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2020年2月3日月曜日

(1866)  ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』(1-2) / 100分de名著

 
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第1回  3日放送/ 5日再放送
  タイトル: 「嘘の生」からなる全体主義
 
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
 
【テキストの項目】

(1)  チェコの民主化を導いたハヴェル
(2)  「歴史の客体」として翻弄されてきたチェコ
(3)  『力なき者たちの力』執筆の経緯とその影響力
(4)  「ディシデント」としての人生
 
(5)  ポスト全体主義がもたらす思考停止状態
(6)  青果店のスローガンは何を意味するか
(7)  イデオロギーが口実となる
(8)  自発的に体制に奉仕させるシステム
(9)  良心と引き換えに物質的な安定を得る
 
【展開】
(1)  チェコの民主化を導いたハヴェル
(2)  「歴史の客体」として翻弄されてきたチェコ


(3)  『力なき者たちの力』執筆の経緯とその影響力
(4)  「ディシデント」としての人生
 以上は、既に書きました。
 
(5)  ポスト全体主義がもたらす思考停止状態
 「古典的独裁」に代表される全体主義ではない、ハヴェルらの属する体制を「ポスト全体主義」と名づけた。この体制におけるイデオロギーという理念に盲従していくことことで、人々は居場所を見出す。そして、思考停止の状態に陥り、外交や内政だけでなく、自分の生き方に到るまで、イデオロギーに託すことになる。ここでいうイデオロギーは、政治思想や社会思想ではない。
 
(6)  青果店のスローガンは何を意味するか
 青果店の店主が、「全世界の労働者よ、一つになれ!」というスローガンをショーウィンドウの玉ねぎと人参の間に置いた。
 計画経済の原理にある青果店は、国営企業ネットワークに属している。要求されて政治的なスローガンを置くことは、「些細なこと」の一つに過ぎない。このメッセージの意味を考えていない。習慣的な行為。断れば厄介になるかもしれないと置いたに過ぎないだろう。
 
(7)  イデオロギーが口実となる
 「全世界の労働者よ、一つになれ!」。この「労働者」という大きな主語を使ったスローガンは、「私」の本当の気持ちを覆い隠します。その「私」を覆い隠す高いところにあるものがイデオロギーです。イデオロギーは「世界と関係を築いていると見せかける方法」であり、「ヴェール」、「口実」だとハヴェルは言います。
 
(8)  自発的に体制に奉仕させるシステム
 体制から要求されている所作を自ら察知し、盲目的に行ってしまうことを、ハヴェルは「自発的な動き」と表現しています。平たく言うと、「忖度」や「空気を読む」ということになるでしょうか。この「自発的な動き」は、青果店の店主であれ、党の要職に就いている人であれ、立場に関係なく起こります。
 
(9)  良心と引き換えに物質的な安定を得る
 青果店の店主は、自分の良心のうずきを無視してスローガンを掲げることで、当局からの介入を逃れることができ、給料ももらえるし、休暇を使って海のある外国に行くこともできます。「良心」や「責任」という倫理的なものと引き換えに、「物質的な安定」を確保するのです。
 
 
<出典>

阿部賢一(2020/2)、ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

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