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2017年8月6日日曜日

(956) 「反戦小説」にとどまらない『野火』 / 大岡昇平『野火』(0)


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100分で名著』 Eテレ 放映
月曜日   午後10:2510:50
()水曜日 午前05:3005:55、午後00:0000:25
 

 シンプルな反戦映画であるとは言えない『野火』は、どのような構成になっているのか、どのような位置付けになっているのだろうか、どのように読めばよいのだろうか。


=====引用はじめ

 『野火』は基本、語り手の「私」こと田村一等兵のモノローグによって構成されています。レイテ島の熱帯雨林を彷徨い、飢餓に喘ぐ部隊、傷病者が放置される野戦病院、道端に累々と横たわる遺体など戦争末期の悲惨な現実を見つめながら、「私」は自意識を反芻しています。その語り口は冷徹で、詩的かつ思弁的です。

 戦争末期に日本軍兵士たちが経験した極限状況での報告、とりわけ生存を懸けた狡知の応酬、死に限りなく接近すること、穏やかに死んでゆくことについての実存的考察は、人間の本能や欲動を見据えた戦後文学の最も大きな成果と言えるでしょう。

=====引用おわり
 

=====引用はじめ

 主人公の田村一等兵を通じて描かれる戦争の悲惨さは、シンプルに反戦小説とみなされることをどこかで拒んでいる強さがあるのです。

 『野火』は異なるテーマが複層的に打ち出された作品で、多面的な読み方が可能です。これは戦争映画ではなく、一種の「信仰告白」あるいは「意識の流れ」として読む方法もあります。

=====引用おわり
 

出典:
島田雅彦、大岡昇平『野火』~汝、殺すなかれ、「100DEで名著」、NHKテキスト(2017/8)

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