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(K1054) 在宅か施設か(日本ホスピスホールディングス) <看取り>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/03/k1054.html
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『楽園の泉』は、地球と宇宙をつなぐ架け橋「宇宙エレベーター」を雪峰スリカンダの山頂に建造することに心血を注ぐ、モーガンという男の奮闘を描いた作品。金色の蝶にまつわる神話と科学技術者たちへの賛歌が融合☆☆
第4回 23日放送/ 25日再放送
タイトル: 技術者への賛歌--『楽園の泉』
【テキストの項目】
(1) クラークが遺した「最高の贈りもの」
(2) 神話とSFの融合
(3) 宇宙エレベーターとは何か
(4) 科学技術のリアリティをどう量るか
(5) 「金色の蝶」の伝説
(6) ご都合主義にはならない物語
(7) 「薄氷」の救出劇
(8) 美しさに感動する心
(9) 技術者たちへの賛歌
(10) 楽観的な懐疑主義者として
【展開】
(1) クラークが遺した「最高の贈りもの」
本作『楽園の泉』は、かつて「宇宙へ出て行くのは人類の本性だ。それがわからない奴は馬鹿だ」とさえ信じていたはずの「啓蒙家」だったクラークが、ダイビングを通して知った大自然の美しさと、スリランカで触れた多様な文化の先に辿り着いたおのれの境地をくっきりと示し、ぼくたち読者へ届けてくれた、まさに最高の贈りものだったと思います。
(2) 神話とSFの融合
『楽園の泉』は、地球と宇宙をつなぐ架け橋「宇宙エレベーター」を雪峰スリカンダの山頂に建造することに心血を注ぐ、モーガンという男の奮闘を描いた作品です。
雪峰スリカンダは、インド洋に浮かぶ架空の島タプロバニーあります。その昔、この島にはカーリダーサという王子がいて、巨岩ヤッカガラに、城壁と濠をつくって庭園を拵えました。これが、「楽園の泉」です。
スリカンダには三千年もの歴史を有する寺院があり、物語の現代パートでもなお高僧マハナヤケ・テーロが多くの僧侶たちと法灯を守り続けています。カーリダーサは「破壊王」とも呼ばれ、寺院を敵対視していたのですが、ついに雪峰スリカンダは征服できずじまいでした。彼はのちに異母弟との戦いに敗れて自刃したと伝えられています。
スリカンダの周囲には金色の蝶が生息しており、地元では「ヤッタガラで全滅したカーリダーサの兵隊たちの霊魂」と信じられています。金色の蝶は、毎年ある季節になると山に向かって飛んでいくのですが、いつも麓あたりで死滅してしまう。しかし、もし金色の蝶が死なずに山頂まで行きついたならば、それはカーリダーサの勝利を意味するので、僧侶は山を明け渡さなければならない――こんな託宣が、ラナプーラの博物館が保管する石板には刻まれているのでした。
(3) 宇宙エレベーターとは何か
宇宙エレベーターは、クラークが作家として思いついた、たんなる空想ではありません、実際にロケットに代わる宇宙への移動手段として科学・技術者の間で構想されてきた歴史があります。
宇宙エレベーターは、その名のとおり地上と宇宙空間を行き来する装置です。簡略化していえば、地上から3万6000キロメートル上空に中央ステーションを設置し、そこから垂らしたケーブルにそってクライマーという乗り物(エレベーター)を移動させるというものです。
(4) 科学技術のリアリティをどう量るか
「非現実的、荒唐無稽だ。 … まったくの絵空事じゃないか」と考える人がいてもおかしくない。
ともあれ、膨大な量の建材をいったいどこから調達し、どうやって建造するのか? クラークは本作でそうした課題にひとつひとつ物語上の解決策を示してゆきます。それらは本作の大きな読みどころのひとつなので、「なるほど、これはありだな」「いや、これはない」と考えつつ、ぜひご自身でお確かめください。
(5) 「金色の蝶」の伝説
宇宙エレベーターを設置するのに、世界で最も適した場所が、タプロバニーの霊峰スリカンダの山頂でした。宇宙エレベーターの基部は赤道付近がよく、また上空の基地を安定させるには地球の重力場の具合を考慮するとインド洋がちょうどよい。
しかし三千年も続いてきた聖地としての尊厳をどう考えるのか。建設に絶対の安全はない。寺院の移転ははねつけられ、世界司法裁判所の裁定を仰いだが、敗訴しました。
しかし、同期軌道からワイヤを一本下ろし、システムがうまく機能するかを見究めるテストは認められました。しかしテストは、アショーカ宇宙ステーションから落下させた繊維が大気圏に入ったところで暴風を受け、地上までおとわずか二十キロというところでワイヤが切れて失敗します。
モーガンは、巨大な梵鐘の音を嵐の中に響かせている僧院を見上げた。黄色の衣は、胸壁からすっかり消えていた。僧侶の姿はひとつもなかった。
モーガンの脳裏に、かの伝説が浮かびました、そう、あの「金色の蝶の伝説」です。
暴風に吹きとばされた何百何千という蝶たちは、山の斜面を吹き上げられ、山頂に達して死んだのです。カーリダーサの軍団は、ついに目標に到達しました。
以下は、後日書きます。
(6) ご都合主義にはならない物語
(7) 「薄氷」の救出劇
(8) 美しさに感動する心
(9) 技術者たちへの賛歌
(10) 楽観的な懐疑主義者として
<出典>
瀬名秀明(2020/3)、アーサー・C・クラーク スペシャル、100分de名著、NHKテキスト(NHK出版)
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