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2019年1月7日月曜日

(1476)  (39) 夏目漱石『坊ちゃん』 / 「明治の50冊」

 
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夏目漱石『坊ちゃん』
 
(1)  広く愛された中編小説
(2)  あらすじ
(3)  歯切れのよい文体
(4)  勧善懲悪の伝統を復活させた。新政府への批判の書でもある
(5)  敗北の物語でもある
(6)  愛すべき勘違い
(7)  現代的な意義(大人のファンタジー)
 

【展開】
 
(1)  広く愛された中編小説
 正義感あふれる新任教師の姿を軽快なユーモアを交えて描く中編小説は、国民作家の名作群の中でもとりわけ広く愛されている。
 
(2)  あらすじ
 主人公は、学校卒業後すぐに四国の中学校に数学教師として赴任した「おれ(=坊っちゃん)」。竹を割ったようにまっすぐな江戸っ子の青年を待ち受けていたのは、同僚と婚約したマドンナを奪おうとする計略家の教頭・赤シャツや、権力者に盛んにこびへつらう画学教師の野だいこら偽善的な俗物たちだった。そんな面々の所作に怒り反発する坊っちゃんは彼らに“鉄槌(てっつい)”を加えた末に職をなげうち、自分に母のような愛を注いでくれる下女(げじょ)(家庭内の雑用を行うために雇われた女性)・清(きよ)の待つ東京へ帰っていく。
 
(3)  歯切れのよい文体
 自らの教師体験も基に、落語のように歯切れの良い文体でつづった一編は好評を得る。
 
(4)  勧善懲悪の伝統を復活させた。新政府への批判の書でもある
 小説家の坪内逍遙(しょうよう)が『小説神髄』(18年)で説いた近代小説の理論に立ち向かうようにして、勧善懲悪の伝統を復活させた。
 少し古臭い勧善懲悪ではある。ただ、その器を使って漱石は『思想』を書こうとした。新政府への批判です。
 
(5)  敗北の物語でもある
 坊っちゃんが最後に辞表を出し「東京に帰る」。 … 大枠で見ればこの小説はあらがえない時勢にはね返される人々の敗北の物語なのだ。
 
(6)  愛すべき勘違い
 正直で真っすぐな人が立身出世する-という考えが、坊っちゃんに影響を与えた清の最大の勘違いだった。でもそれは実に愛すべき勘違いですよね。その結果の敗北自体が社会批判になっている。だから清や坊っちゃんを読者は優しい目で見る。
 
(7)  現代的な意義(大人のファンタジー)
 組織がいかに人間性を失わせ、人をつぶすか-。その息苦しさの中で生きる現代人は『自分も坊っちゃんのようにスパッと行動できたらいいな』と思う。この小説には組織に属する大人のファンタジー、という新しい魅力が加わっている。
 


【プロフィル】夏目漱石(なつめ・そうせき)
 1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)生まれ。本名は金之助。帝国大学英文科卒。松山中学、第五高等学校の教職を経て、英国に留学する。帰国後、東京帝国大学などで教える傍ら『吾輩は猫である』などを執筆。明治40年から朝日新聞社社員となって創作に専念し、『三四郎』『それから』『門』『こころ』などを発表する。1916(大正5)年、最後の大作『明暗』を執筆中に胃潰瘍が悪化し49歳で死去。
 


<引用>
夏目漱石『坊ちゃん』 無鉄砲ぶりに現代人も憧れ
【明治の50冊】 (39) 産経新聞(2018/12/17)
 
(39)夏目漱石『坊っちゃん』 無鉄砲ぶりに現代人も憧れ
https://www.sankei.com/life/news/181217/lif1812170013-n1.html

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