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2019年1月29日火曜日

(1498)  (41) 島崎藤村『破戒』 / 「明治の50冊」

 
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(K0639)  すまコミュニティビジネス大学(1) ビジネス企画発表会 <定年後>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/01/k0639-1.html
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1.   どんな小説か?
 
2.   詩人 → 教員 → 小説家 → 自費出版 → 反響
 
3.   多様な面
3.1.  自然主義文学
3.2.  新しい文体で社会問題を取り上げた
3.3.  新しい文体
3.4.  自我の葛藤に重点を置いた「告白小説」
 
4.   賛否

4.1.  称賛
4.1.1. 夏目漱石:激賞した
4.1.2. 下村抱月:革新性をたたえた

4.2.  批判
4.2.1. 「許してください」は屈服
4.2.2.  (批判に対して)社会にあるゆがみを示唆している
 
5.   今日的な意義
 


【展開】

1.   どんな小説か?

 出自の秘密を抱えた青年の自我の苦悩を社会問題と絡めながら鋭くえぐり出し、人間のありのままの姿を描こうとする自然主義文学の出発点となった記念碑的作品だ。
 

2.   詩人 → 教員 → 小説家 → 自費出版 → 反響

 刊行時、藤村は34歳。若い頃すでに東京の文壇で詩人として名をなしていたが、長野県で6年にわたる教員生活を送る中で小説家へ転身。2年がかりで取り組んだ『破戒』は、自費出版ながら同時代の作家たちの間で反響を呼んだ。
 

3.   多様な面

3.1.  自然主義文学
 刊行の翌年には、『破戒』に刺激を受けた田山花袋の自己告白小説『蒲団(ふとん)』が発表された。同作とともに明治末の文壇を席巻する自然主義文学の源流となるなど、後世への影響も大きい。

3.2.  新しい文体で社会問題をとりあげた
 「明治20年ごろから文学のテーマが社会から個人に移ってきた流れに逆行するような形で、『破戒』が個人の悩みを社会問題とつなげた特異性」に注目。「文体面でも新しく、さらに社会問題というそろそろ文学ではマイナーになりつつあった点も絡めているところがこの作品を非常に目立ったものにした」(文芸評論家の伊藤氏貴・明治大准教授)。

3.3.  新しい文体
 冒頭の「蓮華寺では下宿を兼ねた」という書き出しは有名だ。簡潔な三人称の文体が清新さを持つ

3.4.  自我の葛藤に重点を置いた「告白小説」
 自我の葛藤に重点を置いた「告白小説」の名作と位置づける文学史家も多い。
 

4.   賛否

4.1.  称賛

4.1.1. 夏目漱石:激賞した
 「明治の小説として後世に伝ふべき名篇(へん)也…明治の代に小説らしき小説が出たとすれば破戒ならんと思ふ」(藤村と同時期に小説を書き始めた夏目漱石)

4.1.2. 下村抱月:革新性をたたえた
 「我が文壇に於ける近来の新発現」「小説壇が始めて更に新しい廻転期に達したことを感ずるの情に堪へぬ」(自然主義文学運動をリードした評論家の島村抱月)
 
4.2.  批判

4.2.1. 「許してください」は屈服
 丑松が生徒たちに向かって「『許して下さい』を言いながら板敷の上へ跪(ひざまず)いた」とする終盤の告白場面は、社会の差別と偏見に対し立ち向かうのではなく屈服を選んだとして、厳しい批判を受けた。

4.2.2. 社会にあるゆがみを示唆している
 (批判に対して)丑松が被差別部落出身であることを告白すべき問題だとして悩むこと自体が、社会にあるゆがみを示唆している。「結末近くで丑松が謝ったことの是非がしばしば問題になるが、そもそも謝る以前に、『隠す/隠さない』という告白の悩みが社会問題そのものだった」
 

5.   今日的な意義

 本来は社会問題なのに、自身でも気づかないうちに自我の問題にすり替わってしまう。現在の性的少数者(LGBT)差別を考える際にも、『破戒』が示した問題はいまだ古びていない。
 

【プロフィル】島崎藤村(しまざき・とうそん)
 明治5年、筑摩県馬籠村(現岐阜県中津川市)の旧家に生まれる。本名・春樹(はるき)。上京し明治学院で学び、「文学界」に参加して浪漫主義詩人として出発し『若菜集』などを発表。のち小説に転じ『破戒』『春』『新生』などで自然主義文学の代表的作家に。他に歴史長編『夜明け前』などがある。昭和18年、71歳で死去。
 


<引用>
島崎藤村『破戒』 絡み合う自我の苦悩と社会
【明治の50冊】 産経新聞(2019/01/14)
 
(41)島崎藤村『破戒』 絡み合う自我の苦悩と社会
https://www.sankei.com/life/news/190114/lif1901140021-n1.html

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