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2020年8月9日日曜日

(2055)  ミヒャエル・テンデ『モモ』(2-2) / 100分de名著





◆ 最新投稿情報
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(K1196) (入浴の拒否)お風呂場でけがをしそうでいやだ(1) / 認知症の人の不可解な行動(27) <認知症>
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人間から生きる時間を1時間、1分、1秒とむしりとるんだからな…人間が節約した時間は、人間の手にはのこらない…われわれがうばってしまう…モモの聞く力によって、灰色の男は自らの正体をしゃべってしまう
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第2回  10日放送/ 12日再放送
  タイトル: 時間を奪う「灰色の男たち」

放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25



【テキストの項目】
(1)  灰色の男、現る
(2)  虚無として計算された時間
(3)  灰色の男とは何か
(4)  遊べなくなった子どもたち
(5)  灰色の男の独白

(6)  早すぎたアクション
(7)  深層心理の三位一体
(8)  否定を通じて中心にたどり着く
(9)  つながりを断つ


【展開】

(1)  灰色の男、現る
(2)  虚無として計算された時間
(3)  灰色の男とは何か
(4)  遊べなくなった子どもたち
(5)  灰色の男の独白
 以上は、既に書きました。

(6)  早すぎたアクション
 モモは、灰色の男が話したことをベッポとジジに伝えます。 … 翌日、集まった子どもたち(大人は誰も来ませんでした)とジジは、大人たちに真実を知らせるためにデモ行進をすることに決めました。プラカードや横断幕をつくって町中を練り歩きましたが、これは失敗に終わりました。
 例えば、ビジネスの会議で二つの案が対立する場面を考えてみましよう。そこには、どちらか一方には同意できないために議論が進まない、あるいは利害関係があってうまくいかない、という背景が必ずあります。そんな時に重要になるのは、発言の中身よりもタイミングにほかなりません。長く膠着状態にあったとしても、何かの拍子ですべてが味方するタイミングがあるものです。たとえ時間がかかったとしても、そこさえつかめば物事は動き出します。

(7)  深層心理の三位一体
 モモのところに一匹の亀が現れました。亀の名をカシオペイといい、マイスター・ホラという老人のところに連れて行きます。マイスター・ホラは、時間の国で時間をつかさどる人物です。
 モモ(少女)、マイスター・ホラ(知恵のある老人)、カシオペイア(動物)の三人は、深層心理における三位一・体を表しています。
 箱庭療法において、摂食障害の人、特に一昔前の拒食症の人がつくる箱庭には、しばしば少女と老人男性と犬が出てくることを河合隼雄は指摘しています。
 摂食障害のつくる箱庭に登場する三者と、『モモ』の後半で活躍する三人で、組み合わせが一致することは、とても興味深いことだと思います。

(8)  否定を通じて中心にたどり着く
 モモがいなくなったことに気づいた灰色の男たちは、彼女を追いかけます。自分たちの秘密を知ってしまったモモを放っておくわけにはいきません。しかし、カシオペイアのおかげで、モモは何とかうまく逃げることができました。次のような過程で、マイスター・ホラのところにたどり着きました。
 モモは「ここではカメがまえよりもっとゆっくり歩いているのに、じぶんたちがすごく早くまえにすすむのにびっくりしました」とあります。この地区をさらに進むと、現れたのは「さかさま小路」。前に行こうとすると進めず、後ろ向きに歩くと進めるという不思議な路地です。その突きあたりに建っていたのが「どこにもない家」。ここが、マイスター・ホラのいる時間の国でした。
 このプロセスにあるのは、徹底した否定の論理です。まるで知らない、さかさま、どこにもない――。時間の国のような究極の場所に至るためには、肯定ではなく否定の論理が必要だったのです。

(9)  つながりを断つ
 灰色の男たちは、モモを自分たちに従わせる方法を考えました。「この女の子は友だちをたよりにしています。じぶんの時間を他人のためにつかうのがすきです。しかし考えてみるに、もし時間をさいてやるあいてがひとりもいなくなってしまったとしたら、どうなるでしうょうか?」
 モモを従わせるには、モモでなくその友達を押さえればいい。つまり、いくら真実を知る存在がいても、一人では何も意味のないことを示唆しているのです。真実は誰かと共有しなければ意味がありません。


<出典>
河合俊雄(2020/8)、ミヒャエル・テンデ『モモ』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



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