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(K0264) ハウスレスとホームレスは違う / 抱樸(1) <インクルーシブ社会>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2018/01/k0264-1.html
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【第3回 目次】
1. 「西洋文明」批判と「文明」観
2. 国家はいかにあるべきか3. 中江兆民と西郷
4. 「征韓論」と西郷の文明観
5. 福沢諭吉と西郷の文明観
今回は「文明」、次回は「征韓論」について考察する。
ここでは、遺訓11(現代語訳)を紹介する。段落を変更し、整理のため番号をつけた。
===== 引用はじめ
(1) 文明とは、道理が広くいきわたって行われることを褒め称えていう言葉であって、
(2) 宮殿が荘厳であるとか、衣服が美しくあでやかだとかいった、実体を伴わない外観の華やかさをいうものではない。
(3) 人は、文明だ、野蛮だなどと口にするけれども、何が文明で何が野蛮なのかさっぱりわかっていない。
(4) 南洲翁が笑いながら、かつてある人とこんな議論をしたことがある。
(5) 私が、「西洋は野蛮じゃ」と言ったところ、彼は「文明ぞ」と反論する。なお「野蛮じゃ」と畳みかけて言うと、「どうしてそれほどに言うのか」と尋ねるので、
(6) 「西洋が本当に文明の国ならば、未開の国に対しては、慈愛の心を持って接し、懇々と説諭を加えて開明に導くはずであろう。
(7) ところが、現実はそうではなく、相手が未開蒙昧の国であればあるほど、むごく残忍に振る舞ってきたではないか。これこそ野蛮と言わずして何ぞ」、と言ったところ
(8) 彼は口をつぼめて何も言えなくなった、と言われた。
===== 引用おわり
西郷にとって、「文明」とは「道理が広くいきわたって行われる」ことを意味する(1)。例えば外交では、弱小国に「慈悲」をもって対応するのが「天」によって与えられた使命、すなわち「道」である(6)。それが行われるとき、賞賛の言葉として、それは「文明」だね、こう言われる(1)。
しかし「現実はそうではなく、相手が未開蒙昧の国であればあるほど、むごく残忍に振る舞ってきたではないか」(7)。アジアの国々が、西洋の植民地主義政策によって呑み込まれている現実を、西郷は直視している。「これこそ野蛮と言わずして何ぞ」(7)。
今、日本国内で文明と呼ばれているのは、「宮殿が荘厳であるとか、衣服が美しくあでやかだとかいった、実体を伴わない外観の華やかさ」(2)ではないか。
西郷は「西洋文明」を批判している。西郷の理想とする「文明」は、「西洋文明」とは違う。
出典
先崎彰容(2018/1)、西郷隆盛『南洲翁遺訓』、100分de名著、NHKテキスト(NHK出版)
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