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2016年12月12日月曜日

(719) 変換と構造/レヴィス=トロース「野生の思考」(2-2)


~ 『100分で名著』 1212() 22:25 22:50 Eテレ 放映 ~

 

 先ず、「構造」と「変換」という言葉の学術的な定義を述べるが、分かりにくい。

 「柔らかい素材の上に図形を描いて、その素材を自在に変形しても、図形の要素間の関係性は破いたり、切ったりしないかぎり、変わりません」(P.55)というのがイメージしやすい、文字による説明である。

視覚的に理解しやすいように二つの絵を紹介する。

 

(1)   「構造」と「変換」

「構造」とは、変換を行っても不変の属性を示す諸要素と、その諸要素間の関係の総体である

「変換を行う」とは、何かの構造に「オペレーター(操作媒体)」が作用したとき、内部から全体の変換がおこり、しかも、変換されたあとの構造が前の構造と同型の関係を持って、全体の構造が変わらずに持続していることである

 

(2)   デューラーの横顔

 人間の横顔の輪郭を、方眼の比率を変えたり、ます目を曲線に変えたりして変形させていくと、顔はだんだん変わっていくが、それでも眼と鼻の関係性は変わらない

 

(3)   ダーシー・ウェントワース・トムソンの魚

 眼とエラとヒレの関係は、方眼の曲げ具合や長さの比率を変えても変わらない。こういう魚たちが実存するのが面白い。

 生命体は変幻自在に座標系を変えていき、驚くほど多様なタイプの生物をつくり出すことができ、その中の一部の種類だけが生き残ることができた。

 

 


<各論>
 

(1)   「構造」と「変換」

===== 引用 はじめ  P.51 – P.52

… 「構造とは、変換を行っても不変の属性を示す諸要素と、その諸要素間の関係の総体である」 … 「変換を行う」とは、何かの構造に「オペレーター(操作媒体)」が作用したとき、内部から全体の変換がおこり、しかも、変換されたあとの構造が前の構造と同型の関係を持って、全体の構造が変わらずに持続していることをさしています。

===== 引用 おわり

 

(2)   デューラーの横顔

===== 引用 はじめ  P.52

 わかりやすい例としてレヴィス=ストロースが使っているのが、十六世紀ドイツの画家デューラーの絵*です。人間の横顔の輪郭を、方眼の比率を変えたり、ます目を曲線に変えたりして変形させていくと、顔はだんだん変わっていきますが、それでも眼と鼻の関係性は変わりません。 … 変換をほどこしても相互の関係が不変の属性を保っている - これが「構造」です。

===== 引用 おわり

* 一つ目の写真

 

(3)   ダーシー・ウェントワース・トムソンの魚

===== 引用 はじめ  P.52 – P.54

 もう一つ、二十世紀初頭のイギリスの生物学者ダーシー・ウェントワース・トムソンの、魚の図*も紹介しておきましょう。眼とエラとヒレの関係は、方眼の曲げ具合や長さの比率を変えても変わりません。トムソンの考えで面白いのは(デューラーの絵の横顔もそうですが)、こういう魚たちが実存することです。 … 生命体は変幻自在に座標系を変えていき、驚くほど多様なタイプの生物をつくり出すことができ、その中の一部の種類だけが生き残ることができました。

===== 引用 おわり

* 二つ目の写真

 

引用:

中沢新一(2016/12)、レヴィス=トロース『野生の思考』、100de名著、NHKテキスト

写真:デューラーの横顔、トムソンの魚

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