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(K0853) 「家にこもりがちな男性が外で楽しむためには?」 / 『男のサロン』 <定年後>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/08/k0853.html
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第1回 2日放送/ 4日再放送
タイトル: 「四国の森」と神話の力
放映は、 月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、 水曜日 午前 05:30~05:55
及び 午後 00:00~00:25
【テキストの項目】
(1) 世界文学としての大江健三郎
(2) 「記憶してください、私は…」(3) 作家の現実、小説の虚構
(4) 四国の森と<魂のこと>
(5) 前史――『懐かしい年への手紙』(6) 再生・継承される「神話」
(7) 奇跡のような治癒能力
(8) 糾弾される「救い主」
【展開】
(1) 世界文学としての大江健三郎
(2) 「記憶してください、私は…」
(3) 作家の現実、小説の虚構
以上は、既に書きました。
(4) 四国の森と<魂のこと>
小説の舞台は「四国の森の谷間」の「屋敷」から始まる。屋敷の当主がオーバー(お祖母ちゃん)。元の当主は「さきのギー兄さん」で、非業の死を遂げた。晩年のオーバーの世話をしてきたサッチャンは、両性具有者(最初は男・後に女)であり、準主人公であり、この物語の語り手でもある。
「魂のことをしたい」と屋敷にやってきた(この物語の主人公である)隆さんは、屋敷の後継者と認められ、ギー兄さんと呼ばれるようになった。ギー兄さんの父は総領事と呼ばれ「屋敷」とは親戚関係にあり、外交官を止めた後に村に戻る。ギー兄さんに「屋敷」行きを勧めたのは、東京在住の小説家K伯父さん(父親と遠縁で幼馴染)で、作者大江健三郎の分身として描かれている。
(5) 前史――『懐かしい年への手紙』
「先のギー兄さん」は、大江が1987年に発表した長編『懐かしい年への手紙』の主人公です(もちろんこの小説のなかでは単に「ギー兄さん」と呼ばれています)。
『懐かしい年への手紙』は、谷間の村の名家である「屋敷」の当主として生まれた主人公のギー兄さんの受難に満ちた人生の物語です。ギー兄さんは、自身の故郷の森のなかの土地で「根拠地」と名づけた共同体を創設し、順調だったのですが、東京から来ていた女優に対する強姦殺人事件の被疑者として逮捕され、10年間服役しました。帰郷したギー兄さんは、屋敷よりさらに山の高い場所に位置する「テン窪」と呼ばれる窪地に人造湖を作り、養魚池や灌漑用水として利用しようとしました。しかしその意図は理解されず、反対派たちは屋敷に詰めかけギー兄さんを糾弾し、翌日その人造湖にギー兄さんの死体が浮かぶのです。
(6) 再生・継承される「神話」
オーバーが亡くなりました。その火葬場の煙突から立ち昇る煙の中に一羽の鷹が入り、その後十畳敷にいたギー兄さんの腕に乗ったところが、目撃されます。焼かれる身体から離れられたオーバーの魂を鷹が嘴にくわえ、十畳敷にいたギー兄さんに手渡したと解釈されました。実際には、野鼠を手に取ったところを鷹に襲われたのですが。
(7) 奇跡のような治癒能力
・ オーバーの死に際し、ギー兄さんは屋敷の建物と地所をすべて相続
・ さきのギー兄さんの仕事を継ぐかたちで始めた農業経営も順調に発展・ 彼を慕う地元の若者たちを中心に結成された「森の会」というグループも順調
・ オーバーは手をかざして怪我や病気を治す治療能力を持っていた。依頼され、自身信じないまま断り切れずにギー兄さんが手をかざすと、奇跡のような治癒がみられた
・ 彼の発する言葉の力も大きく寄与した。森の外からやって来た人たちはギー兄さんの説教を聞き、広めていった
(8) 糾弾される「救い主」
・ 「《超能力の「救い主」に疑惑――NHK特集の危険なインチキ》」と全国紙で報道さた
・ 森の谷間に暮らす多くの人々は、どこかセクト的、カルト教団的なうさんくささ、気味悪さを実感した
・ 地域の有力者たちの一部は、ギー兄さんに対して敵意を募らせていった
ギー兄さんは彼を糾弾する人たちに対して、こう語りかけます(主題は「再生」)
「 … ここで自分が新しいギー兄さんとして殴り殺されるのなら、それもまた正しいと思う。その時、もっと確実に、さらに新しいギー兄さんがやって来ると約束されることになるから。本当に新しい人間としての、そのギー兄さんまであなたたちが拒むことはできない…」
<出典>
小野正嗣(2019/9)、大江健三郎『燃えあがる緑の木』、100分de名著、NHKテキスト(NHK出版)
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