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2020年3月12日木曜日

(1906)  アーサー・C・クラーク スペシャル(3-1) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K1047)  認知症の予兆 AI検知 <認知症>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/03/k1047.html
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☆☆
オーストラリアへの船旅の途中で書き始めた。本作品は、クラークの青春時代から成熟の時代への軌跡、すなわちSFそのものの青春と成熟の過程が凝縮、結晶化された、まさに宝石のような輝きを放つ素晴らしい一冊だ
☆☆
 
第3回  16日放送/ 18日再放送
  タイトル: 科学はユートピアをつくれるか--『都市と星』
 
【テキストの項目】

(1)   人の生死をも管理する都市
(2)   サイバネティックス小説の先駆け
(3)  「特異の人」が世界を動かす
(4)   もうひとつの共同体で見つけたもの
(5)   自己成長の物語
 
(6)   神話色の強い冒険
(7)  「伝説」の背景に隠された真実
(8)   ダーウィンはいかに世界を変えたか
(9)   夜のとばりに抗って
(10) 海の冒険からクラークが学んだもの
 
【展開】

(1)  人の生死をも管理する都市
 本作の舞台となるダイアスパーは、人の誕生や死さえも完全管理された驚異の都市。住民はおよそ千年の寿命を迎えると、その情報とともに都市のメモリーバンクに格納され、約十万年後にふたたび肉体をまといます。
 伝説によると人類は〈侵略者〉によって宇宙を追われ、地球で細々と生き続けることを余儀なくされたという。 … しかし、人類は決して不幸ではない。その都市に閉じこもっている限りは安穏な暮らしが保障され、しかもある種の不老不死も手に入れているからです。
 
(2)   サイバネティックス小説の先駆け
 ダイアスパーの根幹を為すのが、メモリーバンクです。ここにVR(ヴァーチャルリアリティ)的なデータが「構成情報」として蓄積され、住民の生死を含む都市運営を司っている。
 第二次世界大戦後、ノーバート・ウィーナーがサイバネティックスという概念を提唱します。 … 人間と機械が次第につながり、一体化していくという未来像――インターネットやAI、VRなどの原型となる発想が生まれてきた時代です。そういう流れを本作『都市と星』に読み取ることができます。
 
(3)  「特異の人」が世界を動かす
 ダイアスパーでは、過去に人生を全うした者たちが、およそ十万年という時を経て、新たな肉体をまとって再生し、暮らしている。前世の記憶やダイアスパーに関する情報は、ふたたび生を受けてしばらくすると回復する。ところが、アルヴィンだけは違いました。彼は、全人類のなかで唯一、過去に生を受けた経験のない人間だったのです。
 … アルヴィンだけは違う。外に出て行きたい、外の世界を見たいという強い衝動を持っているのです。
 
(4)   もうひとつの共同体で見つけたもの
 アルヴィンの「外へ出たい」という衝動には、二つの側面があったのです。第一に「探検したい」という気持ち、第二に「さびしい」という気持ちです。ダイアスパーの外に行けば、「さびしさ」をも埋めてくれる何かが見つかるのではないか。 … そのなにかとは――相手を気づかい、いたわる心だった。
 リスの地にたどり着くと、まったく違う世界がアルヴィンを待っていました。そこはダイアスパーのような不老不死の世界ではなく、自然の摂理で死んでいくことを選択した集落だったのです。その代わり、人とのコミュニケーションが非常に大事にされていて、住民たちはテレパシー能力も身につけている。そこでアルヴィンは「相手を気づかい、いたわる心」の大切さに気がつくのです。
 
(5)   自己成長の物語
 アルヴィンは、往還十日のリスの旅を評議会に報告する際、次のように締めくくっています。「 … ぼくたちは怯えているんです――歴史の曙において起こったなにかに怯えているんです。その真実を、ぼくはリスで知りました」。ここには、はっきりとした自己の成長があります。その上、冒険から戻った元のコミュニティにも、自覚を促しています。狭いコミュニティに「特異な人」が現れ、その人物が外に出て行くと、そのコミュニティが変容を遂げてゆく――そういうことは現実社会にもありますね。
 
 以下は、後に書きます。
(6)   神話色の強い冒険
(7)  「伝説」の背景に隠された真実
(8)   ダーウィンはいかに世界を変えたか
(9)   夜のとばりに抗って
(10) 海の冒険からクラークが学んだもの


<出典>
瀬名秀明(2020/3)、アーサー・C・クラーク スペシャル、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

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