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2017年9月3日日曜日

(984) 異分子排除のメカニズム / 『全体主義の起原』(ハンナ・アーレント_) (1)


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(K0125) 「これ以上は食べない」 <臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2017/09/k0125.html
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9月4日放送/9月6日再放送
100分で名著』 Eテレ 放映
月曜日   午後10:2510:50
()水曜日 午前05:3005:55、午後00:0000:25


 数十年前のこと、仕事でアメリカに行きニューヨーク事務所に立ち寄ったことがある。2日目だったと思うが、「彼はユダヤ人だ」と耳打ちしてくれた人がいた。私は「ユダヤ人」という言葉は勿論知っていたが、耳打ちの意味がわからず、どう反応してよいかもわからなかった。

 解説を読んで、少しだけ分かったような気がした。ただ、私は「ユダヤ人問題」を欧米人と共有していない。それゆえ、頭でわかったつもりでも、肌身感覚では馴染んでいないと思う。

 一方、欧米人は「反ユダヤ主義」はいけないことだと分かっていても、そして、ポリティカル・コレクトネスにより言説に節操が保たれていても、肌身感覚としてユダヤ人に対して違和感があるのではないか

(注)「ポリティカル・コレクトネスとは、日本語で政治的に正しい言葉遣いとも呼ばれる、政治的・社会的に公正・公平・中立的で、なおかつ差別・偏見が含まれていない言葉や用語のことで、職業・性別・文化・人種・民族・宗教・障害者・年齢・婚姻状況などに基づく差別・偏見を防ぐ目的の表現を指す」 / Wikipedia

 

『全体主義の起原』第一巻~「反ユダヤ主義」を一言でまとめるならば、

===== 引用はじめ P.31

国民国家が形成される過程でユダヤ人の同化が進み、社会に溶け込んで活躍するようになればなるほど、ユダヤ人が国家を乗っ取り、世界征服を目論んでいるように見え始めた。

===== 引用おわり

 

 解説を読んで「反ユダヤ主義」の背景に三つあると思った。

(1) 異質なもの(人)、知らないもの(人)、強い者に対する恐怖感

 (ユダヤ系)ロストチャイルド家が、政治や経済を裏で動かしているという疑念
 「秘密ユダヤ王国」が世界をあやつる糸を手中にしているという噂
 ウィーンでは、大学教授の四割、医者や弁護士の五割前後がユダヤ人
   … 脅威であり、妬みや憎悪を増幅した一因となった
 

(2) ユダヤ人を貶めるための言説の流布

 『シオンの賢者たちの議定書』(世界征服・世界支配のニセの計画書)の流布
 

(3) 異分子排除のメカニズム

 国家を同質的なものにしようとすると、何かを排除するメカニズムが働く
 ヨーロッパ(特にフランス)の移民排斥、アメリカのムスリム排除
 日本でも、何か問題が起こると「自分たちではない」何かに原因を押し付ける傾向

 

ヨーロッパのナチズムの悲惨な状況を引き起こした「全体主義の起原」を、アーレントは「反ユダヤ主義」に求めた。

同じ時期に悲惨な戦争に突入した日本に当てはめられるかというと、メカニズムが違うと思う。「朝鮮人蔑視」はあって良くないこともたくさん起こったが、「反ユダヤ主義」のような役割は果たしていないだろう。

ここから日本が学ぶのは、戦争に向かった過去の反省ではなく、むしろ、現在だと思う。

 

テキストの構成は、以下のようになっている。

第1回 異分子排除のメカニズム

(1) 『全体主義の起原』に至るアーレントンの足跡

(2) 全体主義の母胎となった十九世紀の「反ユダヤ主義」

(3) ユダヤ人とは、どんな存在だったのか

(4) ナポレオン戦争によって芽生えた「国民意識」

(5) ユダヤ人は「仲間」か「敵」か

(6) ユダヤ人による「世界征服」陰謀説

(7) 深刻化する反ユダヤ主義と「ドレフュス事件」

(8) 反ユダヤ主義政党の登場

(9) 現代社会としての「異分子排除のメカニズム」

 

出典:
仲正昌樹、ハンナ・アーレント『全体主義の起原』、「100DEで名著」、NHKテキスト(2017/9)

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