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第七章 近世・近代の仏教
【構成】
1 近世仏教の思想 - 中世の「憂き世」から近世の「浮き世」へ
1-1 仏教の庶民教化1-2 鈴木正三
1-3 『万民徳用』
1-4 盤珪永琢
1-5 不生の仏心
1-6 近世仏教の特質
2 近代仏教の思想
2-1 近代仏教の課題2-2 清澤満之
2-3 絶対的無限者と精神主義
2-4 田中智學
2-5 国体護持と仏教
2-6 近代仏教の特質
<各論>
1 近世仏教の思想 - 中世の「憂き世」から近世の「浮き世」へ
無常観:すべては変化し滅んでいくものだ
憂き世:現世を否定的なものとしてとらえ、そこからの離脱を願う↓
生生観:変化は滅びではなく、次々に生まれることである
浮き世:現世を肯定して、現世的な楽しみを享受しよう
1-1 仏教の庶民教化
・ 寺請制度(あらゆる人が檀那寺をもち、その寺の檀家となる)、寺請証文、過去帳の整備
・ 一般大衆に対する説教の場を設け、仏教の教えに基づく生活倫理と修養を積極的に説いた
世俗世界を送る上での心構え、人生の目的、死後の安心など
1-2 鈴木正三
正三は自らの禅を仁王禅と呼び、仁王のように強い心で煩悩に打ち勝ち、ひたすら修行に励み、自己が本来そなえる「空」「無心」を体現することを主張した。
1-3 『万民徳用』
正三は『万民徳用』において、「どのような行いもみな仏行である」と述べた。
世界の根源にある真理を人々は自らに潜在させており(仏性)、世のさまざまな職業はみな、そのような真理を具現するためのものとして存在している。
1-4 盤珪永琢
盤珪永琢は、鈴木大拙によって「日本が生んだ禅匠中の最も偉大なる一人」とされた。坐禅修行を通じて「あらゆることは『不生』を理解すれば解決する」と悟った。
1-5 不生の仏心
人間は誰しも生まれつき仏心を持っていて、それは生じたものではない(不生)。不生の仏心に目覚めるとは、自らの中にある善性にめざめ「生仏」と成ることである。
1-6 近世仏教の特質
人間の本性を善とする認識に立って、家職をはじめとする日常的な生活実践に精勤することを説き、現世における家の繁栄や個人の自己実現を説いた点に、近世仏教の現世肯定的傾向が見て取れる。
近世の仏教思想家としては、他にも次のような人がいた
・ 独自の公案体系を確立し、臨済宗中興の祖とされる白隠慧鶴・ 正法律を提唱しまた大著『梵学津梁』を著した慈雲飲光
2 近代仏教の思想
2-1 近代仏教の課題
近代仏教は、世俗化の進行という点で近世仏教を受け継いだ。一方、大きな課題を背負った。「西洋思想に対してどのようなスタンスをとるのか」「国家とどのような関係を取り結ぶのか」という問題である。
2-2 清澤満之
清澤満之は、近代日本最初の宗教哲学者といわれ、自己の痛切な宗教体験と深い思索に基づき精神主義を主張して大きな影響を与えた。
2-3 絶対的無限者と精神主義
清澤満之は、阿弥陀物の絶対他力、すなわち絶対的無限者にすべてを任せて、自己のはからいをやめてあるがままの境地に落ち着くもの、これこそが真の自己であり、真の自己が実現するとき自他ともに救われると主張した。
2-4 田中智學
田中智學は、純正日蓮主義を提唱し、在家仏教を鼓舞した。1914年に発足させた国柱会は、日蓮信仰に基づく国体護持を目指す愛国主義団体として多くの会員を集めた。
2-5 国体護持と仏教
近代は仏教にとっては受難とともにはじまった。廃仏毀釈と廃物論の嵐があり、僧侶は世俗外の聖職者から世俗内の一職業人になった。若年層や知識人に広まりつつあったキリスト教も脅威だった。
田中智學は、天皇を中心として日蓮信仰によって国家を統一し、さらに、日本が中心となって最終的には世界全体に『法華経』の説く一乗の救いをもたらすことを主張した。
2-6 近代仏教の特質
近代仏教思想家としては、他に
・ 神道国教化政策に反対し信教の自由、政教分離を訴えた浄土真宗の島地黙雷・ 「護国愛理」を訴えて仏教を擁護して井上円了
・ 日本の禅の思想や文化を英文で出版し世界に紹介した鈴木大拙
仏教思想に基づいて自己の哲学的思索を深めた日本近代の思想家として
・ 禅の「悟り」の境地を「純粋経験」という言葉で説明したといわれる西田幾太郎・ 「空が空じる」という「空」の弁証法に基づき人間存在の個と世界の弁証法的あり方を解明した和辻哲郎
引用
頼住光子、「第七章 近世・近代の仏教」竹村牧男・高島元洋編、仏教と儒教~日本人の心を形成してきたもの~、放送大学教材(2013)
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