんでも用いた。
(3) 困窮する貧民たち
ここでにわかに浮き彫りになってくるのが、階級格差の問題です。ペスト襲来が露わにしたのは、ロンドンに暮らす人々のあいだにある厳然たる階級格差でした。
金持ちたちは早々にロンドンから逃げ出しています。残った人々の中でも、語り手のようにそれなりに経済力がある者は、一定期間は家に閉じこもって外出自粛生活を送ることができました。ところが、貯えのない貧しい人たちは、生きていくために外に出て働かなければなりません。いわば「汚れ仕事」を請け負ったのです。
(4) デフォーの性格の複雑さ
デフォーという人は、ひたすら良心的で立派な人物だったわけでもなければ、逆に単に私利私欲で動くような人でもありませんでした。このふたつが奇妙な形で同居している点に、彼の人格、
さらには彼の作品の複雑さとユニークさがあるのです。こういう複雑な人間性が育まれた背景として、ふたつの要因を挙げておきたいと思います。
ひとつは、デフォーの非国教徒としての信仰です。
ふたつ目は、宗教的なマイノリティに属していたデフォーが、子ども時代から様々な差別に遭っていたことです。
以下は、後日書きます。
(5) 災害ユートピアの出現
(6) 盗みを働く女たち
(7) ロンドン子だからこそ描けた、都市とペスト
(8) 生の根っこを見つめる
<出典>
武田将明(2020/9)、デフォー『ペストの記憶』、100分de名著、NHKテキスト(NHK出版)
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