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2020年3月21日土曜日

(1915)  アーサー・C・クラーク スペシャル(4-2) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K1056)  個人Blog 3月中旬リスト <サイト紹介>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/03/k1056-blog.html
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クラークは、映画「2001年宇宙の旅」の原作者。映画が公開されたのが1968年、翌年に人類はアポロ11号によって初の月面着陸。「都市と星」が1949年、「楽園の泉」が1979年。現実の宇宙開発と並走
☆☆
 
第4回  23日放送/ 25日再放送
  タイトル: 技術者への賛歌--『楽園の泉』
 
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
 
【テキストの項目】

(1)   クラークが遺した「最高の贈りもの」
(2)   神話とSFの融合
(3)   宇宙エレベーターとは何か
(4)   科学技術のリアリティをどう量るか
(5)  「金色の蝶」の伝説
 
(6)   ご都合主義にはならない物語
(7)  「薄氷」の救出劇
(8)   美しさに感動する心
(9)   技術者たちへの賛歌
(10) 楽観的な懐疑主義者として
 
【展開】
(1)  クラークが遺した「最高の贈りもの」
(2)   神話とSFの融合
(3)   宇宙エレベーターとは何か
(4)   科学技術のリアリティをどう量るか
(5)  「金色の蝶」の伝説
 以上は、既に書きました。
 
(6)   ご都合主義にはならない物語
 こうしてモーガンは、喉から手が出るほど欲しかった、宇宙エレベーターの建造に最良の候補地を手に入れることができました。有力政治家ラジャシンハらのバックアップも得て、ここから計画は着々と進行してゆきます。
 本作『楽園の泉』は、素材や建設地が決まったからといって、決してご都合主義的に宇宙エレベーターが完成する話ではありません。複数のプロフェッショナルが各々の課題と真摯に向き合い、自分の仕事をしてゆく物語です。
 
(7)  「薄氷」の救出劇
 高名な物理学者であるセスイ教授とその学生グループらを乗せた運搬車が、地上二万五千キロメートルにある中間点ステーションから“地階”に向かう途中で故障しました。
 まさに手に汗握る救出劇が展開されます。SFなんて興味ないという人も、本作の後半はページをめくるのが止まらなくなるでしょう。
 
(8)   美しさに感動する心
 こうして物語はハッピーエンドとなるわけですが、途中でとても印象的なシーンが三つあります。
 一つ目は、スパイダーで刻々と上昇してゆく際、モーガンがオーロラを目撃するシーンです。美しいものを美しいと称える文章、読んでいて本当に美しいと思えるクラークの文章です。
 二つ目は地味ですが、物語の冒頭でモーガンを迎えたあのラジャシンハが一瞬登場し、自宅の寝室から救出劇を見上げるシーンです。宇宙開発においては人が自らの目で見る喜びと驚きがつねにあります。
 三つ目は、ついに塔の“地階”とドッキングを果たした後、モーガンが損傷箇所を確認するため宇宙服でエアロックの外へ出るシーンです。六十歳のクラークは自らの想像力でもって、自分自身を宇宙空間に行かせたのです。
 
(9)   技術者たちへの賛歌
 宇宙エレベーターは、モーガンが建造を手がけてから十五世紀後にも健在でしたが、〈カーリダーサの塔〉と呼ばれていました。宇宙エレベーターの建設という大偉業ですから、建設に尽力した人の名をとり〈モーガンの塔〉になっていてもおかしくない。
 自分たちは裏方だが、人々の暮らしを支えている――そんな技術者たちの読み取ることができます。
 
(10) 楽観的な懐疑主義者として
 クラークは最期まで「楽観的」な「懐疑主義者」でした。晩年の彼の発言や文章は、もっぱらSFの代表者、宇宙開発の名士として社会に配慮したものであったでしょう。
 科学者、技術者(そして作家)は、未来に対して楽観的であって構わない。しかしつねに謙虚でなければならない。これがバランスであり、すなわちセンスです。
 
<出典>
瀬名秀明(2020/3)、アーサー・C・クラーク スペシャル、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

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