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2020年8月7日金曜日

(2053)  ミヒャエル・テンデ『モモ』(2-1) / 100分de名著




◆ 最新投稿情報
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(K1194)  同意を求められた / 「事前指示書」提示されて(1) <リビング・ウィル>
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新幹線ができて、移動時間が短くなった。でも、私たちに時間の余裕はできなかった。節約した時間に新しい仕事がどんどん入り、私たちはますます忙しくなった。時間を節約できたところで、結局手元に残ることはない
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第2回  10日放送/ 12日再放送
  タイトル: 時間を奪う「灰色の男たち」

【テキストの項目】
(1)  灰色の男、現る
(2)  虚無として計算された時間
(3)  灰色の男とは何か
(4)  遊べなくなった子どもたち
(5)  灰色の男の独白

(6)  早すぎたアクション
(7)  深層心理の三位一体
(8)  否定を通じて中心にたどり着く
(9)  つながりを断つ


【展開】

(1)  灰色の男、現る
 ある雨の日、理髪師のフージー氏はお客を待ちながら外を眺め、ふとこう思います。「おれの人生はこうしてすぎていくのか。」フージー氏は考えました。「はさみと、おしゃべりと、せっけんのあわの人生だ。おれはいったい生きていてなんになった? 死んでしまえば、まるでおれなんぞもともといなかったみたいに、人にわすれられてしまうんだ。」
 そこに現れたのが灰色の男です。葉巻をくゆらせ店に入ってきた男は、フージー氏に時間貯蓄銀行に口座を開くことを勧めます。

(2)  虚無として計算された時間
 「もしもちゃんとしたくらしをする時間のゆとりがあったら、いまとはせんぜんちがう人間になっていたでしょうにね。ようするにあなたがひつようとしているのは、時間だ。そうでしょ?」。男はフージー氏が本来はどれだけたくさんの時間を持っているのか、そのうちどれほど多くを無駄なことに費やしているのかを次々に計算し、数字を挙げていきます。
 フージー氏は時間を節約すると宣言し、時間を倹約するようになりました。するとどうなったか。
 倹約した時間は、じっさい、手もとにすこしものこりませんでした。魔法のようにあとかたもなく消えてなくなってしまうのです。フージー氏の一日一日は、はじめはそれとわからないほど、けれどしだいにはっきりと、みじかくなってゆきました。

(3)  灰色の男とは何か
 フージー氏は時間の倹約に励みましたが、不思議なことに手元に時間は残りませんでした。あとでわかることですが、その時間はすべて灰色の男たちに盗まれていたのです。時間を節約したはずなのに余裕は生まれない。私たちの生活においても、しばしば実感されることではないでしょうか。
 私たちは便利になったと思っているが、実際はシステムに利用されており、結局個人は幸せにならない。これが灰色の男たちのもたらすロジックです。
 ひとたび時間貯蓄銀行のシステムに乗ると、人間の豊かさのようなものが失われ、人々はむしろ貧しくなっていくのです。

(4)  遊べなくなった子どもたち
 物事があらかじめすべて決められていると、人間の想像ガは次第に失われていきます。つまり、想像力を育てるのは自由な時間なのです。 … 時間があるとイマジネーションが広がるのです。
 町の大人たちは次々と時間の節約を始め、慌ただしくなりました。子どもたちも遊べなくなりました。灰色の男たちが時間を盗み始めたことと密接なつながりがあるといえます。

(5)  灰色の男の独白
 モモは決して灰色の男と言い争いをしたり、問い詰めたりしているわけではありません。恐怖に負けずに話を聞いているうちに、男が自分から本当のことをしゃべってしまうのです。灰色の男は、モモを説得しようと思っていたのに、ひとりでに正体を明かしてしまいました。これがまさにモモのカ、すなわち聞くことの力だと思います。これ以上話してはまずいと思うのに、聞いてくれるから話してしまうのです。
 聞く力によって、モモは灰色の男たちの秘密を知ることになりました。

 以下は、後に書きます。
(6)  早すぎたアクション
(7)  深層心理の三位一体
(8)  否定を通じて中心にたどり着く
(9)  つながりを断つ

<出典>
河合俊雄(2020/8)、ミヒャエル・テンデ『モモ』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)






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