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=====(K0076) 高齢者の生き方と逝き方 <健康><臨死期>
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『100分で名著』 7月17日(月) 22:25 ~ 22:50 Eテレ
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『高慢と偏見』では、女主人公エリザベスと高慢な大富豪ダーシーが、積み重ねられた「偏見」や自らを守る「プライド」によって、誤解と拒絶を繰り返す。物語は、主にこの二人の関係の変遷をめぐって展開する。(P.36)
【おおまかな流れ】
1.
メリントン町の舞踏会での、エリザベスとダーシーの最初の出会い(P.37)
ダーシーは、近くに座っていたエリザベスを一瞥したのち、「まあまあだが、いっしょに踊りたいというほどの美人じゃないね。」と冷たく言い放った。
2.
ネザフィールド屋敷でのエリザベスとダーシーとの会話(P.48)
教養を要する高度な会話である。それに加われるのは、その場のメンバーのなかではエリザベスとダーシーだけだった。二人はここで、互角の相手として認め合う。
3.
ダーシーは思いがけずにエリザベスに恋しはじめた(P.63)
それが、表情豊かな美しい黒い瞳のせいで、めったにないほど知的な顔であることに、ダーシーは気づくようになった。これに続いて、次々と困った発見があった。
4.
ルーカス家開かれたパーティーで(P.61-P.62)
「悪戯っぽい眼差し」をダーシーに投げかけて立ち去った。媚びないエリザベスの溌溂とした態度が、ダーシーにとっては新鮮で、かえって彼の注意を引く効果があった。
5.
ネザフィールド屋敷の舞踏会での、踊りながらの二人の会話(P.48-P.50)
エリザベスに魅了されつつあったダーシーは戸惑った。二人の関係がこじれつつ、一方では会話をぶつけ合って接近していく。
6.
ダーシーに絡むエリザベス(P.65-P.66)
エリザベスは、「偏見」で武装して、わざと彼に逆らったり、議論をふっかけたりして、攻撃姿勢を取っている。そしてこれが、ダーシーを魅了することになる。
7.
会話によるドラマの進展(P.67)
会話が人物相互に作用を及ぼし、それによって人間関係が変容していく。そこに劇的様相がある。会話によって、人間関係がスリリングに変化している。
8.
ダーシーをめぐる三角関係(P.68,P.70)
ミス・ビングリーはエリザベスをライバル視し、ことあるごとにダーシーから彼女を引き離そうとするが、その試みは、ことごとく裏目にでる。
9.
エリザベスの無意識の欲望(P.72)
ダーシーに関わっていくことは、ある種のスリルと達成感があると、上昇志向をもつエリザベスは衝動的に感じ取ったのではないか。
10. ダーシーの求婚(P.75)
ダーシー「ずいぶん苦しみましたが、無駄でした。もうだめです、ぼくの気持ちは、もう抑えられません。言わせてください。どれほどあなたを熱烈に愛しているか」
11. 決裂(P.78,P.80)
エリザベスは、きっぱりと断った。自分のプライドが心底傷つき、自分の尊厳を回復するために、エリザベスは徹底抗戦に出た。
12. 二つのプライド(P.79–P.80)
「あなたは階級的にはジェントルマンかもしれないが、人間としては敬われるべき人ではない」と指摘されたようなものである。
「そこまで言ってしまえば、ふつうなら人間関係は終わりでしょう」(P.80)という会話が交わされながらも、このあと結婚という結末に至る。今なお多くの愛読者がいるということは、物語が嘘っぽくないということであろう。まさに、ドラマチックな物語である。
【詳細】
1.
メリントン町の舞踏会での、エリザベスとダーシーの最初の出会い(P.37)
エリザベスと踊ることを勧められたダーシーは、近くに座っていたエリザベスを一瞥したのち、「まあまあだが、いっしょに踊りたいというほどの美人じゃないね。それにいまは、ほかの男から相手にされないような女性に対して、わざわざご機嫌をとるような気分じゃないよ」と冷たく言い放った。
2.
ネザフィールド屋敷でのエリザベスとダーシーとの会話(P.48)
会話の中でダーシーは、「ぼくは、詩の糧になると思っていました」と言い、それに応じてエリザベスは会話を続けた。これはシェイクスピアの『十二夜』から引かれた言葉で、教養を要する高度な会話である。それに加われるのは、その場のメンバーのなかではエリザベスとダーシーだけだった。二人はここで、互角の相手として認め合う。しかも恋愛にまつわる会話を交わしつつ、ひそかにつながり始めた。
3.
ダーシーは思いがけずにエリザベスに恋しはじめた(P.63)
エリザベスの顔はたいしたことがないと、自分に対しても友人たちに対しても断言したとたんに、それが、表情豊かな美しい黒い瞳のせいで、めったにないほど知的な顔であることに、ダーシーは気づくようになった。これに続いて、次々と困った発見があった。エリザベスの軽やかな姿や、自然で陽気な立ち居振る舞いなど、彼女の数々の魅力をルーカスは認めた。
4.
ルーカス家開かれたパーティーで(P.61-P.62)
エリザベスは慌てて手を引っ込めて、「私は本当に、踊る気なんてまったくないのです。踊りの相手を見つけようと、こっちへ来たなんて思わないでください」と、ピシャリと断った後、「悪戯っぽい眼差し」をダーシーに投げかけて立ち去った。媚びないエリザベスの溌溂とした態度が、ダーシーにとっては新鮮で、かえって彼の注意を引く効果があった。
5.
ネザフィールド屋敷の舞踏会での、踊りながらの二人の会話(P.48-P.50)
ダーシーに偏見をもっているエリザベスは、ウィッカムに吹き込まれた情報をもとに、ダーシーに挑む発言をする。一番嫌なウィッカムの話題を出され、しかも自分に対して持って回った含みのある言い方をされて、エリザベスに魅了されつつあったダーシーは戸惑った。二人の関係がこじれつつ、一方では会話をぶつけ合って接近していく。
6.
ダーシーに絡むエリザベス(P.65-P.66)
エリザベスは、ダーシーのことは嫌いだけれど、議論の相手としては面白い。ダーシーとは会話を交わすたびに関係が接近して、仲良くなるとは言いがたいものの、人間関係が濃く、深くなっていく。彼女はあえてダーシーに絡むような態度を示す。「偏見」で武装して、わざと彼に逆らったり、議論をふっかけたりして、攻撃姿勢を取っている。そしてこれが、ダーシーを魅了することになる。
7.
会話によるドラマの進展(P.67)
『高慢と偏見』では、会話でドラマが進展していく度合いが極めて大きい。会話が人物相互に作用を及ぼし、それによって人間関係が変容していく。そこに劇的様相がある。会話によって、人間関係がスリリングに変化している。
8.
ダーシーをめぐる三角関係(P.68,P.70)
ミス・ビングリーはエリザベスをライバル視し、ことあるごとにダーシーから彼女を引き離そうとするが、その試みは、ことごとく裏目にでる。ミス・ビングリーは、ダーシーにすり寄ったり、エリザベスをライバル視して中傷したりして、かえってダーシーの心がエリザベスに接近するきっかけを作った。
9.
エリザベスの無意識の欲望(P.72)
ダーシーは本物の紳士で金持ちだったため、自分の実力でこちらに向けさせてみたい、向けさせたうえで、撥ねつけるという快感も味わってみたい、というような欲求がエリザベスに生じたのかもしれない。いずれにしても、ダーシーに関わっていくことは、ある種のスリルと達成感があると、上昇志向をもつエリザベスは衝動的に感じ取ったのではないか。ダーシーのことは嫌いであっても、避けるよりはむしろ進んで話をしたいという衝動に駆られたのだろう。
10. ダーシーの求婚(P.75)
ダーシーは「ずいぶん苦しみましたが、無駄でした。もうだめです、ぼくの気持ちは、もう抑えられません。言わせてください。どれほどあなたを熱烈に愛しているか」とエリザベスに告白した。そして、プライドについて雄弁に語った。「エリザベスのほうが下であるため、彼女との結婚は身分を下げることになり、家柄の違いという障害があるので、気持ちを抑えるべきではないかと悩んだ」と熱く語った。
エリザベスは、きっぱりと断った。自分のプライドが心底傷つき、自分の尊厳を回復するために、エリザベスは徹底抗戦に出た。相手の愛情がつまらないものだと決めつけて侮辱し、復讐しようとした。女性が男性の求婚を断る言葉としては、珍しいほど激しい言葉を続けた。
12. 二つのプライド(P.79–P.80)
怒ったエリザベスは、「… もっと紳士らしい態度をされていたら、プロポーズをお断りしづらかったかもしれませんが、…」と述べた。
ダーシーの示したプライドは、より「高慢」に近く、階級、家柄、財産など、主として外的な属性に関わるものである。一方エリザベスが守り抜こうとしたプライドは、「人間としての尊厳」とも言い換えられる。それは、人格の中身に関わるものである。「あなたは階級的にはジェントルマンかもしれないが、人間としては敬われるべき人ではない」と指摘されたようなものである。これはダーシーにとっては、生まれて初めての体験であり、言葉を失うほどの打撃だった。ダーシーは気づき、人格的に変容していく。
出典:
廣野由美子、ジェイン・オースティン『高慢と偏見』~虚栄心は乗り越えられるか~、「100分DEで名著」、NHKテキスト(2017/7)添付:第3回人物相関図、エリザベスとダーシー
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