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2019年6月22日土曜日

(1642)  シュピリ『アルプスの少女ハイジ』(4) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K0783) 「老後に2000万円必要」問題(1) / 「老後に2000万円必要」問題とは何か(1) <高齢期の家庭経済>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/06/k07832000120001.html
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第4回  24日放送/ 26日再放送


  タイトル: 再生していく人びと
 
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
 


【テキストの項目】
(1)  クララの到着
(2)  ペーターの心の闇とクララの自立
(3)  ペーターへの教訓――心の中の小さな番人
(4)  新しい家族
(5)  喪失と再生――人間性回復の物語
 

【展開】

(1)  クララの到着

 クララが、おばあさまと一緒にアルムの山小屋にやってきました。フランクフルトの屋敷からほとんど外に出たことがないクララにとって、空も山も木も花も、何もかも生まれて初めてのものばかりで、すっかり夢心地です。「新しい力が湧いてくるかもしれませよ」とおじいさんが提案し、クララは4週間アルムで過ごすことになりました。
 クララとハイジは籠から放たれた小鳥のように喜び合いました。開放的なアルプスの対自然のなかで「命を吹き込むような」清らかな空気を吸い、明るい太陽を浴び、おいしい山羊のミルクを飲み、滋養たっぷりのチーズやバターを食べて――。
 

(2)  ペーターの心の闇とクララの自立

 よそ者のクララが来てからというもの、ハイジが相手にしてくれないことに「内心の怒りが最高潮に達していた」ペーターは、目の前にある車椅子に気づくと我を忘れて突進し、力まかせに急な坂へと突き落としました。素朴で優しいアニメのペーターとは大違いです。少年ペーターの心の闇が大きくなっていく様子が描かれています。
 山登りを諦めかけていたハイジとクララですが、おじいさんがクララを片腕で抱き、牧場に着きます。クララは、自分の心のある変化に気づきます。ふいに、自分のことは自分でしたいという、大きな願いが湧きおこってきました。
 クララの両脇をハイジとペーターが支え、何度か試しているうちに、とうとうクララは自分の足で前に進むことができるようになりました。
 

(3)  ペーターへの教訓――心の中の小さな番人

 クララのおばあさまも、お父さんのゼーセーマンさんも、車椅子に座っていないクララを見て驚き、ハイジに支えられて歩いているのを見て感動しました。
 車椅子を突き落としたペーターは、警察官に捕まって監獄に入れられると、ビクビクしています。すべてお見通しのおじいさんから事情を聞いたクララのおばあさまは、ハイジをクララにとられてしまったペーター少年の腹立ちを推し量り、咎めないことにしました。
 「悪いことをしてそれが誰にもバレないと思ったら大間違いで、神様はちゃんとごらんになっている。そして、誰でも心のなかに、神様が入れておいた小さな番人がいて、その番人は普段は眠っているけれど、その人が悪いことをすると目を覚まし、小さな棘でちくちく心のなかをつつくので、その人は痛くてじっとしていられなくなってしまう」。ペーターは自分が今まさにその通りの目に遭っていることに気づき打ちのめされます。
 「神様は、誰かが悪いことをしようとしても、それをすばやく御手のなかに引き取って、痛めつけられるはずたった人のために、よいことに変えて下さるの」と続けます。クララはきれいな花が見たいのに、連れて行ってもらう車椅子がなくなったから、がんばって歩けるようになったと言うのです。
 

(4)  新しい家族

 クラッセン先生は、ハイジの父親になって、自分の子どもとしてあらゆる権利を引き継がせたいと言います。深く心を動かされたおじいさんは、先生の手を強く握りしめるのでした。
 クラッセン先生は、フランクフルトを引き払ってデリフにやってきました。自分の住む部屋と、おじいさんとハイジの冬の間の住まい、それと山羊小屋を用意するための工事を進めます。
 クララのおばあさまは、もう決してハイジをフランクフルトに連れて行くようなことはなく、むしろ自分たちのほうからハイジに会いに毎年アルムにくることにしたのだと、ペーターのおばあさんに説明しました。
 クララは、生涯で一番楽しい思い出を与えてくれた美しいアルムとの別れを惜しみながら、お父さんとおばあさまに迎えられて、スイスイの旅に出ました。
 「ハイジ、讃美歌を私に読んでおくれ! あとはもう、賛美して、天におられる神様がわたしたちにしてくださったすべてにお礼を申し上げるしかないという気持ちだよ」。ペーターのおばあさんの感謝の言葉で、物語は幕を閉じます。
 

(5)  喪失と再生――人間性回復の物語

 ヨハンナ・シュピリの『ハイジ』という作品は、故郷や家族の喪失から再生する人々の物語として読むことができます。それはとりもなおさず人間性回復の物語であり、またクララに見られるように、本来持っていた生きる力を取り戻す物語でもあります。そういう意味でも希望に満ちた作品ですから、大人の読者の心にも響くのです。
 このように『ハイジ』には、百四十年前の話であるにもかかわらず、現代にも通じる要素がたくさん詰まっています。
 

<出典>
松永美穂(2019/6)、シュピリ『アルプスの少女ハイジ』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

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