◆ 最新投稿情報
=====
(K1292) 終末期 患者の体感覚を大切に <臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/11/k1292.html
=====
☆☆
平安貴族社会を生きた男たちの物語を取り上げます。『伊勢物語』というと、男女の恋の話というイメージが強いかもしれませんが、男同士の友情や人生の悲哀、また政治世界での力関係も印象深く描かれています
☆☆
第3回 16日放送/ 18日再放送
タイトル: 男の友情と生き方
【テキストの項目】
(1) エロス的親愛で結ばれた男たち
(2) これをや恋と
(3) 源融のみやびな生活
(4) 才能は身分を超える
(5) 春の心はのどけからまし
(6) 突然の隠棲
(7) ぬくもりを手渡すというエロス
(8) 歌という武器
(9) 権力と美や情は対立する
【展開】
(1) エロス的親愛で結ばれた男たち
第3回は、平安貴族社会を生きた男たちの物語を取り上げます。『伊勢物語』というと、男女の恋の話というイメージが強いかもしれませんが、男同士の友情や人生の悲哀、また政治世界での力関係も印象深く描かれています。
ここでは、業平がとりわけ深く心を通じ合わせた三人の男を紹介しましょう。その三人とは、紀有常、源融、惟喬親王です。
業平と彼らとの関係性にはある共通点があります。それは、エロス的親愛です。エロス的親愛とは、性愛ではなく、身体的な感覚で相手とつながりを持つことです。 … 業平は、自分に向けられたちょっとした言動で「この人はだめだ」と判断したらすぐに逃げ出しますが、解ってもらえると思ったらスッと寄り添っていく。そうした直感的な身体感覚でつながり合う者同士にあるのが、エロス的親愛です。
まずは紀有常です。有常は業平の年上の友人で、妻の父親にあたる人です。
(2) これをや恋と
業平が有常邸を訪ねていったところ、有常は外出中で戻らず、結局会えなかった。そこで業平は歌を贈りました。
君により思ひならひぬ世の中の
人はこれをや恋と言ふらむ
すると有常からお返しの歌が届きます。
ならはねば世の人ごとになにをかも
恋とは言ふと問ひしわれしも
ここで業平は、無骨な舅に対してあえて「恋」という言葉を使い、ほがらかな戯れで「あなたのことを大事に思っているのですよ」という思いを伝えています。それに対して有常は、ウイットを効かせた歌を返すことなどはできず、「何を言っているの? そんなことないですよ」という愚直な歌を返しています。やはり有常は、いい人ではあるけれど凡青なのです。
(3) 源融のみやびな生活
エロス的親愛で結ばれていた二人目の男は源融です。 … 業平は融に対し、まず歌人として憧れを抱いていたと思います。
さて、業平が東下りから戻った秋、融から、河原院で催す宴への招待がありました。業平にとっては久しぶりの都人たちとの交わりです。 … 業平は翁の役を、果たします。皆々の間を歩きまわり、歌を集め、融殿への言祝ぎとして読み上げます。最後に自らの歌も、声にしました。
塩竃にいつか来にけむ朝なぎに
つりする舟はここに寄らなむ
《塩竃の浦に、私は何時の間に来てしまったのだろう。朝風の中、釣りをする舟は、この浦に寄って欲しい。この河原院にも、釣り舟のように、人多く訪れて欲しいものです。》
(4) 才能は身分を超える
業平にとつて、この宴は東国から帰ってきて都の貴人たちに触れる最初の機会です。東国に下った理由(藤原高子との恋に破れた)はみんなに知られています。しかし、みやびの男業平は、心身ともに落ちぶれたわけではあるまい―融はそう思ったからこそ業平を誘ったのでしょう。そして業平は、融ならば、自分のかぶいた翁ぶりを面白がってくれる、解ってくれると思ったに違いありません。
ここで自らへりくだって翁になれるのが、なんとも業平らしいではありませんか。 … あえてへり下っても、自分の本質的なところではみじめにならない。なぜなら業平には歌の力があるからです。彼にはそんな自負心もあつたのではないかと思います。
以下は、後日、書きます。
(5) 春の心はのどけからまし
(6) 突然の隠棲
(7) ぬくもりを手渡すというエロス
(8) 歌という武器
(9) 権力と美や情は対立する
<出典>
髙木のぶ子(2020/11)、『伊勢物語』、100分de名著、NHKテキスト(NHK出版)
0 件のコメント:
コメントを投稿