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2019年7月13日土曜日

(1663)  小松左京『小松左京スペシャル』(3-2) / 100分de名著

 
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第3回  15日放送/ 17日再放送

  タイトル: 深層心理と宇宙をつなぐ--『ゴルディアスの結び目』
 
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
 


【テキストの項目】

(1)  地獄、本質的な悪、悪魔
(2)  個人的な旅の備忘録
(3)  宇宙に「開かれた」岬
(4)  エクソシストと量子重力理論
(5)  現代科学が導き出す地獄、悪魔
(6)  “宇宙神学”から見た地獄、悪魔
 


【展開】

(1)  地獄、本質的な悪、悪魔
 源信の『往生要集』やダンテの『神曲』には、地獄の様相が詳らかにされています。小松は中学生のとき『神曲』を読み、このイマジネーションの凄さにはかなわないと思った。
 小松左京は『神曲』を念頭に置きながら、しかし信仰抜きで、地獄や悪魔をリアルな実在として描出する、という難題に挑みました。四つの中編から成る連作『ゴルディアスの結び目』の、表題作がその成果といえます。
 
(2)  個人的な旅の備忘録
 小松は、この中編小説集を「もっとも個人的な旅」の「備忘録」だともいっています。 … 「メモが『フィクション』の形をとる事を奇とする人もあろうが、どんな形をとろうと、メモはメモであり、純粋に私的なものである事は変わりはない」。
 
(3)  宇宙に「開かれた」岬
 「地球上には、いくつか、こういった宇宙にむかってつき出した岬がある…」私はパイプをふかしながらつづけた。「そういう所では、この地球をふくめて、宇宙がよく見える…」
 
(4)  エクソシストと量子重力理論
 ――かつて、それは部屋だった。   いま、それは、直径25センチ弱の、表面にわずかに凹凸のあるボールになっている。(『ゴルディアスの結び目』)
 魅惑的な書き出し、実に印象的な劈頭の一節です。読み手を一気に引き込む。その関心は「かつて部屋だった」という球状の来歴に誘導され、集中していきます。その球は、アフドゥーム病院という精神病患者を収容する施設の一室でした。
 この病院に収容された後も、マリア・Kはベッドを「しばられたまま持ち上げ」、「岩や石を降らせたり」するという。容姿にはあってはならないものがありました。鋭い牙が生え、前頭部には角が付き出しています。エクソシストはすでに三人呼んだが、二人が死亡し、一人は「発狂」したと告げられます。
 
(5)  現代科学が導き出す地獄、悪魔
 伊藤は二度目の“ダイブ”を試みます。彼女の内面の奥へ奥へと分け入っていきます。 … 霧の原の先はまさに「地獄」というに相応しい場所でした。 … 伊藤は悪魔の長をも操る“闇(アーリマン)”の存在を認めます。 … 闇は、伊藤の通って来た「エルゴ領域」「シュワルツシルド半径」について語ります。すべてブラックホールについてです(宇宙物理学的事象に言及する根源悪!)。マリアの内面にはブラックホールが生じている。そして伊藤はそれに近づき、引き返し不能の域に踏み込んでしまった、というのです。
 
(6)  “宇宙神学”から見た地獄、悪魔
 「神とか仏」ならぬ悪魔や地獄の存在、延いては本質的悪が、宇宙論的神学においてどのように位置づけられるかを物語によって追求したのが中編『ゴルディアスの結び目』だ、といえるでしょう。
 本作には、いろいろおぞましい記述や常軌を逸した描写も多数みえますが、『神曲』や『往生要集』の現代的にあり方と捉えれば得心がいきます。
 

<出典>
宮崎哲也(2019/7)、小松左京『小松左京スペシャル』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

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