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2019年8月29日木曜日

(1710)  大江健三郎『燃えあがる緑の木』(1-1) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K0851) 「老衰死」より「天命を全うする」 <臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/08/k0851.html
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第1回  2日放送/ 4日再放送
  タイトル: 「四国の森」と神話の力
 
【テキストの項目】

(1)   世界文学としての大江健三郎
(2)  「記憶してください、私は…」
(3)   作家の現実、小説の虚構
 
(4)   四国の森と<魂のこと>
(5)   前史――『懐かしい年への手紙』
(6)   再生・継承される「神話」
(7)   奇跡のような治癒能力
(8)   糾弾される「救い主」
 

【展開】

(1)  世界文学としての大江健三郎

 『燃えあがる緑の木』は、三部から構成されており、
「「救い主」が殴られるまで」と題された第一部が1993年に、
第二部「揺れ動く(ヴァシレーション)」が94年に、
そして第三部「大いなる日に」が95年に、刊行されました。
 ノーベル賞を受賞したのは、1994年、59歳のときでした。授賞理由は「詩的な想像力によって、現実と神話が密接に凝縮された想像の世界を作り出し、読者の心に揺さぶりをかけるように現代人の苦境を浮き彫りにしている」というものでした。
 

(2)  「記憶してください、私は…」

 この地球に生きている未来の人たちに、この時代のこの場所で「私たちがこんなふうにして生きている」ことの証言として読んでもらい、記憶してもらいたいと、いまを生きる私たちが自信をもって言える作品を「名著」と言い張ってもなんらの問題がないような気がします。
 「私はこんなふうにして生きているのです」という言葉を、自分とその家族の生活を作品に登場させるという点でも字義通りに実践するような書き方を、より精緻に、より大胆に、より想像力豊かに、練り上げていったのが、大江健三郎です。
 

(3)   作家の現実、小説の虚構

 大江健三郎が、みずからの作家としての根本的なあり方を決定づけたとする重要な出来事・主題が三つあります。①と③の二つの主題は、いわば両輪となって大江健三郎の長編作品のほとんどを駆動させてきました。
  敗戦による超国家主義からの解放感と結びついた四国の谷間での幼少期
  ヒロシマの被爆者たちとの出会い
  障害を持って生まれた長男光さんとの共生
 作品に登場する場所は二つです。大江健三郎自身が家族と暮らす東京の住宅地と、大江の生まれ故郷をモデルとする「四国の森の谷間」です。
 ほとんどすべての長編作品において、大江健三郎自身、妻のゆかりさん、息子の光さん、愛媛に暮らす妹をモデルとした人物が登場します。
 いくつかの主題を共有し、同じ場所で同じ人物がたびたび登場するため、個々の小説間につながりが生じています。自己引用とか自己批判も、大江文学に顕著な手法なのです。
 

 以降は、後日書きます。
(4)   四国の森と<魂のこと>
(5)   前史――『懐かしい年への手紙』
(6)   再生・継承される「神話」
(7)   奇跡のような治癒能力
(8)   糾弾される「救い主」
 

<出典>
小野正嗣(2019/9)、大江健三郎『燃えあがる緑の木』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

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